第7話 薪を作ろう
さすがに少し疲れてしまったので、探索から戻ってから、家で休んでいると、いつの間にか太陽は傾きだしてきていた。
日が暮れるまでに、火を確保したかった。
そのためには、まず薪をつくる必要がある。
家の外周には、薪割り場と思われる場所、といってもこんな言い方をするのかはしらないが、薪を割るためと思われる幅広で地面から20cm程度の丸太がおかれていたので、その上で先ほど拾ってきた木を薪にしてみようと思う。
まずは、斧をつかって木を手頃な長さに分断しようとするが、そこから難しかった。初めて斧を使うが、振り下ろした斧があらぬところに落ちてしまい、切るのに時間がかかるだけではなく、切った断面もぼろぼろになってしまった。
なんとか気を取り直して、周りを別の木で支えつつ、1本の木を丸太の上に立ててみた。
そして、ぼくは斧を上に振りかぶると一気に振り下ろした。
ドッ
小気味のいい音がして斧が、突き刺さる・・・・・・そう、丸太に・・・・・・
斧を丸太から引き抜くと、気を取り直して、今度は少し小さく斧を振り上げた。
カッ
振り下ろした斧は、木の角に当たり、少し角を削ったがそのまま丸太にあたり、木ははじかれて倒れてしまった。
何度目か繰り返したときに、小気味よい音とともに木が真っ二つに裂けて分かれた。
「やったっ!!」
思わず声がでてしまった、1回割るだけでかなりの回数を繰り返したので、手の平も痛く、肩で息をしているような状態だが上手くいったときの爽快感はなかなかだった。
次の木を、丸太の上に立てるようにしながら、辺りを見渡してみる。先ほど感じた声を出していたのではっきりとは気付かなかったけど、斧で木を割ったときに、なんだか妙な感覚がしたのだ。
当然のごとく周りには、草むらと森が広がっているだけで、ぼく以外にはだれもいなかった。
やはり気のせいだったのだろう、そんなことを思いながら斧を振り下ろす。
パキィ
振り下ろした斧は正確に木の中心を捉えて木が真っ二つに割れる。
思わず、斧を振り下ろした状態で固まってしまった・・・・・・
1回目の成功は偶然によるところもおおきかった、でも2回目は、まるで身体が動きを覚えているかのように自然な動きだった。
次の木を立てて、斧を振り下ろしてみる。
パキィ
気持ちのいい音を立てて、薪が真っ二つになる。
さらに、次の木も
パキィ
そのまま、あっという間に森から持ってきた木を薪にしてしまった。コツをつかんだなんて言葉ではとても説明できない。あたりに散らばった薪を集めながら考える。
そういえば、ノートに書いてあった気がする。
上達が早いってこういうことなのだろうか?それにしても、これは早いというものではないような気がする・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
いつまでも考えていてもなにもすすまない、ぼくは気分を入れ替えて、本格的に暗くなる前に火を起こすことにした。
用意したのは先端をダガーで整えた棒と、同じくダガーで溝を掘った太めの棒と、苔が枯れたものと思われる綿状の繊維を着火材として準備した。
幸いというかなんというか、火をおこすことに関しては若干の知識があった。それをどこで身につけたかは全くわからないのだけども・・・・・・
火を手でおこすやり方としては、きりもみ式といったように呼ばれる両手の平で棒を回転させる方法が知られていると思うが、やってみたことがある人にはわかると思うけど、案外これが難しい。
道具を使う方法もあることは知っているのだが、さすがに作り方が怪しかった。
そこでぼくが取ったのが、溝の中で棒を前後させる方法だ。基本的な原理は摩擦熱で火をおこすということで、他の方法と全く変わらないのだけども、しっかりと素材を固定した状態で、往復運動を繰り返すことが容易なので慣れていない人には火をつけやすいのだ。
家の中に戻り、暖炉の中に薪を組んで、火をつける準備をする。
太陽が陰ってきたこともあり、家の中に入ると部屋の中はもう薄暗かった。
早速、火をおこしてみる。
溝を作った棒の上に乗っかり、体重をかけて動かないように固定する。溝に先端を斜めに整えた棒をはめ込み手でしっかりと押さえて、溝の中を前後させる。
慣れていない人でもやりやすいといっても、決して楽な作業ではない。少し息がきれて、額に汗がにじんでくる。それでも、前後運動を繰り返すと、ようやく溝の中から煙が上がってきた。それでも繰り返し棒を前後させると、煙の量がどんどんと多くなっていく。
用意しておいた着火材を溝の上に置いてから、木をひっくり返して火種を落とす。
火種を慎重にくるんで、そっと息を吹きかける。煙の量がどんどん増えてきたのを見て、着火材を振って空気を火種に送り込む。
ボッ
火が上手く付いた、1回目で上手くいったのは運が良かっただろう。
暖炉の中にあらかじめ組んでおいた薪の下に慎重に配置する。着火材の火は、下側に配置した細い枝に移り、時間をかけて少しずつ薪を燃やしていく。
薪の位置をずらしたり、植物の節を抜いてで作った筒で空気を送ったりして、暖炉の火を安定させる。
これだけ火が付いたら大丈夫だろう。そう思ったとき
急に意識が鮮明になった気がする。
ハッと顔を上げる。
気のせいか・・・・・・なんといえばいいのだろう、どうにも表現しにくいが、頭の中で鍵があったような感覚というか、うーん、やっぱりよく分からない。結局やはり考えても仕方が無いという結論にいたり、そして、ぼくは考えることをやめた。
なかなか、バッっと人目を引くようなものを書くのって難しいですねぇと思いつつぼちぼち更新していきます!
ある出会いがあるまで、あと2~3話ってとこでしょうか