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狩人さん成り上がる~だけどそんなの望んでない~

作者: siba

 「本日のご予定ですが、10時より社内第一会議室にて新製品会議、14時より高崎グループCEO 山崎様と共同開発中の製品の説明会となっております」


秘書の山本さんの声を聞きながらいつものように下から上がってくる書類に目を通していく。

さすがに毎日大量の書類を呼んでいれば自然と読む速さも上がっていき、今では大量の書類も何とか短時間で目を通すことが出来るようになっていた。

こんなこと望んだわけでもないのに

過去に戻れるなら戻りたい。一番楽しかったあの頃に・・・

こうなった原因10年前のあの時のせいだ。そう一枚の宝くじのせいだ。



俺は元々、数少ない猟師といわれる存在だった。

10歳の時、冬休みに訪れていた父親の実家で、趣味で狩猟をしていた祖父に連れられ行った猟が幼い俺に強い影響を与えた。

極普通の家庭に生まれ、どちらかといえば主体性がなく、周りに流されるような性格だった俺だが、猟について行ってから変わった。

祖父の家にいる間は祖父について回り、狩猟に関することは何でも聞いた。祖父もそんな俺を可愛がって何でも教えてくれた。当時の俺では理解しがたいこともあったがそれでも必死になって祖父の言葉を覚えようとしていた。

やがて短い滞在期間を終わり、祖父の元を離れ、自宅についてからも猟師になるため、体を鍛え、狩猟のための知識やサバイバル知識、獲物となる狩猟獣の習性を調べたりもした。

両親もそんな俺を子供はああいうのに憧れるとそっと見守っていてくれた。

しかし俺は中学生になっても猟師への憧れは醒めず、むしろ加速し燃え上がっているほどだった。

そのころになると、冬休みに入れば電車を乗り継いで祖父の元まで行き、祖父の狩猟について行っては、自らも自由猟具のスリングショットで、鴨を獲ったりしていた。

高校に進学する際など、早くから銃器になれるためと、祖父の家から近いという理由でエアライフル部のある高校を選び、必死になって成績を上げ進学した。

もちろん、家からはとてもではないが通えないんで祖父の家に転がり込んだ。

そこからは冬になり解猟日になればスリングショットで狩猟に励み、それ以外の時には部活に打ち込んだ。

そのおかげか高校3年、最後のエアライフルの大会で全国2位という好成績をとることもできた。

高校卒業後は可もなく不可もない程度の大学に入り、在学中、20歳を迎えた年に狩猟免許を取得した。

そのころには祖父も年のためか狩猟に行くことも少なくなったが、俺とともに狩猟に行くことを楽しみにしてくれていた。

22歳の卒業を控えた年に、就職難でなかなか就職できずにいた俺に、祖父は一つの料亭を紹介してくれた。そこはジビエを専門とした料亭で、狩猟期間以外の間を従業員として働き、狩猟期間の間は獲物を獲り、店に卸す猟師の仕事をするというものだ。もちろん俺はその話に飛びついた。給料はお世辞にもいいとは言えないが、狩猟期間中の給料は出来高で獲物の獲れ具合に比例するので、俺の腕なら狩猟期間中に数百万は稼げたから問題はなかった。


24歳の時、戯れで買った自分で番号を選ぶタイプの宝くじを気まぐれに買ったら当たってしまった。

額にして8億円・・・・意味が解らなっかった。これは夢かと頬も抓ったが普通に痛かった。

今思えば、そこから人生が狂ったんだ。

とはいえ、大金を手に入れたところで特に使い道がなく精々、新しい猟銃とエアライフルを買うことだけで

ほとんどを貯金に回していた。

しかしその日から、やたらと電話はかかってくるし、自称、親戚や昔世話をしたという人物が大量に押しかけてくる始末。

最悪なことに職場にまで押しかけて来るバカもいて、職場の雰囲気まで悪くなり結局、従業員はやめて獲物の卸売りだけすることになった。



その年の狩猟期間、鬱憤晴らしとばかりに山で大量の獲物をとるべく大量の装備を抱えて山に入ればロープ片手に今にも自殺しますよ的なおっさんがいた。

やばいと思い、すぐに捕まえて山から引きずり降ろして、近くの喫茶店で話を聞くことになったんだ。

なんでもそのおっさんは、工場を経営していて経営が思わしくなってきたときから、新しい発明品というか

技術の開発に勤しんだらしい。だが、完成直前で資金切れ銀行からの融資も受けられずにそこにとどめの受注量の大幅なカット。もうどうにもならないらしい。

せめてあと一億あればどうにかなるのにえお泣き始めてしまい途方にくれたものだ。



そこで、自分が有り余る金を使って融資を持ち掛けたんだ。今思えば突然の当選金のせいで人生が変わった

ことに対する当てつけだった気がする。そりゃもう投げやりだったね。

最初は訝しんんでいたおっさんも銀行で貯金残高を見せたらすぐに土下座でお願いしてきた。

マジやめてほしかった。考えてみろ、銀行のど真ん中で若造におっさんが泣きながら土下座してんだぜ

目立つどころか警察呼ばれなかっただけでも奇跡だよ。



そっからは早かった、おっさんは有限会社だった自社を株式会社にして、その株をほとんど自分が買うことになった。普通に融資じゃいかんのかなとも思ったが、おっさんは開発完了したらどちらにせよ株式会社にする予定だったらしい。

そっから半年かけて開発したものを発表したら、えらいことになった。

なんでもとてもすごいものらしく株価が10倍くらいになったらしい。

もうそうなると自分も大金持ちの仲間入りだ。




いつの間にか会長に仕立て上げられてしまった。まあ名ばかりで特にやることなかったが。

その数か月ごにおっさん(社長)と食事していたら、面白い技術を持つ会社があるから提携したいといいだしてきた。いっそ買収しちゃえといったら金が足らないらしい。仕方なしに不足分を払った。

そしたら一年後に面白い技術とやらが実はとんでもないもので一気に株価が上昇。意味不明だ。



もう気が付いたらそこそこ大手企業に進化してた。おまけに仕事も増えてく。

俺の狩猟人生はどこかに飛んで行ったらしい。

嗚呼、あそこで宝くじさえ買わなければよかったのに

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか今週のこち亀を連想してしまった 豪運って本人からすると怖いねw
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