婚約者と妹が愛し合っているとかで、前の人生の記憶を取り戻しました。
「ごめん、シルヴィアを愛しているんだ」
いきなり、婚約者からそう言われました。その婚約者の隣りには、何故か妹シルヴィアがいて、この言葉でようやく、合点がいきました。
合点が行ったついでに、前の人生の記憶も取り戻して、スンとなりました。
「そう。それで?」
「だから、婚約者をシルヴィアにしたいんだ」
「そう。それで?」
「婚約者を変えたいって言っているのに、なんで他人事なんだよ」
「この婚約は家同士の約束よ。私に言っても、何にもならないわ。本当にシルヴィアと結婚したいのなら、両家の当主に言いなさい」
「「!!」」
馬鹿らしい。
こっちは前の人生でお飾り妻歴20年のベテランだっつーの。
よっぽど、ピーな親以外は姉の婚約者を略奪婚なんて許さない。
同じ家の娘ならどっちでもいい?
馬鹿か。嫁ぎ先は自分の家と合わない娘なんか、同じ家の娘でも嫁にしたがらねーんだよ。
愛人の子どもたちを自分の子どもとして育てても、いつバレるかヒヤヒヤしていて、無事に結婚するまで心が休まる暇なんかなかったわ。
愛人の子どもだと、わかった日には婚約破棄だぞ。青くない血は入れたくないとか、いう奴がいるから。
ホホホホホ・・・。
お口が悪くなってしまったわ。
寝言を言い出した二人を置いて、私は立ち去ることにした。
お飾り妻歴20年と今回で知ったことは、姉妹の婚約者を略奪する場合、大概、慌てて結婚、ゆっくり後悔になるのである。
だって、家に出入りする恋愛対象になるのは、姉妹の婚約者しかいない。父親や兄弟の客の前に出るなど、呼ばれなければ躾がなっていないと、部屋に軟禁されるような大罪である。
つまり、比較対象のない状態で、目についた男がよく見えただけである。
その証拠に――
「シ、シルヴィア。殿下と何をしているんだ・・・?」
放蕩王子とベランダでキスをしているところを婚約者に見咎められた妹。
馬鹿である。婚約を変えてもらったというのに、馬鹿である。
姉妹の婚約者を略奪成功した場合、更に調子に乗る例が前の人生でも、今回でもあった。
妹の顔は蒼白でも、放蕩王子は気にしない。
修羅場?
何を以てして、修羅場というのか?
姉から略奪までした婚約者がいるのにも拘らず、放蕩王子とキスをしていたぐらいで修羅場?
姉妹の入れ替えを知っている者は、特に何とも思わないだろう。ああ、男にだらしない妹の浮気現場が見つかっただけだと。
馬鹿なのは、そんな妹を選んだ婚約者。
でも、本当に馬鹿なのは、傷付いたフリをして放蕩王子の同情を誘ったら、付き合っていると思って手を出した妹。
婚約者を奪えた成功体験で調子に乗って、放蕩王子も奪えると思った馬鹿な妹。
婚約者の時は自由の身だったが、今は婚約している貞節を誓う身。
すべてを敵に回して、姉の恋人を奪おうとした結果、すべてを失った気持ちは、どんなものだろう?
予定通り二人は結婚したが、喧嘩の絶えない仮面夫婦で、互いに愛人がいる状態だそうだ。
婚約者を失うような魅力がない上に、放蕩王子との付き合いで評判が下がった私に、結婚話はない。
でも、父は妹夫婦ではなく、私の子どもに次の子爵になってもらいたがっている。父親のわからない子どもに。
だから、そうキリキリしないで。元放蕩王子の奥様。




