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シトミトゼ  作者: 暁針
プロローグ「アグスティア祭」
3/29

2.レプゴダー




朝食を食べいつも以上に賑わっている街中をツィリカと一緒に歩いていく。目的地は大会が行われるコロシアムであるが、大会が開催されるまで少し時間があるためぶらぶらと過ごすことになった。



「お!サンじゃねぇか!今日の大会優勝するんだろ?去年の大会のように俺たちを盛り上げさせてくれ!!」

「あぁ、頑張るよ」

「ツィリカちゃんじゃなーい!ちょっくら店寄ってくれよ!大会用に色んなもの包んであげる!」

「わぁー!ありがとう!!」

「二人とも今日は頑張ってくれよ!エレアノールを見習ってな!!」

「ああ/もちろん!」



四方八方から声が掛かりそれに一つずつ対応していく。日頃からお世話になっている人達から労いの言葉をもらい、気合いをもう一度入れ直す。すると横から何かを見つけ出したのかツィリカが急に走り出した。



「ミドーーーー!!!!おはようーーー!!!」



手をブンブンと振りミドの元へと駆け寄っていく。括っている髪がポヨンポヨンと揺れまるで犬のしっぽのようである。ミドは急に現れたツィリカに驚いたのか目をまん丸にしてツィリカが転けないよう反射的に手を添える。少しふらついたが難なく元の体勢に戻ったようだ。あぶねぇだろ!とツィリカに声をかけながら俺も二人の元へと駆け寄る。



「おはよう、ミド」

「おはよう、サン、ツィリカ」



にこやかに笑みを浮かべ優しい表情を浮かべるミド。その手はツィリカの頭にあり髪を整えるように優しく撫でられる。ツィリカはそれが気持ちいいのか、目を細め身体をミドに預けていた。相変わらず仲がいいなと俺は二人を見つめる。そしてこの様子を過激ファンに見つかってはまずいと俺は二人の距離を適切な状態にした。



ミドという人物は眉目秀麗、成績優秀、温厚篤実。まさに十全十美といった男である。昔は泣き虫で俺の後ろによく隠れていたものだが、いつの間にか強くなっており、三年前の〈魔物の大量発生〉では素晴らしい戦果を残してくれた。その影響なのかは不明だがミドを熱い目線で見つめる人が陰ながらではあるが多く存在しており、秘密裏にファンクラブなるものも存在しているようだ。表立って騒ぎを起こしたことはないが、抜け駆けしようものなら冷たい目線を向け、何をされるのか検討もつかない。そのためツィリカ以外の女性はあまりミドに近づこうとせず一種のスポットと化しているようであった。

幼馴染ながらもミドという人物に少し恐れを抱く。



俺がそんなことを考えている間にも、二人は談笑を続けていく。そして話題は今日のアグスティア祭へと移り変わっていった。



「今日の大会ってやっぱり参加しないの?」

「うーーん、参加しないかな?やりたいこともあるし」

「えぇーーー!!本当に??ミドと戦いたかったんだけどなぁ・・・・・・。やりたいことはまだ教えてくれない?」

「そうだね、まだ秘密にしておこうか。でも教えられる日が来たら教えるよ」

「・・・・・・わかったぁ」

「どうしても出ないのか?」



同じ質問をこの日に至るまで何度も繰り返してきたがやはり決意は固い。



「ごめんね?でも観戦はするつもりだから二人の勇姿はこの目に焼き付けておくよ。それに僕も参加したら誰かはここに残らないといけないよ?」

「・・・・・・確かにそれもそうなんだが」

「でしょ?それならそこまで王都に行く意欲がない僕が大会に出ないのはいい手だと思わない?」

「まあ、そうなのか?」



ミドに上手く丸め込まれたと感じたが、決意は固いようだと俺たちは説得を諦め、三人で歩きながら談笑を続けていく。その後も店の店員や酒飲みのおっちゃん、小さな子どもたちから応援の言葉をもらいコロシアムへと歩みを進めていく。するとある男の悲鳴が右手の黒の教会から聞こえてきた。なんだ?と視界を右にずらすと首輪をつけ、赤黒く染まった服を身につけた男が左足を切り落とされた瞬間であった。みすぼらしいズボンとともに切り落とされた左足が異様に目に入る。



「なんだ、奴隷か」

「悲鳴をあげるぐらいだったら犯罪なんて起こさなかったらいいのにね?」

「確かに」



ギャーギャーと痛みで喚き散らす男。切り口から血がじわじわと服に染み込んでいくのがわかった。本能的に出血多量だろうと感じたのか必死に足を押さえつけるがそんなものは意味が無いということになぜ気が付かないのだろうか。《神の祝福》で元通りになるというのになぜなのだろうか。思考というものは本当に千差満別だ。そんなことを考えている間にも足を切り落とされた男に《神の祝福》は舞い降りてくる。しかしそれは男にとっては悪魔の祝福だったようだ。



「嫌だ、イヤだ、いやだ!もう戻りたくない!殺してくれ!俺を殺してくれ!うわぁぁぁぁ!!!」



修復された身体はすぐに切りつけられ、殴られ続け、ありとあらゆる方法で男を壊していく。時には思いっきり、時にはじわじわと奴隷の男を痛めつけ、暇を許さない。近くには拷問器具がズラリと並べられており、所々血肉がついたものも存在する。現場を見るに先程までは男の身体から取り出した臓器を一つずつ串に刺し、目覚めた男の前で披露したようだ。上の方で刺されていた胃の未消化物が下の臓器へとソースのように掛かり、匂いも大層酷い。



「おいおい、まだ三桁も到達してねぇぞ?お前が犯した罪、自分でよく分かってんだろうな?こんなんじゃいくら待ってもお前の罪は消えねぇぞ!?」

「悪かった!!被害者には誠心誠意謝罪する!!だからもうやめっっぐわぁぁぁぁぁ!!」

「ははっ!今日のノルマが終わってないのにやめるわけないだろ?それにこういう奴はここでやめたら調子に乗るからなっ、とぉ〜!」



煩わしい声が辺りに木霊する。切っ先の鋭く薄い刃が肩を貫通し地面へと突き刺さった。奴隷の男が必死に腕を伸ばし引き抜こうと頑張るが、動く度に痛みが増し中々抜ける気配は無い。教会の男が柄頭を足で踏みつけると更に意地汚い声が周囲へと広がった。しかし叫びすぎたことにより喉が枯れてしまったようだ。ガヒュ、ガヒュとほぼ息しかしていないようなそんな声しか聞こえてこない。あまりにも惨めな姿を横目にしつつ、俺は現在進行形で奴隷に罰を与えているレプゴダーのダリスおじさんに声を掛けた。



「よ!ダリスおじさん!」

「ん?お、おぉ!サンか!今日の優勝候補のお出ましじゃあねぇか!」



俺に気づいたダリスおじさんが笑顔で手を振った。近づくと葉巻を吸っているのか少し煙たい。至る所に赤黒い液体を付けたおじさんにバンバンと背中を力強く叩かれ、ヒリヒリと痛む。自分の体格と手に付いた血の量を考えてくれとガハハと豪快に笑うおじさんを見ながら俺はそんなことを思っていた。



「ちょっとー!私もいるよ!!」

「おおぅ、ツィリカじゃねぇか!それにミドも!」

「こんにちは」



ツィリカとミドの存在を認識したらしいおじさんは先程俺にしたことと同じことを二人にもした。背中にははっきりとした手形の血で汚れ、特にミドは白のシャツを着ていたためくっきりと残ってしまっている。ミドは背中がヒリヒリするのを気づかいながら、背中に手を当て〈クリア〉と唱えた。血が綺麗に消えシャツが清潔になっていく。逆にツィリカは特に気にならないようだ。なんなら頭を撫でるのをおじさんに要求し、髪も赤く染まっていく。



「おい、汚ぇって」



おじさんに頭を撫でさすのを止め、〈クリア〉をツィリカにかける。汚れるのを全く気にしないツィリカに呆れつつも、おじさんとの会話に花を咲かせていく。下に男が一人いるが特に気にはしない。



「お前ら、大会の準備は大丈夫なんだろうな?」

「もちろん、絶対に勝つつもりだよ!」

「優勝しなきゃ、王都に行けないしな」

「ははっ!そりゃあいい!お前らが弱気だと大会がつまんなくなっちまうしな。けど今回は実力者揃いだな。サンにツィリカにミドに・・・・・・、他にもドリトンさん家の娘さんだったり、今回がラストチャンスだって燃えてるラルクだっているしな」

「それがミドは参加しないんだって〜」

「なんだ、そうだったのか」

「はい、そうなんです。やりたいことがありまして」

「まぁ、参加するしないは自由だからな。強制させるもんじゃない。それにミドに何かあったら悲しむ奴が多そうだしな」



そう言ってお茶目な表情をしながらウインクをしたダリスおじさん。それに困惑したミドを放っておき、ずっと気になっていた疑問をぶつける。



「でも、ダリスおじさんだってコロシアムの司会毎回断ってるだろ?なにか理由があるのか?」

「確かにー!!なんでやらないの??」

「いやーー、そういうのは性にあわねぇっつーか、めんどくさいっつーか・・・・・・。そういうのはやらねぇって決めてんだよ」

「えぇーーーー!!!なんでーー??」

「レプゴダーにしか出来ない名誉ある役なんだろ??お堅い連中を黙らせるのにぴったりじゃないか」

「まぁーーそうなんだが。どうしても気が進まねぇつーか、ダルいんだよなぁ・・・・・・」



どうしてもやりたくないのだろう。オブラートに包みながらも断固とした拒否を感じる。まぁ、自由気質なダリスおじさんのことだ。堅苦しい挨拶やなんやらがめんどくさいだけだろう。それに大会の準備には一ヶ月前から携わらないといけないらしいし、そこまでしてやりたいとは思わない・・・・・・といったところか。勝手な憶測であるが自分なりに納得し、説得を諦める。しかし隣にいるツィリカは諦めていなかったようだ。



「えぇーーー!!今からでもダメ?絶対にダリスおじさんが司会したら楽しいのに。パッとしない奴なんかよりダリスおじさんの方が盛り上げられるって!」



頬をぷくっと膨らませながら、ダリスおじさんの腕を小さく揺らすツィリカ。それでも決意は硬かったようだ。悪ぃな、と苦笑気味に断られてしまった。



「むーーー!!」



納得いかないと言葉にならない声を上げるツィリカであるが、ミドが優しく宥めたことによって少しずつ落ち着いてきたようだった。声はなりを潜め、渋々といった感じで受け入れる。これ以上の説得は難しいと気づいたようだ。しかししかめっ面なことには変わりない。さらに機嫌が悪くなる前に話をすり替えようと、先程から下の方で呻き声をあげる男に目をやる。



「そういや、こいつの刑って重たいんですか?さっきからギャーギャーとうるさいんですけど」

「いんや、第四級ぐらいの処罰なんだが、如何せんこいつの心が弱すぎてなぁ。何やっても喚くことしかしねぇ。それに外の奴っていうのも関係があるかもしれん。痛みの耐性が低すぎる」



そう言ってほら、と言わんばかりに蹲る男に近くにあった長物の剣で躊躇なく腹を突き刺すと、またしても悲鳴を上げた男。なるほど。確かに痛みに弱そうだ。いや、ここの奴らが強すぎるだけだろ。はっと我に返り、自分の常識が塗り替えられるのを必死にせき止める。男はというと今のが致命傷になったのだろう。ピクリと動かなくなったが、清廉とした《神の祝福》であっという間に修復が始まり、身体が治っていく。



「ゔぅ・・・・・・あぁ・・・・・・」



しかし身体が治ったのにも関わらず、どこか虚ろな表情で一点を見つめる男。地面に倒れていた姿勢を起き上がらせることなく、微動だにしない。その目は生気を失い、どこか死んでいるようだった。先程の阿鼻叫喚とは打って変わり少し気味が悪い。



「おい、まさかこいつ心が死んだのか?」



しゃがみこみ奴隷の髪を上に引っ張ることで顔の状態を確認する。しかし焦点が定まっておらず、明らかに異常な光景にダリスおじさんは状況を理解したようだ。



「はぁー、まじかよ。心が死んでやがる。こいつはもうダメだな」

「本当に?拷問が嫌すぎて嘘をついている訳じゃなくて?」

「あぁ、たまに嘘をつく奴はいるが、そんなのは一目見たら分かる。こいつは嘘をついていない」

「・・・・・・」

「あーめんどくせ!今日はアグスティア祭があるから早めに終わろうと思ってたのに!スピチュアに連れていくために書類を書かないといけねぇじゃねぇか!」



髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱しイライラが滲み出ている。予定していなかった出来事に今日の予定が狂ってしまったようだ。



「悪ぃ、今日の大会観に行くのちょっと遅れそうだわ。せっかくお前らの晴れ舞台なんだ。最初から見たかったんだけどなぁ」

「しょうがないですよ、こんなことになるなんて誰も予想できませんでしたし。それにサンとツィリカも負けるなんて1ミリも考えていないでしょ?」

「もちろん!!絶対に優勝するって決めたもんね!!」

「当たり前だろ??おじさんが仕事を終えた時には素晴らしい結果を残しているに違いないからな」

「ははっ!言ってくれるじゃねぇか、じゃあ楽しみにしとくぜ、お前ら頑張れよ!」



そう言ってダリスおじさんは仕事を早く終わらせるため心が死んだ奴隷を素早く引っ張って奥の部屋へと消えていった。その光景をダリスおじさんが視界から消えるまで見届けたあと、俺たち三人は目を合わせコロシアムへ向かおうと意見を一致させる。黒の教会から出て、三人で会話をしながら歩いていく。すると途中で後ろから何かがぶつかる感触がした。



「ん?」



後ろを振り返ってみるといつもの悪ガキ坊主らがこちらを楽しそうに笑っている。手に持っているものは緑色の・・・・・・スライムか。くそっ!!またイタズラされてしまった。アグスティア祭だからって気を緩みすぎた。段々と背中側がねばねばとした感触になり、なかなかに気持ち悪い。



「おい!!お前ら!!何しやがる!!」

「うわっ!!サンが怒った!!にっげろーーーー!!!」

「今日という今日は許さねぇ!!」

「わーーー!!ミドーー!!助けてーー!!」



追いかけ回す傍ら、悪ガキどもはそう言って素早くミドの後ろ側へと避難する。ミドは少し呆れた目をしながらも楽しそうに、盾として俺からそいつらを庇う素振りをする。そしてそんな様子をツィリカは豪快に笑いながら野次を飛ばす。



「おい、ミド。悪いことは言わない。そいつらを引き渡してくれないか?」

「うーん。でも僕助けを求められたからね。助けを求められたら戦う、それが僕の信条ってやつだよ」



くそっ!変なところで意地がある。これは折れてくれそうにないな。ってあいつら!!俺が手を出せないと踏んでバカにしやがって!!あっかんべーをしながらこちらを笑う二人にムカついた俺は、気を抜いている隙を狙ってミドの背中へと回り込み悪ガキどもの首根っこを掴んで宙へと浮かばせる。



「あっ」

「うわーー!!離してよーーー!!!」

「悪かったってばーーー!!!」



手足をバタバタとさせながら許しを乞う二人。かわいい顔しても無駄だ。俺はそんな二人の額を反省の意味も込めて軽くぶつけ合わせる。想像以上にごつい音を響かせてしまったが、まぁ問題ないだろう。額を押さえながら地面にうずくまる二人。苦悶の表情を見つめながら俺のことを睨みつけた。



「サンのバカ!!アホ!!このサディスト!!」

「おいおい、酷い言い草だな。俺はお前らが酷いことをするから仕返ししてやっただけだぜ?恨むんなら過去の自分を恨むんだな」

「うぅーー!!くそーー!!!まだおでこが痛い!!いっつもサンに仕返しされる!!くやしいーーーー!!!」



そう言って全身を使って地団駄を踏む。そんな様子を見て俺は子どもだなと、鼻で笑った。そしてそれを見てさらに悔しがる二人。



「くそっ!!ダロン、今日のところは悔しいけど退散だ!!」

「だね、ロニー!!今日はアグスティア祭だから逃がしてやるんだぞ!!次こそは絶対に打ち負かしてやるんだからな!!」



そう言って額を押さえながら逃げるように走っていく。俺たちはそんな二人を微笑ましそうに見つめながら見送った。



「元気だなあいつら」

「今日の試合絶対見てきてよねーーーー!!!」



騒がしい悪ガキ坊主らが去った後、俺たちはコロシアムへと向かった。もともと黒の教会からコロシアムまではそれほど遠くなく、五分ほど歩いているとすぐにコロシアムに着いた。そこでは大会に向けて最終チェックが行われており、多くの人が準備に追われていた。チラホラと参加者も集まってきており、皆意気揚々と戦いに向け準備を始めている。その中には強そうな奴もおり、これから戦えることに興奮を覚える。



「よし、それじゃあ俺たちも準備するか!」

「おっけー!」



俺とツィリカは大会に向け愛用の武器を手に取り、目の前に戦う相手がいると妄想し練習に励む。ツィリカは俺のお腹を刺していたナイフ、俺は片手剣で大会に挑む。



俺たちが住んでいる町、ルーバは辺境に位置し他国との一次防衛戦を任され、また森の主である赤竜を筆頭とした強い魔物がよく出現する森があるためか、町民一人一人が他の地域と比べても強い戦闘能力を持っていることが多い。約五年に一度国全体で発生する〈魔物の大量発生〉では町の皆が一丸となって戦い抜き、絶対に町を壊させない。五年前に発生した大量発生では救援に駆けつけた騎士団が到着する前に魔物の鎮圧化に成功し、騎士団員の方々を驚かせたのが記憶に新しい。まぁ、辺境であったために救援に来るのが遅れたというのも理由の一つではあるだろうが。ここでは小さな子どもからご老人まで意気揚々と武器を手に取り、魔物を殺してまわる。どれだけ重症を負いながらも、ニンマリと笑顔を浮かべながら殺していくその様は、傍から見れば狂気に満ちているらしい。その光景はお偉いさんであるお貴族連中から見ると『野蛮』なんだとか。地面はもちろん、家の壁や憩いの場である噴水までもが血で赤く染まり、町全体が五年に一度紅に染まる光景はこの町の風物詩といっていいだろう。



そんな地域で開催される大会だ。誰もが皆、血気盛んな残虐性ある大会を見てみたいだろう。今回は参加人数こそ少ないが、その誰もが強敵揃いだ。優勝候補だなんだと言われているが何が起きるか未来なんて決して分からない。少しの油断が勝敗を決する。そのためにも、今は体を動かすことによって体を温め、集中力も高めていく。



「それじゃあ、僕はそろそろ観覧席にいくとするよ」



気がつくと数十分は経過していたようだ。俺たち二人のウォーミングアップを静かに座って見ていたミドがそう言ってきた。俺とツィリカの練習を見守るミドがいつも通りすぎてすっかり忘れていた。



「あっ、悪ぃ。全然ミドのこと気にしてやれなかった」

「ミド、ごめんねー!」

「ううん、全然大丈夫。二人の戦っている姿は洗練されていてとても美しいし、何より見応えがあるからね。いつも見ているけどやっぱり見飽きないよ」

「そういってくれたら嬉しいが」

「ふふ、それじゃあ二人とももうすぐ大会が始まるよ。そろそろ集合場所に行かなきゃ」

「ほんとだ!早く行こ、サン!」

「ああ。ミド!!ちゃんと見とけよ!!」

「絶対みててよねーー!!」



ミドに言われ時計を確認したツィリカが俺の手を引っ張り集合場所へと駆け足で向かっていく。それに引っ張られるがまま足を動かすが、顔だけを後ろへと向けミドに言葉を投げかける。少しずつ遠ざかっていく距離がなんともいえないが手を振ったミドが視界に入り、俺は決意を胸に顔を前へと向け会場へと足を進めたのであった。






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