最後の俺
たくさんの俺が殺された。
やあ、と挨拶する気軽さで心臓を一突きにされた俺。
ボコボコに殴り殺されて顔もよくわからなくなった俺。
首を絞められた俺、バラバラになった俺、血を吐いて苦痛の形相を浮かべる俺、眠ったように死んでる俺……
全て、殺された俺。
それらのヴィジョンを俺は直感的に受け止めている。
前世の記憶ではない。それはパラレルワールドに生きていた俺から託された願いのようなものだ。世界を越えた警告。
にわかには信じ難いことだが、俺には一刻の猶予もない。それらの死は俺にも迫っている。
俺で最後だ。俺が殺されれば全ての世界から俺が消えてしまう。
けれど、俺に何が出来ると言うのだろう。
これはきっと走馬燈のようなものだ。
俺は俺を殺したやつを知っている。
どの俺も同じやつに殺された。
何の恨みがあるのか。そんなことはわかるはずもない。
全ての世界のそいつが俺を殺そうとしているのか、あるいは俺を消し去るために世界を渡り歩いているのか。
そんなことは知ったこっちゃないんだ。
既にそいつは俺の目の前に立って、ヘラヘラと笑っている。
取り立てて特徴はない。多分、俺と同じくらいの少年だ。
広い意味ではイケメンとも言われるだろうか。特に不細工というわけでもない。
何を考えているかわからないという表現がぴたりとはまる。
本能的な恐怖がある。一体、何者なのか。俺をどうしたいのか。
きっと、問う間はない。
そして、そいつは口を開いた。