それぞれの日常
あ〜っ、こないだのスーの家に泊まりに行ったの楽しかったなぁ。
冬馬君は学校の授業中、外を眺めながら、そんな事を思っていた。
あの日はサーに送ってもらってから、それぞれみんな家に帰って行き、日曜日は一人家で過ごしたのだった。
あ〜はやくまたみんなと会いたいなぁ。
それにしてもスーの家もほんと落ち着く場所だよなぁ。
教室から見える空は快晴である。
あ〜あの畳の部屋の語り合いの時に戻らないかな〜、そんな事を思い微笑んだ。
みんなも今頃、学校やら仕事忙しくしてるんだろうな。
そ〜いやスーは仕事うまくやってるかなぁ?
今頃慣れない職場緊張してるんだろうなぁ。
そんなスーの朝を皆さんにご紹介しよう。
日曜の夜はノートを見て仕事の復習をするも、あんまり頭に入ってこないで、21時には床についた。
あ〜明日から五連勤の始まりだと、なんかはやく寝て睡眠時間に費やしたくなる。スーはそんな事を思い笑う。休み前だと、とことん寝ないで起きてたくなるんだけど。
明日うまくいきますように、そんな事を願いスーは眠りについた、あ〜〜この瞬間がたまらん。
あ〜明日までまだ二十時間くらいあったらなぁ〜、ぐっすり寝まくれるのに。
そんなスーに朝はあっと言う間に顔を出す「やあ朝だよ〜」
「ぎゃああああっ」そんな目覚まし時計の音で目を覚ましたスーは言った「この目覚まし時計音変えよう」
この朝の時間は特に昨日の眠りについた瞬間が恋しくなる。
大きな緊張を胸に仕事に向かうスー、ふぅ〜〜職場の人とうまく話せるかなぁ〜。怒られないでやれるかなぁ〜。ハァ〜〜。
「一人勤務で、お客さんも誰も来なければ良いんだけどな」どんなレストランじゃ。
まだ慣れない仕事場に行く前は緊張と不安に包まれる「いっ、行ってきます」
スーはこないだサーと行ったラーメン屋の前を通り、なんだか懐かしい気持ちになった(二日くらい前)
あ〜あの日が懐かしい、あの瞬間は良かったなぁ〜。サーと二人
で行った夜の海も思い出す。電車に揺られ職場に向かう。
中々の満員電車である。「ぐへっ」凄い人の数だ!
あ〜はやく帰り道にならないかなぁ、どんだけ仕事嫌いなんだ自分と思いスーは苦笑いする。
ガタンゴトンガタンゴトン、あ〜これからみんなと旅行だったら最高だろうな、そんな事を考え外の景色を眺めていた。
空は冬馬君が見ていたのと同じく快晴である。
その頃、場面は変わりサーの今を見てみよう。
ガタンゴトンガタンゴトン、サーもまた電車で仕事に向かっていた。「あ〜はやく終わらないかなぁ〜帰る時間が待ち遠しい」コヤツもスーと同じであった。
そんな中、スーは職場のレストランに着いた。
ドキドキ心臓が緊張で一杯になる。フ〜〜ッ
「おっ、おはようござっぷぇます(噛んじゃったった)」スーが言う。
「おはようございます、とけたみさん」
あっ昨日の優しい青年だ、みんなが彼みたいだったら仕事しやすいんだけどなぁ。スーはそんな事を思う。
辺りをキョロキョロ見回し、レベルファイブを探した(スーの苦手探知機、レベルファイブに認定された社員)
「あっ、こないだとけたみさんに教えてくれた社員の方今日は休みですよ」
スーは「あーっそうなんですかぁ」と表面上ガッカリした様な顔を浮かべるが、心の中はガッツポーズしていた。
しゃーやった〜やった〜った〜〜ファイブ居ない!!
他のスタッフはスーより年下でみんな親切で優しかった。
「あっ、とけたみさんこれ僕がやっておきますよ」
「あっ、えっ、すいません、ありがとうございます、どうもですありがとうです、ほんとうにどうも(どんだけ言うんじゃ)」
スーは笑顔だった。
みんな良い方だなぁ、礼儀もあって、ちゃんと僕にも敬意を払ってくれる、スーはなんだか嬉しかった。
その日は特に怒られることも無く、他のスタッフともうまくいき、仕事は全く出来なかったが、なんだか良い気分で仕事が終わった。
帰りの電車の中は仕事が終わった爽快感に包まれる、この終わった瞬間の解放感がたまらないのだ。
帰り道のコンビニでビールの缶を買い、グビリ「かは〜っ最高」
その日スーはなんだか新しい環境の仕事も良いなぁと思った。
これなら楽しく出来そうだぞ、期待膨らむ。
翌日
早朝からレベルファイブ出現。
スーはなんだか心臓がドキリとし、テンションが下がる「おっ、おはようございます」
ムスッとした表情で特に挨拶の返事もなくファイブは言った。
「仕事覚えた?」
スーは思う、こやつだけは自分より全然年下だけど敬語ではない。
「あっ、はっはいっ一応、まだちょっと完璧ではないですが」ド緊張するスー。
「じゃこれ、もとの場所に戻して」
「え?」スーは焦ったった、何故なら何処に戻すか分からないからだ。うわぁ〜聞き辛い、聞いたら怒られそうだぞ。
スーはファイブに聞けず、行ったり来たり、棚を開けては閉め、戻す場所を焦りながら探した。
その時だった「いつまでかかってんだよ」
スーはビックリして失禁しそうになったった。
「すっ、すいません、えっ、あのその、これ何処に戻せば良いか分からなくて」
「なら先に言えよ」
ムカッ、スーはファイブのケツを蹴り上げたくなった、言い方があるだろ!もっと優しく言えないのかよ。こーゆう奴うざいわ。
「あっ、すいませんでした」
その日はひたすら怒られっぱなし、帰りの電車は目がバツになっていた。
家に帰ると、あーもう辞めたい仕事。スーは嫌な気分でテンションガタ落ちであった。
あ〜これからファイブの顔見たら、胃が痛くなりそうだよ。
明日のシフトを確認してファイブが居るかをチェックする。「いた〜〜っ」(凄い反応である)
も〜バックレようかな、スーは思う。
ふぅ〜。
だが翌日スーの心は一変する事となる。
「おはようございます」
スーは一目惚れだった。
「あっどうも、礼子です」
年は三十代くらいだろうか?
とにかくスーの目はハートになっていた。
スーは決意する、辞めない、続ける。
単純かつシンプルな男、その名もディス イズ スー。
礼子さんのおかげでファイブの言葉は前より気にならなくなった、と言うか聞いていない。いや気にしてるが、礼子さん、ビューティフルレディが忘れさせてくれた。
礼子さんの前ではスーは格好つける「あっ、その荷物重いので僕持ちますよ」スーは思った、決まったと。
スーはレベルファイブ以外のスタッフとはなんだか話があって打ち解け始めていた。
「え〜そうなんですかスーさん」
「あははそっ、そうなんですよ」
時間が経つにつれ、少しずつ仕事にも慣れてきた。
みんな良い人だなぁ〜、レベルファイブ以外。
そして週末がやって来る。
スーはこんな事を思った、今更だけど、なんだか人生っていろんな感じるものがあるなぁ、年とったら感じる事も減るものかと思ったけど今だに喜んだり、悩んだり、ムカついたり、落ち込んだり、良い人いたり、嫌な奴いたり、でも考えたら、それを体験出来るって事は有り難いものなのかもなぁ、ふぅ〜ため息をつき男は前を見た、よしっ。
小夜さんに振られたのも、きっと必要な事だったのかも知れない、僕の成長に。そう考えるとなんだか力がみなぎって来たぞ〜
「えいえいや〜」僕がどう考えるか、それが大切なのかも知れない。よし起こった出来事をポジティブにとらえてみるか、スーは思った。
きっと今の仕事も、何一つ無駄はない、そう信じてみよう。
スーは空を見上げる、空には奇麗な星々が輝いていた。
こうして男は仕事を続ける事にする。
その頃冬馬家では、なんと珍しく多網だけが冬馬家に泊まりに来ているシチュエーションであった。大喜は忙しく、きみ子も来れなかったのである、冬馬君と多網はお風呂に入っている。
するとお湯の中から泡ぶくが発生「げへへへへ」多網が下品な笑い声をあげる「あ〜〜っ多網また屁こいたなぁ〜」
「屁風呂」(阿呆である)
そっから泡がぶくぶく凄まじく、まるで沸騰してる湯の様となる。「屁沸かし」(やはり阿呆である)冬馬君は大笑い「大喜達も来れたら良かったのにね」
多網も頷くと同時に再びぶっこいた。「屁ジャグジー」
二人は風呂からあがり、冬馬君の部屋に一目散に向かう。
「最近ハマってるんだこれ」冬馬君の着る浴衣姿に多網が旅行に来てるみたいと気分があがる。
「かは〜っ最高〜この瞬間リラックスするんだよなぁ〜」
二人は布団の上に寝転んだ。
「はやく夏休みにならないかなあ〜」冬馬君が言う。
すると多網が「怖い話」出たぁ〜「今日は二人だから怖いよ、大喜もきみ子もいないし」多網は持ってきていた鞄を開け、本を一冊取り出した。
なんちゅ〜準備の良さなんだ多網よ。
それにしても、毎度の事だが、あんたも好きね〜〜。
多網が本を読み始めると、冬馬君は布団にもぐる、いつもは横に大喜やきみ子が居るけど今日は隣は誰も居ない壁、ひょえ〜〜、布団でしっかり壁側をガードする。
多網は怖い話を読み続けている。
「その時、うめき声が」
「ひいぃ〜っ」ブルブルブルブル
怖がる冬馬君は更に布団に深く潜る、その時、タンスに足がぶつかってしまう。ドスン
「ひいやぁああああああああああ〜〜〜っ」
多網が異様な叫び声をあげた。
その多網のビビリ具合に驚く冬馬君「僕の足がぶつかったんだよ」
多網はビビってしまったのが悔しかったのか、バレない様にしたかったのか「ビックリしてない、足つっちゃった」と言っていた。
「はいはい〜」冬馬君は呆れながら笑っている。
その夜も二人の夜中の語り合いは続く。
「多網だけが泊まりに来てるのなんだか久しぶりだね」
こくりと三度頷く多網
「多網は今年の夏休みは何したい?」
「もちろん旅行〜」
「うきょ〜絶対に行きたい」気分があがる冬馬君。
「それに毎年恒例のキャンプ」
「そうだよね、それは絶対に行かなきゃ」冬馬君は清香達も今年も絶対に誘おうと心に決めた。
「夏休み初日からここに泊まりに来る」
多網のその台詞に飛び上がりたくなる程嬉しかった冬馬君。
だんだん多網も中学生になって、泊まりに来るのとかも少なくなってしまうんでは無いかと心配していたからだ。
やはりいつものメンバーで過ごす時間は格別なものなのだ。
その日の夜中の語り合いも盛り上がり楽しい会話は続いた。
翌日、多網と朝から散歩に出かける。
いつもの川辺に向かい、冬馬君は思う。最近コンビニのお兄さんどうしてるかな、コンビニに多網と覗きに行くと、あのお兄さんが働いていた。
「おっ、冬馬君久しぶり」お兄さんがにっこり笑って微笑んでくれる。
「久しぶりです」お兄さんとも、あの夏休みの告白手伝ってから随分長い付き合いになる。冬馬君はこのお兄さんが大好きである、前にも悩み事とかよく聞いてもらったりしたなぁ。
「今日は朝なんですね?」
「最近深夜番が多かったんだけど」
「だから見かけなかったんですね」
冬馬君は少し安心した、最近見かけなかったから、もしかしたら仕事辞めてしまったのかなぁと心配していたからだ。
こうしてまた会えて嬉しかった。
「これよかったら二人で食べて」お兄さんがお菓子を買ってくれて二人に手渡す「えっ、良いんですか?ありがとうございます」
多網も嬉しそうにぶっこいた。
冬馬君とお兄さんは多網のその行動に大笑い。
気を良くした多網がまたぶっこく、プッ ぷ プシュ〜〜とね。
お兄さんに別れをつげ、二人は貰ったお菓子を食べながら、川を眺めていた。
「外で食べるお菓子は格別だね」多網も嬉しそうに食べている。
こうしてのんびり多網と過ごした週末はあっと言う間に過ぎていった。
そんなありきたりの日常の格別なひととき
夕焼けが優しく二人を包んでいた。