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14.蒼暦745年9月10日

商業都市トルイネ 商業ギルド会館


ギルド会館地下にはそれこそ幹部以外、告知されていない部屋がある。

今日は先日行われた、帝国占領軍の対策についてだ。

出席者は市長のヨーネン フォン トルイネを始め

商業ギルド長、傭兵ギルド長、支庁助役、自警団副団長、寄合衆頭取、副頭取の7人。

トルイネはこの7人が動かしていると言っても過言では無い。陽光の一切入らない部屋は蝋燭が四隅に1脚づつ燭台が置かれ、真ん中のテーブルに均等に並べられた3つの蝋燭立てがぼんやりと7人の顔を照らしている。本日10日は月定例会でも有り且つ先日の宴も有って議題、報告等が多い。唯、月例会の議題として報告されるのも、昨日移動して来た帝国軍の事ばかりである、駐留場所、慰労方法、交渉内容等、一月はこの1週間だけであったかの様な感じで有る。

「処で、市長!あの男をどう感じられましたかな?」蝋燭の炎で輪郭が少し揺らめく程にほっそりとした顔立ちの老紳士は昨夜アッシュに氏素性を聞いてきた男だ。揺らめく顔には市長を少し試す様な口調が入っている。

市長も肩を窄めて苦笑しながら返答する。

「ラレンス殿もお人が悪いですな?あの男が何処の家の者かは調べがついておいででしょう?多分今の段階で彼を敵に回すのは愚かな行為でしょうね?私がこの1週間で得た情報ではですな、皆さん!驚くなかれ彼の一門は間違いなく公爵本家であると言わざるを得ない!と、言う事です。」

「なっ!そんな馬鹿な?こんな田舎町の地区隊に配属された25歳の大尉風情が傍系で無くザルツブルク公爵本家一門ですと!臣下筆頭公爵ですぞ!」

「そうです!ただこの情報ですがね、表には出てこないのですが、そんなに秘匿されている情報では無い様でしてね、人事局の軍籍簿の身分には、貴公1、公爵の1親等で有る記号が記されています。」市長は己の情報力の高さを誇らし気に話したいが、有る人物が気になり感情を顔に出さない様、極力抑揚の口調で口にした。

ラレンスと呼ばれた紳士も口を開く。「ふふっ!そうですね、私が調べた結果も同じでしたよ。、、、、、市長も存外、、、速耳ですね?」相好を崩しながらも上品な笑顔を顔に貼り付けたこの紳士を見れば、彼を知らない人若しくは彼の表しか付き合いの無い、大部分の街の人間は

釣られて笑い返し、幸せな気分に浸れるだろう。然し此処にいる6人も含め街の運営に関わる支庁舎等の幹部連中、そしてこの50年程度の間に人知れず殺されて海まで流された幾100の人はその笑みは悪魔の笑みとしか、思えない。

「ラレンス殿?彼を、彼をどう扱う積もりですか?」

紳士はにこりと笑い、首を少しだけ傾げて、ゆっくりと人差し指を唇に押し当て、その悪魔の笑みを浮かべて、市長へ囁く。「それは内緒です!」紳士は囁くと少しだけ市長にウインクして、席を立ち「では、皆さん帰りましょうか?」


市長公邸改め地区隊本部、3階急造会議室


本当にだだっ広い部屋なんで、内緒話が出来なかったんだけどね、手先の器用な兵達に急造で1つ密閉度の高い作りの部屋を作って貰った。窓に面して寝室の隣にこさえた為、新しく作るのは壁1面と出入口の面で有るが、これがまた急造にしては良い出来で、防音の為合板を間に2つの空間を作った3枚合わせの壁にしており、出入口も引き戸で召し合わせにしてあり普通の扉より密閉度は高い。今、この部屋には集う者は8人。

先ずルーカスは羊皮紙を机上に置き話し始める。

「えー、先ず市長ですがフォンを称してましたが名誉男爵です。5年前に叙爵されて姓もその時に没落していた当時のトルイネ男爵から名跡を買い取った様です。元々は陸軍軍人で第12師団に在籍していました。5年前に予備役に編入されてまして直ぐに市長に任命されています。生まれはこの街では無い様で今のところ不明です。」

「ふーん、12師団ねぇ?その経緯からするとマイント伯爵子飼いって事かな?男爵の爵位と名跡を買ったのは伯爵かな?」

「多分そうでしょうね。伯爵クラスなら名誉男爵位はそんなに高く無いですし、名跡も男爵程度の没落して食えなくなっているなら結構安く買い叩けますからね。」「伯爵ねぇ?絡んでるとするとなーんかあんのかな?」「隊長、こりゃあ、未だ謀叛は終結って訳じゃないかもしれないですね?仕込んでるのはここだけじゃねぇかも知れないですよ?」そうだねぇ、伯爵は未だ諦めて無いかもねぇ?「と、するとかなり警戒が必要って事だね?今市長には何人付けてるんだっけ?」「今は、2人で12時間交代で探ってます。」「ルーカス、もう少し増やしてくれるかい?市長と会った奴らも調べさせてくれ。」

「分かりました。」

「ただですね、今夜集まっているメンバーもですが、実はこの街の首魁は市長では有りません。今夜集まっているメンバーの中に別に首魁がいます。」出席者全員がルーカスの言動に集中する。ウェルキンが緊張した声音で「誰ですか?」と問いただす。「寄合衆頭取ラレンス ダレンポートです。」マイヤーがうろ覚えの様に知識を確認する。「寄合衆?確か市議会の偉いさん達の集団でしたっけ?」「そうだ。ただこの爺さん。過去が全く分からない。寄合衆頭取になってもう20年位だけど表の業績では目立った功績は少ない。市民達に取っては温厚な好々爺として、結構人気がある。まぁ特徴が無いのが特徴って感じ何ですが、この爺さん、それで寄合衆頭取をこんなに長くやれますかね?」

黒幕ねぇ?ラレンス爺さんか?うーん?俺の味方になってくれないかな?

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