―1―
『放課後の宮殿。』では初めまして。「わ→たく。」です。
よろしくお願いします。
この作品は『リアルと妄想』という僕の初投稿小説の中に出てくる物語です。
何話か読んだことのある回もありますが、『リアルと妄想』には出てこなかった先の話も書きますので最後まで読んでいただけたら幸いです。
また、初投稿作の『リアルと妄想』もよろしくお願いします。
《 http://ncode.syosetu.com/n1246dd/ 》
〖第一章 始まりの時・・・・〗
俺の名前は杉並太陽。
ごくごく普通の中学二年生の野球部員。
先輩たちの夏の総体からはや一年が過ぎようとしているある雨の日。
一人の少年は朝からソワソワしている。
何をそんなにソワソワしているかって?
それは・・・・
「太陽うるさーーい」
ドカ☆・・・・
登校最中にいきなり殴られるなんてトホホ。
「いきなりなんだよ夏美」
吉川夏美。
女子の中ではなっちゃんと呼ばれているらしい。
俺の幼馴染みで、幼稚園からの腐れ縁だ。
幼稚園の頃は俺の後ろに隠れておどおどしていたのにいつの間にか俺の前にたって俺を見下す。
どこで道を踏み外したのだか。
特徴といえば綺麗なピンク色の髪に赤い目。
俺がショート好きって言ったからショートにしたけど夏美はロングの方が似合うのになぁーって最近思ったり思わなかったり。
「総体がどーたらこーたらとうるさいの」
「あ、あれ? 声に出てた?」
「出てたよ。思いっきり。恥ずかしいからそのニヤニヤもやめてよね!」
声に出ていたらしい。
けどニヤニヤしちゃうのは仕方がない。
だって今日はこの夏の総体メンバーの発表の日なのだから。
この日のために俺は勉強もしないで練習をしてきたんだから大丈夫、大丈夫?
そのせいでテストは・・・・笑えないな。
「あーもぉ太陽。早くしないと遅刻するよ」
あ、忘れていた。
《放課後の宮殿。》
と、そんなこんなで放課後。
発表まであと数分。
発表が待ち遠しいや。
今日は雨だからどこに集合だっけ。
と、そんなこんなで放課後。
発表まであと数分。
発表が待ち遠しいや。
今日は雨だからどこに集合だっけ。
と、校舎の中を歩き回っていると、
「タイちゃん何やっているの?」
「よお! 大宮。何って集合場所をさ―――――」
「ここじゃないよ。確か、特別棟の二階だよ。高橋先輩が特別棟でタイちゃんのこと探していて知らないかって私聞かれたよ」
あ、そんなこと言ってた気がする。
遅刻しそうになって場所を忘れて今日は色々とついてない。
「ありがとうな大――――――」
「大宮じゃなくて桜でいいよ。タイちゃんだけが特別だからね」
と、言って去って行った。
彼女の名は大宮桜。
大、桜とは俺の同じクラスで野球部のマネージャーだ。
学年一いや、学校一可愛いと言われている。
黒髪ショートカットでいつも左耳の近くで短い髪をかき集めて結んでいる。
可愛いのだけは知っているが、そのぐらいしか彼女の事を俺は知らない。
それよりも急がなきゃだよね。
「遅いぞ太陽。お前待ちだぞ」
「すみません。他の棟の二階にいました」
部長の高橋空先輩。
ポジションはボケ担・・・・じゃなくてセンター。
部内で一番足が速い先輩。
それ以外の特徴は・・・・・・無いかも?
「太陽・・・・。黙れ」
え、なんでだろ。
また声出ていたかなぁ?
「んじゃ発表するぞー」
やっとこの時が来た。
「内山田星空、山下星七・・・・・・・・・・悠木碧星。以上な」
あ、あれ?
俺が呼ばれなかった。
あれ?
聞き漏らしたのか?
「高橋先輩。俺は呼ばれてないのですが・・・・」
「太陽は・・・・いないな。まずは髪を切るんだな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っえ。
頭が一気に真っ白になった。
そして倒れた。
「おい、太陽。太陽」
太陽はその後目を覚ます事はなかった。
っておい。勝手に俺を殺すなぁ。
俺は極々普通の男子中学生。
小説やアニメで良く出てくる異能とかそう言うのは使えない。
使えたところで野球部の俺には意味がないけど。
しいといえばモテるとかの異能があれば嬉しいけど。
何て冗談も今は言いたくない。
部活にも行きたくない。
発表されてからずっと何をするにもやる気が出ない。
最近は夏美とも話してない。
と、放課後の教室で机にうつぶせになっていと、誰かが俺の体をゆすってくる。
「太陽。太陽。起きて。太陽」
夏美だ。
面倒くさい。
「太陽。太陽。起きて。太陽」
うるさいな。
今は誰とも話したくない。
それをわかったみたいで夏美がいなくなった。
数分後、俺は起きた。
少し寝ていたらしい。
辺りを見渡しても誰もいないな。
金属バットにボールに当たっている音など部活の音しかしてこない。
ふと、机を見ると小さいプレゼントが置いてあった。
多分夏美が置いていったのだろう。
ありがとうな夏美。
中身は・・・・・・ん?
何これ?
太陽は光に包まれていった。
そして異能が使えるように・・・・・・
とはならなかった。
ペンダントが太陽の光を反射していただけなのだ。
でも何でペンダントなのだろう?
誕生日はまだまだ先なのに。
なになに、手紙も入っている。
『元気がなさそうだから綺麗な緑色の石の入ったペンダントを太陽にあげる。元気出してね! お守りにしてよね』
ありがとな夏美。
『あ、あともう一つ桜ちゃんからもらったものがあるの。後でお礼を言っときなよ』
ん?
何も入ってないけど・・・・・・
《放課後の宮殿。》
桜には好きな人がいた。
好きな人のためなら何でもして良いと思っていた。
そんなある日、好きな人が家に来ることになった。
桜は自分の部屋の掃除をしている。
その時にあるものを見つけてしまった。
本棚の後ろにある知らない扉を見つけてしまった。
恐る恐るその扉の中へと入っていくと底の見えない階段があった。
桜は冒険家になったような気分で階段を下りていく。
階段を下りきり少し進むとそこには宮殿があった。
桜は家の地下に宮殿があることを知り耐震やらなんやらと少し不安になった。
そんな中、桜はふと思った。
この宮殿を好きな人との秘密の場所にしたいと。
その一心で必死の思いで別の出入り口を探した。
すると宮殿から少し離れたところで別の出入り口を発見したのだ。
しかし、その日は好きな人が来るため部屋の片づけをしなくてはならないことを思い出した。
そして、その場所に飴を置いて返してしまった。
その日から数日が過ぎ桜は好きな人の家にやって来た。
そこで桜はトイレを借りていた。
好きな人の家のトイレにはトイレ用マットが置いてあった。
なぜか桜はそのマットで足を滑らせ転んでしまった。
ずれたマットを直そうとしたときあるものに気づいた。
マットの下に桜の部屋の本棚の後ろにあった扉と同じ扉があったのだ。
これはあの宮殿に行けるのかと思い中に入ってみることにした。
そこには底の見えない階段があった。
下りてみるとこの前置いた飴と同じ飴があった。
そのことからこの前見つけた階段であることが分かった。
桜は好きな人との共通点があることがうれしくてたまらなかった。
桜は家に帰るとパソコンで矢印をたくさん作った。
そして好きな人の家のトイレから繋がる階段の底から宮殿までに行く道の壁にその矢印を張った。
そして好きな人に手紙を書いた。
そしてその手紙を好きな人に何かを渡そうとしている友人に渡たしたのだった。
《放課後の宮殿。》
総体もとっくに過ぎ冬休みを迎えた、ある晴れた日。
太陽はペンダントを毎日着けていた。
夏美はあげたプレゼントを付けてくれていることは嬉しいのだが・・・・・・
私、夏美ともテストの日を境にあまり話してくれない。
だから今日は勇気を出して太陽の家に行ってやるの。
そして一言いってやるのだから。
〈ピンポーン〉
押しても反応がない。
居留守をしているのだろう。
自転車はあるし、部屋の明かりもついている。
そっちがその気なら何度もインターホンをおしてやる。
〈ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン〉
何度押しただろうか一向に出てこない。
夏美も負けないと、インターホンを押す。
〈ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン〉
「うるせーな。何度も押すなよ」
太陽に勝った気分になった。
正直出てきてくれて嬉しかった。
出てきてくれなかったら泣いていただろう。
「いるなら出てくれれば良いじゃん」
「わかった。わりーな。んじゃ」
「じゃなくて、公園に行こ――――――」
「やだ」
「行こう」
「やだ」
「何で?」
「体を休めたい」
「行こうよ。行くまで鳴らね」
「面倒くせーなぁ」
と、言い太陽は早足で公園に向かって行った。
少し嬉しかったが早足なのは残念。
先に着いていた太陽はベンチでアップルティーを二つ持って待っていた。
「ハァーハァー。速いよ太陽。少しはこっちの身になってよね」
と、小悪魔的な感じで言ってみた。
正直可愛かったと思ってほしい。
夏美の少しばかりの乙女心であった。
しかし、今の太陽には気持ちが届くことはなさそうだ。
二人は公園にあったブランコに乗った。
「んで何?」
「そういえば太陽さ、結構部活に行ってないけどどうしたの?」
なぜ太陽が部活に行かないのか予想?検討?はついていたがあえて聞いてみた。
「部活は辞めたよ」
あれ?
思っていた回答と違う回答でびっくりした。
いや、アップルティーを吹き出すくらいびっくりした。
ただ落ち込んでいるだけだと思っていたのに。
聞いてよいのか分からなかったがとっさに聞いてしまった。
「え? 何で?」
少し聞いてしまったことに後悔をしている。
「俺は野球をやりたくてもやれなくなったのだよ。他にやらなきゃいけないことができたから」
「野球以外でやる事って何?」
太陽には野球しかないと思っていたのでまたびっくりしている。
頭の上にヒヨコが何匹かいそうになってきた。
「お子ちゃまにはまだ早いのだよ」
え、なんだったんだろう。
「気になって寝むれないよ。太陽。教えてよ」
そこには太陽の姿はなかった。
太陽は走って帰っていった。
「ちぇっ。逃げなくていいのに。いーだ」
夏美は一人寂しく太陽からもらったアップルティーを飲んだ。
ペンダントをもらったあの日から二週間後、太陽は部活を辞めていた。
ペンダントと一緒に入っていた桜からの贈り物を見つけてから太陽の人生は変わってしまった。