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Voynich  作者: 朝習 亮
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幕間 -Blank-

どうも、朝習 亮です。

まだまだ下手くそですが、どうぞよろしくお願いします!

とある夜、とある街のとある海岸、とある倉庫の中。


派手な少年。

14、15歳だろうか。少女と言われればそうだと思うかもしれない中性的な顔立ち。

瞳はくすんだ金色、髪は肩に触れるくらいまで伸ばされ、しかも赤ワインのような深い朱色に染められている。

服装も決して地味とは言いがたく、街中では人目を引くだろう。……悪い意味で。

ファーの付いたポンチョに、髪色とよく似た色のパンツ。

ゴテゴテと装飾されたブーツは歩きやすさや快適性とは程遠いデザインセンスにもとづいて作られたのだろう。

しかも不思議なのが、そんな珍妙とも取れる出で立ちが、この少年にとても似合っているということだった。

彼は右耳から下がっていた長いチェーンピアスを手持ち無沙汰そうにいじりながら足元に向かって、澄んだソプラノの声で呟く。


「……んで?教えてちょうだいよ」


足元の、血まみれで横たわる、何か、に向かって。

「…し……ちょ……う、く…し…」

呻きながらわずかに震える血まみれの何かは、人間だった。

全身が、少年の髪色そっくりの色をした液体にまみれていてよくわからないが、若いスーツ姿の男性だということだけは分かる。

オールバックに固めていたのであろう髪はボロボロに乱れ、顔も傷だらけ、いや、むしろ傷のないところがない、という有りさまだった。

「きこえなーい。もっと、はっきり喋ってよ」

少年は足元の男の顔を、ぐりっ、と、ねじ踏みつける。

男の口から嗚咽が零れた。

しかし、少年は足に込める力を一切緩めない。それどころか更に体重を掛けるように、前のめる。

「アンタがやったことを考えなよ。早く喋って。ボクは気が短いんだ。喋るか、潰れるか、どっちがいい、のっ!」


ぼきり、と、嫌な音がした。


「………!!!」

男は声すら出ない様子で、体を激しく痙攣させる。

頬骨か、顎か、その辺りが砕けた音だった。

少年は、声を出したくても出せなくなってしまった男を見て、心底軽蔑するように舌打ちを一つすると、

「もぅ…これくらいでみっともないなぁ…アンタは痛がる権利も怖がる資格も持ってないんだ。アンタにあるのはボクに洗いざらい教える義務だけ。手は動くでしょ?わざわざ残したんだから…はい」

そう言って男の手元にメモ帳とペンを放り落とす。

「書いて」

少年の、年齢にそぐわない冷たい声に動かされ、男は痛みに震える手でペンを持つ。

男の記す文字は震えて汚かったが、読める程度には原型をとどめていた。

少年はメモを取り上げる。


「へぇ……」


少年の口角がにぃ…、と吊り上がった。

「噂には聞いたことがあったけど、まさか日本人だったとは思わなかったなぁ」

メモをくしゃりと握りつぶして、ポケットに突っ込むと、少年はポンチョから手帳を取り出す。

「、、、、、、、、、、、、、、、!!」

それを見た男の瞳に恐怖が浮かぶ。

ずり、ずり、と動かない体を無理矢理に動かして少しでも少年から距離を取ろうと芋虫のように這う。

が、


「覚悟しろ。アンタのやった全ての悪事の報いを受けろ。絶望しろ。アンタの抱いた全ての悪意の報いを受けろ。

ボクはアンタを赦さない。十万億土で泣いて詫びろ」


少年は、底冷えのするような、研ぎ澄まされた鋭利な声色で告げ、手帳をポンチョに戻した。

次の瞬間。


少年の両手に、異変が起きる。

純銀の手甲ガントレット

精緻で繊細な細工の施された豪奢なそれが、少年の両手を包む。

手甲はこまかい光の粒のようなものを振り撒きながら輝いていた。


そして、


重く、痺れるような轟音が響く。


少年が手甲を、男に向かって振り下ろしたのだ。

尋常な威力ではない。

拳の中程までがコンクリートの床にめり込んでいる。


「……終わりましたか」


暗闇の中から滲みでたかのように、不意に人影が少年に声をかける。

「うん、終わった。片付けは」

「つつがなく行います。お任せを」

メイドだった。

黒と白のツートンカラーのメイド服。

後頭部にシニョンを付けた彼女は、流暢な日本語を話しているが日本人ではないのだろう。

ガラス細工のような大きく青い瞳に、曇り一つ無い金髪は、完璧な“西洋人”と言った風体だった。

彼女は少年の足元に転がる男、いや、すでに頭部を砕かれ、ただの服を着た肉塊を見て、ため息を零す。

「…もう少し、片付けやすくしていただけると助かるのですが、まぁ、申し上げても無駄なのでしょうね」

そう言って、少年に向き直り、

「それで、次はどこへ向かわれますか?」

と、問う。

問われ、少年は手甲のままポケットに閉まっていたしわくちゃのメモをメイドに渡す。

「ここだよ」

メイドは、そのメモを受取り、

「……これ…は、また。厄介なことになりますね」

渋い顔でそう呟いた。

「ナーシャ。やっと、ボクの願いが現実味を帯びてきたよ」

少年は手甲で髪をかきあげながら、張り詰めた、それでいてどこか疲れたような口調で言う。

「4年越しの悲願だ。全てを犠牲にしたんだ。故郷を捨てて、身分を捨てて、友達もいなくなった。……でも、その犠牲だって、この願いが叶うなら安いものだね」

少年は、見た目からは想像もできないような深い声で続ける。

「行こう。ナーシャ。次の獲物は……」




「------------------ 浮橋 織々だ」

どうだったでしょうか。

感想、意見、アドバイスをいただけるとありがたいです!


twitter........tomonara_1014

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