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爆発

「ねえ、焦げ臭くない?」


 あれから僕らは携帯を使って119番に連絡した。いくら最新のテクノロジーを駆使しても僕らの位置を特定することはできないようで、僕らは車内でいつ来るかもわからない救助隊を待つことになった。


 車内は急速に冷え込み始めていた。あれから何度もエンジンをかけてみたのだけれど、自動車は完全に停止してしまった。


 夏樹に言われて冷たい空気を鼻から吸い込んでみた。確かに、焦げ臭い。


 できれば車の外に出て、臭いの原因を突き止めたかったけれど、肩を串刺しにされている状態の杉本を見てしまうと、車の扉を開けることに若干の遠慮を覚えた。


「吉岡……」杉本はこちらの意図に気づいたのかもしれない。「いいよ。確かめてきてくれ」

「でも……」

「大丈夫」全然大丈夫じゃない声で杉本は続ける。声には痛みと苦しみが混じっている。「外に出て、確認してくれ」


 僕は外に出た。そしてすぐに扉を閉めた。


 素早く前方に回り、ボンネットを開けた。すると、中から白い煙が噴出した。煙が目に入り、しみる。目が痛くなり、こすりつけた。そして中身を見た。そして絶句した。


 エンジンは燃えていた。その火はボンネットを開けた瞬間にさらに広がり、大きな炎となった。

 ――爆発する。


「外に出ろ!」僕は大声をあげた。「早く!」


 夏樹も華彩も目を丸くしていたが、僕が運転席側の扉を開けて杉本を担ぎ出し、「早くしろ!」と怒鳴ることでようやく事態を理解し始めた。彼女たちは急いで外に出た。


 杉本を背中に背負い、ひたすら夜の雪道を走った。どれくらい走ったのかわからない。枝や木に何度もぶつかりながらも、お互いの距離を縮めながら走っていると、やがて後ろから大きな爆発音がした。


「きゃあ!」


 華彩も夏希も悲鳴をあげる。僕も後ろを振り返った。先ほどまで車があった場所が、今や火災現場となっていた。火は周囲の木々に飛び移り、さらに広がりを見せる。


 まずい。火災だ。


 はあ、はあ、はあ……荒い息遣いに息を呑む。


 あれ、なんだっけ。森林での火災で最も気を付けないといけないことって。


 僕は必死に頭を巡らす。そして、ざわざわと揺れる木々を見て、思い出した。


 ――風だ。


 冬の風は冷たい。その風が、顔面に強くあたっている。つまり、風は火事が起こった方角から僕らの方に向かって吹いているということだ。


 炎が、こっちに来る。


「逃げるぞ!」


 杉本を担いで、僕は地面にぺたんと座り込んでいる二人に声をかけた。夏樹の顔は完全に青ざめている。


「どうしよう、吉岡」メラメラと燃える炎の照らされた夏樹の唇は紫色だった。「私、車の中に携帯、置いて来ちゃった」


 それは――僕も同じだった。

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