【妹】属性の女神
ブクマしてくれたらうれしいな~おにいちゃん、お・ね・が・い!
「転生候補者が見つかりました! 篠崎健太21歳、走ってきたトラックに轢かれて死亡。ヒキニートです!」
コンピュータ端末を操作しながら、女神ホイルが報告する。
喜びに沸き上がる女神たち。
今週に入ってようやくこれが3人目――貴重な1人である。
喜びを噛みしめながら、震える声で女神ホイルは指示をする。
「では、3番の個室に誘導します。女神レモネードよ、出動しなさい!」
「はいはぁーい、じゃぁー、いってきまぁーす!」
黄色い髪のベビーフェイス、女神レモネードが会議室を出て行く。
彼女は期待の新星。
幼児体型の容姿は世のヒキニートたちを虜にする魅力をもっている。
そう――
『妹』属性である。
しかしこれは賭けでもある。
ヒキニートと一括りに言っても、様々な性癖の持ち主がいる。
だから『妹』に萌える相手と萌えない相手の見極めが肝心。
万一、妹萌えしない相手であった場合は、すぐさま方針を変更する。
女神レモネードは頭の切れる女神。
彼女は期待の新星――
会議室の外はタイル張りの長い廊下が続いている。
給湯室、仮眠室、情報端末室を抜けると、その先は幾つもの扉が並んでいる。
手前側から1号室、最も奥の部屋が12号室となっている。
女神レモネードは、3号室のドアの前で身なりを整える。
そして深呼吸。
転生候補者に対しての礼儀を尽くす。それが仕事の流儀。
ドアを開けると、転生候補者が木製の背もたれ付きの椅子に座っていた。
正方形のテーブルを挟んで、入口側の椅子に女神レモネードは腰をかける。
21歳という割には老けている印象の男。
銀色の四角いメガネが少し下にずれている。
多くの転生候補者がそうであるように、彼も放心状態の様だ。
「えっとぉ-、篠原さん……篠原健太さん……起きてくださぁい!」
「――えっ? あっ、あれ? ここは……」
「ここは死後の世界です。篠原健太さん、貴男は現世でトラックに轢かれてお亡くなりになりました。ご愁傷様です……」
このセリフだけはしっかりとした口調で言わなければならない。
ここへ来る転生候補者は皆、自分が死んだことに気付いていない。
だからはっきりと伝える必要があるのだ。
「じゃあ……ここが天国……なんですか? あなたはもしかして……?」
「私は女神レモネードだよ? あなたの担当女神なの。そしてぇーここはー天国ではないんだよ?」
「うほー、も、も、もしかして異世界へ飛ばしてくださるのですか? 女神レモネード!」
「えっ、あ、うん……つまりはそういうこと……なの! ……うふっ」
これこそが女神達がヒキニートを転生候補者とする所以である。
とにかく話が早い。
レモネードは口を手で隠して笑いをかみ殺す。
「じゃあ、強力な武器とかくれて、俺、大活躍できるんですね?」
「活躍出来るかどうかは篠崎さん、あなた次第なのよ。でもぉー、レモネードはぁー信じているからね?」
「――っう! うん、レモネードちゃん……ありがとう……」
組んだ手にあごに乗せて、頭をくいっと傾ける決めポーズ。
――よし、いける!――
男の顔が緩み、頬が紅潮する様子を見てそう判断した。
女神レモネードは『妹』属性全開で攻めに転じる。
「でもおにいちゃん……これから行く異世界には強い魔物がたーくさんいるの……そしてぇー、人類が絶滅の危機に陥っているの……それでも……行ってくれる?」
そして決めポーズ――
「もちろん俺に任せておけ! あっ、でもどんなチート能力がもらえるのかを見てから決めたいんだけど……」
「ちっ!」
女神レモネードが舌打ちをした。
相手には悟らせないささやかな舌打ち――
これも彼女の能力の1つ。
「うん、もちろんそうよね! レモネードもぉ、そう思ってぇ、チート能力のカタログを作っておきましたぁー」
ニッコリ笑顔で2人の間にある四角いテーブルを指さす。
すると、テーブル面が瞬時に液晶表示に切り替わった――
女神レモネードについての感想もお待ちしています(^^)/
おにいちゃん大好き! と言ってもらえるかも?