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救助

 一体どれくらい時間が経過したのだろうか。


 僕は首を動かして窓の外を見る。いまだに外は暗く、吹雪が窓を打ち付けている。カタカタと揺れる窓の外には粉雪が舞い落ちていた。


 何か喋ろうとしたが、口が動かなくなった。


 当然だ。僕の能力はモノを凍らせる能力だ。自分を凍らせているのだから、口も麻痺して動かなくなる。


 杉本はたまに苦しそうな表情になる。口の泡を拭いてあげたけれど、たまに真っ赤に染まった泡を吹いていた。まだまだ予断を許さない状況だった。


 華彩の治癒能力をもっと早く施すべきだった。今更言っても遅いのだけれど、杉本の容態は思った以上に深刻なのかもしれない。


 僕の身体は冷たくなる。華彩を抱きしめる両腕にもはや感触はない。手は青白くなり、いつの間にか鼻水すらでなくなっていた。


 やっぱり、僕は人間だ。この能力は人間の限界を超えている。


「ねえ、吉岡くん」


 いつの間にか、再び華彩の頬に汗が滴っていた。


「ごめん、気を抜いてたみたい」

「ううん、これは違うの。私は大丈夫だから。でも……」


 その続きはなんだったのだろう。僕は彼女の言葉を最後まで聴くことはできなかった。意識は途切れ、やがて何も見えなくなった。




 ――バシャ。雪が落ちる音で目を覚ました。


 いつの間にか眠っていた。僕は床下に倒れ、顔をあげると目の前に暖炉があった。暖かい炎がメラメラと燃えている。


 窓から日差しが差し込んでいた。その事実に気づいて、ゾッとした。


「華彩!」


 僕が後ろを振り向くと、全身裸になった華彩がいた。


「何やってるんだよ」

「燃やすものがなかったから、服を入れたの」

「そうじゃねえよ!!」


 僕は彼女を抱きしめた。すぐに身体を冷やそうとしたが、華彩の身体はまったく冷たくなかった。どこにでもいる、普通の女の子と同じ体温だった。


 肌はじっとりと汗で濡れ、頭からは白い蒸気が再び噴出していた。


「ごめん、すぐに冷やすから」

「ううん、もう大丈夫。もう大丈夫だから。本当にゴメンね。吉岡くん、サヨナラ」


 蒸気は止まらない。やがて彼女はぐったりと倒れこみ、そのまま蒸気となって消えてしまった。


 僕は床を強く叩いた。




 華彩は、消えてしまった。僕はしばらく呆然としていた。どれくらい時間は経過したのだろうか。それほど時間は経っていないと思う。やがて、空からドドドという轟音が響いた。


 轟音はかなり近く、僕は玄関から外に飛び出した。階段を降りて見上げると、空にはレスキュー隊のヘリコプターが旋回していた。

 輝く太陽の下で、ヘリコプターの扉が開いた。そこには数人の大人が搭乗していた。後ろを振り返ると、山荘からはモクモクと黒い煙が出ている。


 そう、か。あれが目印になったんだ。あれだけ沢山煙が出ていれば、すぐに発見できるに決まっている。


 だから僕は、泣いた。


 どうして、どうしてどうして――もっと早く助けてくれなかったんだ。


 僕はその場に崩れ落ち、何度も何度も地面を叩いた。

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