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伝説の冒険の旅  作者: ご主人さま
第一章 冒険の始まり
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水の町ロドイ②


宿に入った俺たち、そこに先に泊まっていた人たちをリディは見知っている様だった。

その一人の女の子がリディに言う。

「あなたも来たのね!?」


「む……?」

少女は明るく迎えるが、一緒にいる壮年の男は俺たちに少し警戒の色を見せた。が、一瞬で納めたようだ。

普通の旅人風の服装だが、逞しい体付きや漂わす雰囲気はただの町人には見えない。


男が警戒を解いたのを確認したようにリディが少女と会話を始める。


「はい。まさかあなた様もこの様な場所に逗留されているなんて……」


と、少女はリディの話を遮る様に注意する。

「ちょっと? そんな話し方しないでくれる!?」


リディが会話を返すと女の子が怒る。確かになんだその話し方……??


「は、はい……。気を付けるわ」

リディは改めて言う。


「うん!」

彼女は満足そうに頷いた。


「ああ!? 思い出した! もしかしてあなた達は、あの時すれ違った人達!?」


ティイが急に叫ぶ。

なんだ、ティイもこの人たちに会ったことがあるのか?


俺たちが首を傾げていると、


「ほら! ノンビで盗賊の頭の家に向かった時に! 坂の所で」


「??」


俺はまだぴんと来ない。


「ああ! 思い出しました! 3人でいらした人ですね」


「そうか。あの時の」

アルアもケットも思い出したようだ。思い出せないのは俺だけか。


「………お前たちなのか? ゴイルナの側近の手練れどもを倒したのは?」

ケットが神妙な面持ちで言う。


う~ん………、

あ! そうか、あの時のか!! 俺はやっと思い出したが、もう会話は次に移っていた。


「ええ、そうよ」

少女はケットに応えてあっけらかんと言う。


「そうか……。私やリディに比べれば一段落ちるが、あの護衛共も相当腕が立った。……お前たちも相当な強者なのだな」

彼女は少女と男を楽しそうに、値踏みするように見る。


「ケ、ケット! ちょっと!」

リディが何故か慌ててケットを制している。


「ふふふ! 褒めてくれてありがとう! 嬉しい!」

女の子がケットの本意を知ってかどうか笑顔を浮かべて喜んだ………、


そこに、誰かが一人、この宿の部屋に入って来た。


「ユリアーノさま、滞りなく……」

入って来た男が言う。


「こら、エキ!」

少女がまた怒る。


「あ、す、すまん! ユ、ユリア……。こ、この者たちは?」

男は俺たちを見て聞いた。


「安心して、この人たちは志を同じくする方よ。さあ、成果を教えて頂戴?」


「あ、ああ……」


ノンビで会った時3人組だったから、もしかしたらこの男性もあの時いた人だろうか。

それに志を同じくするって、どんな志だ??


男はそれ以上俺たちに目もくれず少女の前に行くと、何か大きな包みを差し出す。

少女がそれを開くと、中からは大量の紙の束が出てきた。


「わあ!」

その束を見てリディが驚く。


「なにこれ?」

「手形よ! すごい量……、」

俺が聞くとリディは教えてくれたが、俺はまだ全然分からない。


「これ何に使うの?」


俺は誰ともなく聞いた。するとアルアが教えてくれる。


「私も使ったことはありませんが、コインの代わりになるそうです」


「へえー」

そうなのか。


入って来た男は少女に話を続ける。

「これで、あと2人分の臨時市民章を買える。それとこの偽の身分証も持っていれば、町には入れるだろう」


これで2人分の臨時市民章を買える?? ということはこれで1万4千エルド以上の価値か。

こんな紙束にそんな価値があるんだな。


「よくやったわ! これでロドイの町に潜入する準備は出来たわね!」


女の子は楽しそうに言う。

だが一緒にいた男は何やら困ったように首を振って言う。

「まったく……、ご祖先伝来の品まで他人の手に渡すなんて……。お母上がお聞きになればさぞやお嘆きに……」


「しょうがないでしょう!? 手持ちのお金じゃ一人分しか町に入れなかったんだから! すべて終わってから買い戻せばいいだけよ!」


「このような事せずとも、堂々とご身分を明かして、ボラッゾめの不正を正せば良いではありませんか!」


「そんなの面白くない! それに証拠を持って逃げるかも知れないわ」


彼らは何か言い争っている。


「せ、潜入? 潜入ってどういうこと?」

我慢出来なくなったのか、ティイが少女たちに聞く。


「それはもちろん、ボロッゾの悪行を正す為に、ロドイに入るって事よ! あなた達も、その為にロドイに来たのでしょう!??」

少女は屈託なく答える。


え? いや別にそれが当初の目的じゃないけど……。

ティイや俺は何か事情を知っていそうなリディを見る。あ、顔を逸らした。


リディは話を誤魔化す様に、少女に声を掛ける。

「あの、ユリア、さん、お願いがあるんだけど……」


「え? なにかしら?」


「その、ロドイへの潜入、よろしければ私も同行させて貰えない?」


「? あなたを!?」


そのリディのお願いに、ユリアという少女の同行者が口を挟む。

「旅の者。すまぬがそれは聞けぬ提案だ」

「ヨダ、あなたは黙ってて!」

だがすぐに少女が遮る。


「な、何を仰る! ……」


男は反論を続けようとしたが、少女は興味津々の表情でリディの顔を見た。


「あなたの役目の都合より、この町を救うことを優先するけど、それでもいいの?」


「はい。元より」

リディはきっぱり言う。


「そっか! まあノンビでの約束もあるし、何より面白そうだし! いいわ。今回はあなたに同行して貰うわ!」

少女は即決した。


すると同行者の男が少女に言葉使いも忘れ意見する。


「!! ユリアーノさま! いけませぬ!! ボロッゾは異国の凄腕の用心棒を雇っていると言う噂もあり申す! 私たちならば万が一の場合も命を賭してでも必ずやお逃げ頂く時間は作りますが、こんな者にはその様な覚悟はありますまい! 決して我ら一人とて欠けてユリア―ノさまを行かせまぬぞ!!」


「一人じゃなくて、あなた達二人とも今回は連れて行かないから」


「はええ!!?? な、な、何を~~!??」


「あなた達の中からもう一人好きに選んでいいわよ!」


驚き過ぎて変な声を出す男をよそに、少女が俺たちに言う。

彼女たちの力関係と言うか主従関係は何となく分かったが、男性2人は苦労してそうだ。


少女の言葉にティイが身を乗り出す。


「それなら、私たちどっちかを入れて貰えない!? 人探しをしたいの!!」


だがそんな姉を、アルアが理性的に止める。

「……姉さん、この方たちはまずはロドイの解放を優先されているのです。ここは、我慢しましょう。解放が早く済めば、その時に」


「ア、アルア……。……そうね。分かったわ」


ティイは大人しく引き下がった。


きっとアルアもロドイに早く入りたい気持ちは同じだろうに……。


じゃあやはりここはケットが同行することになるだろうな。熟練者ならではのリディとの連携も出来るだろうし。


俺はそう思って、ケットを見る。

俺以外もなんとなくこの中で難しい任務に適した人間を察して、彼女に注目した。

ケットは何か思案しているのか腕を組んで目を閉じている。


そしてケットが口を開いた。が、その口から出てきた言葉にみんなが驚いた。


「………リックス、お前がリディとこの娘と共にいけ」


「ええ!?」

俺は声を出して驚き、そしてケットに反論した。


「そ、それは最善じゃないだろ。俺じゃロドイを救う役には立たないよ!」


「これも修行だ。命令だ、行け!」


ケットは問答無用に言う。


そんなバカな。

ま、まあいい、ケットも姉妹も行かないなら、断ってあの男たちのどっちかに行ってもらえばいいだけだ。


「そうね。リックスくん! 一緒に頑張りましょう!」

だが何故かリディも納得している。


「あなたが一緒に来るのね!? さぞや頼もしいんでしょうね! 楽しみにしてるわ!」

少女もキラキラした目で見て来る。


み、みんな本当に俺が役に立つとでも思ってるのか? 

冗談じゃ済まないかも知れないぞ。


そんな心配する俺に、追い打ちの様に男の一人が俺を睨みつける。

「小僧…、万が一の事あらば、楽に死ねると思うなよ……」

「こら! ヨダ!」




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