①蒼暦720年4月1日
よろしくお願いします。
蒼の世界。、俺たちは自らが生きる世界をそう呼んでいる。2百数十年前位から製鉄技術が進歩し争いは激しさを増した。
小さく部族毎に纏まって生活していた集団は地域性を帯び大きな集団を形成、より生活圏を拡大させた集団は、又新たな集団と接触すると、より良い生活を求め争いを始める。
やがて、都市国家が現れ連合国家となり、強大な権力を持ち得た者が王を自称乃至推戴される。
繰り返された争いの後、蒼の世界もいくつかの強大な国家が出現し、つかの間の平和が訪れた。
貧富の差は増大し厳しい身分制度が皆の心にしっかりと根付いてしまった。
◇
フィーネと言う民族が存在する。
村単位で共同生活を送り農耕生活より狩猟生活を好み、大森林を点々と生息する。
この民族は見た目に違いは無い。違いを挙げれば
①産まれて来る赤子は全て女子。
②因って、性交は近隣の他民族の男を相手とする。
③この民族は体力、膂力が非常に強く民族固有の武芸を持ち、戦えば屈強な多民族の男の子でも勝つ事は難しい。
平均身長は180以上あり、2メートルを超えることも稀では無い。
通常彼女達は不定期に近隣の町村を襲い男を拉致し受精する。定期的に男を呼びつけ平和的に受精を受ける集団もあるには有るが、稀である。
彼女達は他の民族より蔑称として、神からも見放された民族、呪怪女族と呼ばれている。
◇
蒼暦720年4月1日
呪怪大森林西方。
「、、、、なんでじゃ!なんじゃ!これは!、、、」
「お、お、おばば様!なんで!付いてるよ!ねぇ!ほら付いてる!ねぇ何で?」
「、、、、、、、、、判らん。」
寝台に横たわっていた女が意識を取り戻し、自分に背を向け赤子を抱いた老女に話し掛ける。
「おばば様!私の赤ん坊は無事に産まれましたか?」
老女はその声に気づかないかの様に、押し黙っている。少しの間沈黙が続き、女は首を傾げながら再度老女に話し掛ける。
「おばば様、私の赤ん坊は如何ですか?」
「、、、、、マリア、その、、、、なんじゃ、今回は死産じゃ!」
「オギャー、オギャー!」
「クッ!ここで泣くとは、、」
「おばば様生きてます!生きてますよね?どうゆう事ですか?私の子です!10数年間産めなかった初めての私の子です!それをなんで死産だと仰るのですか?」
女は狂った様に泣き叫び老女に罵詈雑言を投げ掛け産後で弱り切っているにも拘らず起ち上がろうとして、出産に立ち会っていた他の女達により強制的に寝かせられ、口の中に怪しげな固形物を無理矢理飲み込められ、数秒で昏倒した。