第17話 和服とメイド服、どちらがお好き?
申し訳ない。個人的な事情でなかなか投稿できずにいたんだ。
と言う訳で17話目が始まりますよー。
「こ、これは・・・!」
「神のしずくとやらを拾ったんだが」
「ぎ、ギルマスに報告してきます!」
100層あるダンジョンを攻略した翌日、俺達はエルバンディアのニーナがいる冒険者ギルドで神のしずくを見てもらった。
俺たちが持っていた鑑定スキルでは、涙摘状の神のしずくというのはこう表示されていた。
『神のしずく』
EX級のアイテム。世界のまたとないアイテムで、百数十年前に初めて確認された。
用途は、身体機能の強化から傷や不治の病の治癒、種族のランクアップ、挙句の果てにはあらゆる物質に命を吹き込む能力がある。
その価値は一滴で、国家が買えるほどの金額である。
まぁ、少なくともこの世界では超レアアイテムな訳で、途中で盗まれないように一定時間が経つと俺のところに戻ってくるようにしてある。
俺個人としては、薙刀に命を吹き込んでいろいろと経験させてやりたい。
理由は、現状ではスキル等は以前に比べて入手しやすくなっているのとレベリングをする必要がないということだ。
まさか、転生してから1年目で測定不能になるまでステータスが上がるとは思っておらず、フェムトを倒してもレベルが200から300程度、上がると思っていたのだ。
そのため、ここまで来ると逆に誰かをレベリングしたくなる。
俺がそう思っていると、受付嬢のミーナが戻ってきてギルマスがいる部屋に案内された。
周囲に人達も、また彼女たちか、というため息とともに普段と変わらぬざわめきをしていた。
~~~~~~
「やあやあ、またしてもやってくれたね。君達は」
「苦労を掛けるな、ニーナ」
「なぁに、特に問題はない」
俺が現れてから、こういった事態は予想していたからと言われてしまった。
「それでこの神のしずく・・・ってあれ?」
「どうしたんだい?」
「さっきまで引き出しの中にあったんだが・・・」
「それだったらこれのことだね」
俺がポケットから出したのは、神のしずくそのものだった。
「いつの間にそこまで移動したのか、聞きたい」
「一定時間、私から離れていると自動的に私の手元に戻ってくる魔法を掛けたんだよ」
「あー、なるほど」
俺が種明かしをするとニーナは納得した顔で頷いたため、話を続ける。
「それでこのアイテムなんだが・・・」
「それについては私からは何も言えない」
「どゆこと?」
ニーナがイヤそうな顔をしたため、俺が詳しく話を聞くと彼女が初めて見つけた際、誤ってダンジョンコアにぶっかけてしまい、ダンジョンコアに命が吹き込まれて暴走してしまった。
その結果、史上類を見ない程のスピードと勢いでスタンビードが何度も発生して、近くの村や町に甚大な被害が出たそうだ。
「あの時はまだ、私も未熟だったから周囲の人達に多くの迷惑を掛けてしまった」
「だが今はギルマスの席に座っているじゃないか」
「それでも当時は結構、後ろ指を指されたもんじゃよ」
俺が現在の彼女のことを言うと、ニーナはかつての惨状を思い出すような感じで暗い顔になった。
そしてしばらくすると、
「すまんな、つまらない話を聞かせてしまって」
「なに、気にすることはないよ」
「そう言ってもらえると助かるよ。だから私に神のしずくについてのあれこれ、言える立場じゃない。だが、もしも悪用するようじゃったらそれ相応の覚悟はしておいてほしい」
「はいよ、じゃあまた」
「おう」
ニーナから釘を刺されたため、どうするか考えながら部屋を後にした。
~~~~~~
「どうするんですか?」
「なにがー?」
「神のしずくについてよ」
「あぁ・・・」
冒険者ギルドから出た俺とティア、ポプリは、自宅への帰路についていた。その中で、ティアとポプリはニーナの話を聞いて不安そうに俺に聞いてきた。
そんな俺も、いろいろと考えが頭の中で巡る。
ダンジョンコアが自ら、意思を持ってモンスター達を大量発生させてスタンビードを発生させたという事実があるのなら、こっちも慎重にやらなければならない。
そんな話を聞くまでは、単純に薙刀にも命を吹き込んで意思が出来れば楽しいだろうなぁと思っていたが、その話を聞いたらそう簡単には使えないな。
だから俺は、考えに考えて結論を出した。
~~~~~~
「命を吹き込む際の使用方法は、神のしずくを対象の全体に垂らしてどういう風にするのかをイメージして強く念じる。そうすることで使用者のイメージ通りになる」
俺達は自宅に戻り、神のしずくを使うことにした。
何故なら、もしもこのアイテムが盗まれてすぐに使用された場合、それがきっかけで世界崩壊につながるかもしれないからだ。
そうならないように努力していくつもりだが、現状ではないが起きるかわからない以上はこうするのが1番だろう。
そのため、俺は薙刀に命を吹き込む際にいくつかの制限を設けることにした。
1つ目は、命を持って擬人化させた場合に自衛できる程度にしか、力を発揮できないこと。
これは、暴走した時に被害が大きくならないようにするためだ。
2つ目は、俺の魔力でしか薙刀から人に変化したり、人から薙刀に変化することが出来ない様にしたこと。
理由は単純で、俺以外で悪用されないようにだ。只でさえ、強力な武器だというのにそれが無制限の状態で暴走したら、世界は大変なことになるからな。
3つ目は、俺やティア、ポプリにとって不利益になるような行動や発言をしないことだ。
意思を持たせるにしても、どういった人格で意思を持つかまでは正確にはわからないため、この制限もつけた。
と言ってもイメージ通りならば特に問題はないだろうが、万が一に備えてあれこれやっておきたい。
そんな訳で使用方法を鑑定スキルで確認した後、命を吹き込むと神のしずくに念じると手のひらサイズの涙滴状をしたガラスケースの先端部分に穴が空いて、傾けるだけで中身の透明な液体が出てくるようになった。
そのため、俺は居間の床に置いた薙刀にその液体を満遍なく垂らしていった。
全ての液体を垂らしきった瞬間、薙刀が光り始めて瞬く間にその光が居間を覆い尽くした。
しばらくすると、その光が収まった。
「・・・ティア、ポプリ。大丈夫かい?」
「はい、セレナ様」
「いきなり光り始めたからびっくりしちゃった」
神のしずくを垂らした後、俺は一歩下がってティア達と並んでいたが2人とも無事なようだ。
一方、薙刀はどうなったかというと、
「初めましてセレナ様、あなた様のおかげで無事に人型になりました」
と、薙刀があった場所には1人の少女が片膝をついて俺を見上げていた。
「どーもねー。えーと、しまった」
「どうしたんです?」
「名前を決めるのを忘れてた・・・」
「妙な所で抜けているよねー、セレナ様って」
どうやって薙刀を俺の制御下に置くかに集中していたから、名前を決めていなかったのだ。
参った、せっかく人型になったのに名前がないとわかった薙刀が悲しそうな顔になっている。
(やめて、そんな顔しないで。女の子の泣き顔なんて見たくない。おまけに、ティアとポプリはあきれた顔で俺を見ているし)
そのため、俺はいろいろと考えてこの名前にした。
「ユキカゼ、今日からお前はユキカゼだ」
「ユキ、カゼですか?」
「そうだ、ユキカゼ。今日からこれがお前の名前だ」
「ふふっ、ありがとうございます」
安直かもしれないが、愛刀である薙刀に名前をつけると彼女はうれしそうに笑ってくれた。と言ってもティア達は相変わらず、冷ややかな目線を俺に向けているがスルーさせてもらう。
とは言え、俺もユキカゼも着物が似合う女性でよかったぜ。
ハルマゲドンフォルム時の俺の服装は赤がメインの巫女服だが、ノーマルフォルム時の服装は大正ロマンの赤い女学生風の服装だからだ。
ユキカゼの方も俺と似たような服装だが彼女の場合、水色の白衣に紺色の袴をはいているから俺とは対照的なコントラストになっている。
こうしてみると、普段着の俺達はずいぶんと変わった服装で冒険していると言わざるを得ない。
着物姿の女性が2人にメイド服の少女が2人、完全のコスプレ会場に居そうな服装だな。じゃなきゃ、メイド喫茶とかそう言ったニュアンスの仕事に就いている人達だな。
何でこうなったかって?前世の趣味が入っているのかもしれない。
それはともかく、その日から仲間が1人増えました。