表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

破壊

 ケータイの電源が落ちた瞬間、目の前が真っ暗になった。両端にいた二人がそっとこちらに寄ってくる気配があり、僕は言う。


「大丈夫。一緒に行こう。慎重に歩いて、転ばないよう、手を握りしめて、歩くんだ……」


 口が冷たくなり、一言喋るだけで大きな労力を消費した。滑舌は悪くなる一方だった。それは二人も同じで、彼女たちは一言も話さずにただ近寄るだけだ。


 僕らは慎重に歩いた。たまに木にぶつかって転びそうになったが、慌てずにゆっくりと慎重に足を前に出すことで、確実に前進していた。


 やがて、今までのごわごわとした気配とは違う、垂直に建てられた木材らしきものに顔面から衝突した。


 鼻が痛かったけれど、少しだけ嬉しい。「見つけた」



「でも、入口がないよ」

 夏樹が言う。「どうやって入るの?」


 僕は記憶を思い出した。確か、階段があったはずだ。


「壁伝いに歩きましょう」

 華彩が言う。「山荘を一周するまでに、絶対に扉が見つかるはずだから」


 僕らはその提案に同意した。こんなところに電気がきているのか不安だったが、とにかく外にいるよりかはマシだ。杉本の容態も気になるし、一刻も早く部屋の中に入る必要がある。


 僕が彼女達と一緒に家を回ろうとすると、華彩が僕の手を掴んで引き止めた。「時計回りにしましょう」


 彼女は僕を引っ張り、それにつられて夏樹もついてくる。彼女は杉本の手を握りしめているのでどこにいるかは目で確認することができず、気配でどこにいるのか感じるしかなかった。


 ざくざくと雪を踏む音がする。風は冷たく、全身が芯から冷えるせいか、身体から震えが止まらなかった。鼻水は止まらず、頭はガンガンと痛み始めていた。


 それでも僕は華彩の小さな手に引っ張られるようにして山荘を壁伝いに歩いた。やがて、華彩の「見つけたよ」というか細い声が聞こえた。

「ここ、階段になっている。私が最初に登るから、ついてきて」


 待って、と言いかけたが、華彩は既に階段を上っていた。確かにこの大人数で灯もなしに階段を登るのは危険かもしれない。


「吉岡くん!」

 上の方から華彩の声が聞こえた。「お願い、ちょっと来て!」


 僕は杉本を壁に寝かせ、階段を這うようにして登った。暗くて階段が見えないから、触って感触を確かめながら登るしかなかった。一段ごとに雪が大量に積もっていて転びそうになったが、なんとか入口に到着した。


「華彩」

「こっちに来て」


 突然、華奢な身体が僕の目の前に現れた。あまりにも唐突なので華彩のオデコが鼻に激突し、痛みが走った。


「ご、ごめんなさい」

「大丈夫だから。それより、どうしたの?」

「この扉、開かないの」


 僕は手を伸ばしてゆっくりと進む。すると、確かにドアとドアノブがあった。ドアノブには雪が積もっていて、それを払い除けて一度押し、さらに引いてみたが扉はビクともしなかった。


「どうしよう」


 華彩の声が弱々しくなった。


「壊そう」

 もう躊躇している場合ではなかった。僕は華彩の返事も聞かずに、扉に体当たりした。一回目は無残にも跳ね返され、そのまま地面に崩れ落ちた。


 だいぶ体力を失っていたのかもしれない。僕はもう一度体当たりした。バキッと何かが壊れる音がした。あと少しで破壊できるかもしれない。


 僕は助走をつけて、再び肩から扉に突っ込んだ。その瞬間、蝶番が外れる音がして、そのまま扉は前へと倒れた。


 扉は開いた。部屋の中は外と同様に真っ暗で何も見えない。「何か、明かりになるものを探そう」


 僕と華彩は手当たり次第に何かを探した。なんでも良かった。とにかく、明かりさえあれば、なんとか事態を打開できる。


 本当に、これは何の役に立つのだろうと僕は自分に対して腹がたった。モノを凍らせる能力なんて、何の役にも立たない。何かモノを燃やす能力の方がずっとマシだ。


 カチリ、という音がした。その途端、暗闇を光が切り裂いた。


「あ、吉岡くん、そこにいたんだ」


 見ると、華彩が懐中電灯を持って立っていた。


「ここ、昔誰かが住んでたみたい。いろいろ置いてあったよ」


 彼女はもう一本懐中電灯を僕に手渡した。僕がそれをつけるとライトが照射され、壁に二つの丸を浮かび上がらせる。「よく、見つけられたね」


「偶然だよ、偶然」華彩は疲れたような笑みを見せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ