プロローグ
高卒で就職後早々にリストラされ、転職先はブラック企業。学歴主義者の両親には絶縁された。パワハラ上司に、使えない部下。仕事を押付けてくる同僚。会社が嫌になっていた矢先、居眠り運転をしていたトラックに気付かず轢かれる。
こんなところで死ぬのかよ!!!
なんて思っていると、謎の声が聞こえてくる。その声に返事をしたから、どうやら転生したらしい――。
今日は日曜日。それは極楽。誰にも縛られず、何も気にせずゆっくりできる至福の時間。朝一でビールとコンビニスイーツを買って食べ、家でアニメを見ながらゴロゴロする。それが俺にとっての贅沢だ。コンビニを出て、家に帰る。家と言っても、安いボロボロの賃貸。所々軋むし、雨滑りだってする。まあ、あまり家には帰らないんだがな。
そんな俺こと山本咲。女っぽい名前だし、なんとも名前負けしている。幼稚園と小学校では女っぽいとからかわれ、中学と高校では陰キャだったからっていう理由で陰口を叩かれてたっけな。そんな生活に耐えられなくて高校を卒業したらすぐさま就職したが、リストラされて全部パー。転職した先はクソがつくほどブラック企業。基本帰れるのは日曜のみ。有給を取りたいなんて言うと減給される。毎日怒鳴ってくる上司、ミスをしてはヘラヘラしている部下。そんな会社に嫌気がさしていた。
「明日もまた会社か......」
無意識にそんなことを呟いた。嘆けど会社は辞められない。(転生、してみたいな。)なんて思ってもできないんだろうけど。もうどうでもよくなって自然と笑いが込み上げてくる。
深夜1時。もう夜になってしまった。連日仕事で疲れていたのか、やけにすぐ眠ってしまった。
朝5時。すぐ朝が来た。寝た心地がしないが、早く仕事の準備をしなければ。軽くシャワーを浴びて、よれよれのスーツに着替える。鞄を持って家を出る。朝6時には会社について、ひたすら働く。働く。働く。
「山本!!!こっちへ来い」
「はい!」
部長に呼ばれ、しぶしぶながらも慌てて机に向かう。(コイツの説教長いから嫌なんだよなあ。無茶ばっか言ってきやがるし。)頭の中で文句を垂れながらも、1ミリも心に響かない話を聞く。
「大体お前はなぁ、基礎から出来てないんだよ基礎から!何回も言ってるのになんで分からないんだよ!?ほんっとうに使えない部下だなぁ!高卒でリストラされて雇ってやったというのに感謝の気持ちもないのか!?」
「大変申し訳ございません」
「それも何回目だよ!申し訳ございません申し訳ございませんって、何も学んでねぇじゃねえかよ!!」
(謝らなかったもっとキレるくせに……。)会社に入って早々に目をつけられているのはわかった。部長は高学歴だったらしく、俺のことを見下している。社員の視線が集まる。同情だかなんだか知らないが、俺みたいにはなりたくないと思っているのだろう。
「はぁ、もういい、早く席に戻って仕事をしろ! 話すだけ時間の無駄だ」
大きなため息を着きそう言う部長に、俺は返事をして仕事に戻る。同僚が勝手に置いていった書類に、部下のミスの訂正、上司の説教。今日も変わらない1日だ。
(もうこんな時間か……。)時計の針が午後7時を指す頃、一旦夜休憩にすることにする。スーパーに惣菜と飲み物を買いに行って、会社のシャワールームでシャワーを浴びることにした。少しの間会社から開放されることが嬉しく、ルンルンな気分でスーパーに入る。(おっ、値引きされてるじゃん。)惣菜コーナーに行くと、値引きされていた唐揚げがあった。 (安いし美味そうだしラッキー!)なんて浮かれながら、お茶もとってからレジへと向かう。
「お釣りが283円になります」
「ありがとうございます」
会計を済ませ、スーパーを出る。どう見られているかは知らないが、こう見えて店員さんにお辞儀をするくらいには礼儀はなっている。今日もまた残業か、なんて思いながら歩いて行くと、交差点に差しかかる。信号が青になり、迷わず進む。
きっと疲れていたんだろう。居眠り運転をしているトラックに気が付かないくらいには。
「危ないっ!!!」
50代くらいの男の人が叫んだ。袖を掴まれた気がするが、もう遅かった。
「「キャァァァーーー!!!」」
ドーン!!!
甲高い声が上がると共に、全身が鉛のように重くなるのを感じる。勢いよく跳ねられたのだ。あんな勢いだったのによく身体がバラバラにならなかったなと思う。鉄の匂いがする。血の匂いだ。周りの人が何か言っているようだが、何を言っているかわからない。身体が重い。頭からドクドクと血が流れているのがわかる。助からない。そう思った。なんちゃってだが医療の知識は多少ある。全体の3分の1くらいの血が出たら死ぬんだっけ。
「今すぐ救急車を……! もしもし!」
必死に救急車を読んでいる人の声が聞こえてきた。呼んだって意味が無い。もう身体に感覚がない。あぁ、このまま死ぬのか。まだ死にたくない……せめて……自由に生きてみたかった……。
《スキル【転生】を使用しますか?》
どこかから声が聞こえたような気がする。(スキル?転生……?そんな漫画みたいなことあるわけないだろ。)
《もう一度伺います。スキル【転生】を使用しますか?》
幻聴じゃなかったのかもしれない。出来るわけないとは思ったが、転生という単語に興味が惹かれ、返事をする。きっと声は出ていなく、口だけパクパクしているのだろう。
《スキル【転生】を使用します。準備が出来るまで少々お待ちください。》
もう視界が暗くなってきた。死んだのか、俺。転生なんて嘘だったじゃないか。はぁ、……。人の死を見ることはあったが、死後の世界なんか見当がつかなかった。冷たい。天国?地獄か?……天国はないな。全く光が見えない。
《スキル【転生】の使用準備が整いました。スキルを使用します。》
(スキル……?あぁ、まだ幻聴が聞こえる。転生……か、出来たらいいな。)
身体が熱くなる。体温を取り戻したかのように。身体が創られていくような感覚がする。まさか――。
いや、そんなまさかな――。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
当方、文字書き初心者の中学生です。
小説家になりたくて、なろうで連載してみよう、となり書いている所存です。
文章がおかしい所が多々あるかと思いますが、温かい目で見て貰えたら嬉しいです。
今後とも連載する予定ですのでご贔屓にして頂ければ幸いです。あ