第12話 メイド冒険者の誕生
「・・・おい、見てみろよ」
「何故、神龍様のそばにメイドがいるんだ・・・」
俺がティアとポプリを連れて、王都にある冒険者ギルドに入ると冒険者達の間でざわめきが走った。
それもそのはずで、ティアとポプリの服装はメイド服そのものであった。
黒地の服にヒレに付いた白いエプロン、足首まであるスカートから見える靴は高そうなブーツに見える。
この服装は俺の趣味も入っているが、加護を付与した時に自動的に簡易な服から戦闘用のメイド服に変わったのだ。
普通のメイド服と戦闘用のメイド服はどこが違うかというと、戦闘用には物理攻撃と魔法攻撃を半減する上に、状態異常耐性まで付与されている。
ブーツには速度上昇に加えて、斬撃耐性と靴底には刺突耐性があり、手袋には筋力上昇に加えて、火傷耐性と凍傷耐性が付与されている。
カチューシャと呼ばれる女性用のヘヤバンドには斬撃、刺突、衝撃耐性があって、これら全てを装備するとステータスが5倍になるとの事だった。
つまり、ティア達のステータスは全て5桁になっているのだ。
とは言え、かなりのステータス上昇があるにも関わらず、周囲の目線が集まった事によってティアとポプリはかなり緊張している。
「はわわ、他の人達の目線が集中しています」
「こ、こんなに人が集まっているのは初めて見た」
「・・・」
そんな彼女達を俺は、悠然と引き連れて受付嬢のところに行って2人を冒険者に登録するように頼んだ。
すると、
「あ、はい。では、この水晶玉に手をかざしてください」
「は、はぅ~」
「こ、怖くないもん」
と言いつつ、ティアとポプリは緊張のあまり涙目になっている。
しかし、それまでの冒険ギルドのざわめきを上回る声で受付嬢はこう言った。
「えぇ~!?初めてにしてSランクレベルのステータスですって~!?」
「へぅう!?」
「ひぃっ!?」
その声の大きさにティアは驚いて失神し、ポプリは俺の足にしがみついた。
そして、それを聞いた冒険者達はガタタッという音とともに立ち上がったり、勢いよく振り向いたりした。
そんな中、俺はというと、
「レムさん、声が大きいですよ~?」
「だって、EXランクの冒険者はまずお目に掛かる事ができないのに、Sランクのステータス持ちは英雄レベル以上の強さですよ!?そんなステータスを持った人が2人も同時に来るなんてまずあり得ませんよ!!」
俺達の対応をしてくれた、レムという受付嬢が言うとおり、冒険者になるために冒険者ギルドに入る必要があるが、その際には一番下のランクなしがもらえる。
そこから、クエストをこなして経験を積んで行くとランクなしからFランクに上がる。
Fランクになってから、さらにクエストをこなしていくとEランクに上昇するのだが時折、天才肌の冒険者がいるらしく、ランク上昇がとてつもなく早かったり、最初からBランクやAランクレベルのステータスを持っている人がいるようだ。
冒険者のランクづけは、以下の通りである。
ランクなし:駆け出し冒険者、仮免許扱い
Fランク :新人や見習い扱い。一応、冒険者
Eランク :ひとまずは1人前、晴れて冒険者として認められる
Dランク :中堅冒険者、パーティーリーダーもやったりする
Cランク :そこそこの熟練者。ステータスの内、一つは4桁の達している
Bランク :冒険者の中でもトップクラス。小さいギルドでは1番上になる事も
Aランク :英雄で国単位で数人しかいない。一般人なら誰でも知っていて、吟遊詩人が普通に歌にして歌うレベル
Sランク :神話級。世界に10人もおらず、王様は頭を下げ、各ギルドのキルドマスターに命令できる程の強さ。ニーナもここにいる。
EXランク:前人未踏のランク。今までは有名無実なランクであったが、俺が現れた事によって国家間での緊張が高まっている
俺が、ティア達に加護を付与した事が良くも悪くも冒険者のランクに表れた結果になったな。
うーん、面倒事を避けたい俺としては、ティア達の強さがここでバレるのはなんとしても避けたいな。王妃の件もあるし。
そこで俺は、レムを中継してグレイに取り付いてもらいった。
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「かっかっかっ、お前って奴は本当に面白いな!」
「こっちとしてはイヤな結果しか見えないんですよねぇ」
ギルマスのグレイに今回の件を話すと、ティア達はBランクからのスタートにしてもらった。
これなら、馬鹿な奴らから絡まれる事はないだろうし、絡まれたとしても抵抗する事ができる。
だが、当の本人達はというと、
「・・・(ビクビク」
「・・・(ガタガタ」
初っ端からギルマスに会えるとは思っておらず、完全に怯えている。あまり長居するのはよろしくなさそうだ。
「それで彼女達の事なんですが・・・」
「あぁ、わかっている。こちらとしてもなるべく広がらないようにする。だがあまり期待するなよ?人の口に戸は立てられぇ」
「少しでも広がるのが遅くなればいいんです。結局はバレる事になるんですし」
いつまでも隠し通せるとは思っていないし、その方が他の人達も警戒心も安らぐだろうしな。
「じゃあ、やる事やってんで帰りますよ」
「おぅ、気をつけてな」
俺がそう言うと、グレイは冒険者ギルドの玄関まで見送ってくれた。