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ひ・み・つ

女神ネモフィラからのメッセージを読み上げます。

『頼りない女神ですけれど、これからもネモフィラを応援してね♡』

挿絵(By みてみん)


 ネモフィラの涙に気付いて男が驚く。


「ネ、ネモフィラさん……ワタシなんかの為に涙を?」

「……そんなこと言わないでください」

「えっ?」

「ワタシなんかって言わないでください! 小林さんは小林さんです! 『なんか』さんじゃないじゃないですかぁぁぁー!」

 

 ネモフィラが号泣する。

 男も嗚咽する。


『ぽろろーん――』


 信号音が鳴り、2人の間の四角いテーブルが明るくなる。

 コンピュータのメニュー画面が表示されている。

 画面の中央にタイマー表示。

 残り時間5分を切った合図。

 転生候補者のルートは2通り。

 異世界転生か天国か。

 転生候補者による決断には制限時間がある。

 タイムオーバーは即、天国ルートとなる。


「ネモフィラさん……これは?」

「実は……この部屋で小林さんとおしゃべりができるのは10分間だけなんです。その間に小林さんを異世界の勇者になってくれるように説得するというのが……私のお仕事なんです」

「そう……なんですか。そんな貴重な時間の半分をワタシなん……いえ、ワタシのために裂いていただいて感謝します、女神ネモフィラ。さあ、じゃあすぐに始めましょう」

「えっ、あ、はい! あの……私が案内する異世界は……魔王がとても強くて人類が窮地に陥っている世界なんですけど……」

「それは燃えますね-、そこにワタシが勇者として参戦する訳ですね?」

「あ、はい。でも活躍出来るかどうか小林さん次第で……」

「任せてください! 次の人生ではもう逃げたりしませんから!」

「小林さん…… では、チートスキルをこちらのメニューから選んでいただきます。あっ、でもこの先『戻る』ボタンはありませんから……」

「おお、それは燃えますねぇー、運命の出会いという訳ですね!」

「あっ、はい、そうなんです!」


 男は『特殊能力』の中から『白魔術』を選択した。


「私が担当した中で白魔術を選んだ人は小林さんが初めてです。なぜ白魔術?」

「ワタシが行くところは人類が窮地に陥っている世界と聞いたので……怪我をした仲間がいっぱいいるんだろうと思ったんですよ」

「小林さん、本当にあなたは優しい方です!」

「そんな……あれ? さらに細かく項目が分かれていますね。『回復系』『支援系』『ブレンド』『おまかせ』……おまかせって何です?」

「それは、数多の白魔術の中からあなたにピッタリなものをランダムに選ぶという、女神おすすめのコマンドです!」

「ええっ!? ワタシに、ピッタリなものを、ランダムに、選ぶ? それって……結局ランダムってこと?」

「……はい、スミマセン……」

「はははっ、じゃあ女神おすすめの『おまかせ』をポチッと」


 画面には13種類の白魔術スキルが表示された。


「では問います。小林修輔さん、あなたは異世界へ転生し、白魔術スキルを身につけ勇者として活躍する第2の人生を選びますか? それとも天国へ召されますか?」

「ワタシは異世界へ転生し、人生のやり直しを希望します!」


 女神ネモフィラは慈悲の心で男を見つける。

 男も感謝の心で女神を見上げる。


「では目をつぶってください」


 男が指示通りに目を瞑る。

 ネモフィラは右手を男の頭の上に乗せ、宣告する。


(なんじ)、小林修輔は現世での役目を終え、異世界にて勇者として生まれ変わることを宣告する――」


「ねえ、さっきの本の題名は?」

 ネモフィラが小さな声で話しかける。

「黄金色の友情物語だけど……それ聞いてどうするの?」

 目を瞑ったまま男も小声で答える。

「ふふっ、ひ・み・つ!」

 ネモフィラは男に向けてウインクをした。

 そして両腕をVの字に振り上げ手の平を天にかざし――


「さあ、冒険の旅が今、始まる――」


 女神ネモフィラの宣告により、男の身体はすっと消えていく――

小林さ~ん、あなたは仲間想いのとてもいい人でしたぁぁぁ。

こんな雰囲気の中、評価ちょうだいなんて……とても言えない……

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