第6話 スタンピード 前編
話が長くなったので2分割してみました
そんな訳で始まりますよー
「フーンフーンフフーン♪」
俺が鼻歌を唄いながらやっているのは、魔物の狩りだった。
前回のクエストで行ったゴブリンとオークの殲滅戦は、魔法による一方的な蹂躙だったために今では薙刀を使って一体一体丁寧に斬獲して行っている。
薙刀というと、江戸時代とかで女性が使う道具というイメージがあると思うが、源義経の家来だった武蔵坊弁慶が主に使っていた武器だ。
それに槍が登場して普及するまでの間、歩兵も騎兵もこれを好んで武器にしていたほど優秀な武器だ。
理由は槍と刀を兼ねている点で、リーチがあるために槍のように突く事ができるし、剣のように薙ぎ払う事もできる。
その分、懐に入り込まれると一方的に不利になるがこれは槍でも同じ事が言えるので、懐に入り込ませなければ大丈夫だろう。
そのため、クエストで依頼された魔物の巣に積極的に入り込んでは鏖にして行っているのだが薙刀の刃から俺の体まで1メートル以上も距離があるため、未だにダメージは受けていない。
この1週間、これと同じような事をしているのだが理由はレベル上げである。
この世界での最大の目的である「気ままに生きる」を実際に達成するには、一定以上の力はほしい所である。
現代日本の様に、命の保証がされていない世界で生きるには自分の力で生き抜く必要があるため、積極的に魔物狩りをしているのだ。
そう思っていると、最後のゴブリンを斜めに真っ二つにした。
「ふう、もう終わりか」
俺がそう言って、刃についた血糊を薙ぎ払って落とした。
この1週間で、1000体前後の魔物を刈り尽くしてきたが特に抵抗感がなく、やって来られたのも相手が魔物だからだろうか。
これが人間だったら正気に戻れないだろうなぁ、と思いつつ、ステータス画面を開いた。
『名前:セレナ』
『種族:神龍』『フォルム:ノーマルフォルム』
LV:28 年齢:16 性別:女
HP:29,000(+9,000) MP:29,000(+9,000)
攻撃力:29,000(+9,000) 防御力:29,000(+9,000)
魔攻力:29,000(+9,000) 魔防力:29,000(+9,000)
素早さ:29,000(+9,000) 運 :100
運以外が軒並み上がっているから気になって鑑定した所、運の数値は生まれた時から決まっていて特殊なスキルがないと上がらないらしい。
しかも、どうやっても100以上にはならないという結果が出た。
運の数値上昇の理由はわかったが、個人的に最も気になっていたのはステータスの数値上昇が一律で500ずつ上がっているのだ。
そのため、その理由を俺が持っているスキルから読み取ろうとして片っ端から鑑定していくとこのスキルに当たった。
『神龍:LV--』
レベルが上がっていく毎に上昇補正が強く掛かる称号。
LV1で1割の補正が掛かり、レベルの上昇とともに2割、3割と増えていき、称号レベルが最大になると一律で500ずつ増えていく。
なんてこった。
只でさえ、チート級のステータスを持っているのにこの称号があると無双どころか向かう所敵なしになるじゃん。
ハイエルフでさえ、ステータスを1万越えをするのにレベルを500以上にしなければ行けなかったのにこれじゃあ、化け物レベルだぞ。
「はぁ、我ながらやり過ぎたなぁ」
俺はそうぼやきつつ、クエストを完了させるために倒した証拠となる部位を取っていきながら町に向かった。
~~~~~~
「ん?」
町に向かっている途中、城門の所で多くの人達が慌てた様子で入城しようとしているのが遠目でわかる。
そのため、俺も彼らに混ざって入城した。
そして騒然としている町の中にある冒険者ギルドの建物に入り、クエストを完了させる手続きを使用とした所にギルマスのニーナに呼び止められた。
「おぉ、セレナ!良い所に来てくれた!」
「ニーナさん、この騒ぎはどうしたんです?」
「ふむ、実はのぅ・・・」
この町に入ってからギルドに入るまでの間、落ち着いた雰囲気の場所は1つもない状態で冒険者ギルドもかなりの慌ただしい雰囲気に包まれていた。
その理由は、魔物の大群がこの町に向かってきているとの事だった。
所謂、スタンピードなのだが通常の物とは違って討伐する難易度の高い魔物が主力になっている、という情報まで入ってきている。
「情報が確かならこの町は終わりですね」
「そうじゃあ。いくら、わしが強くても数で押し切られると守り切れないからの」
ニーナもギルマスに成り上がるほどの強さがあるにしても、数の暴力にはかなわないと言う事か。
「そこでおぬしの力を借りたい」
「私の?」
「おぬしは神龍じゃろ?だから魔物の数を半分にしてくれたらまだ対処できる」
悪い話ではないな。
話を詳しく聞くと、報酬も数割増しで出すと言ってきた。
「じゃあ、クエスト完了の金額は同じで良いですから奢ってくださいね?」
「ふむ、それでやってくれるならいくらでも出そう」
「じゃあ、行ってくるよー」
俺はそう言って、スタンピードがやってくる方角を聞いてそこに向かった。