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シトミトゼ  作者: 暁針
プロローグ「アグスティア祭」
16/29

15.終





『・・・・・・実はのぉ、お主らに与えてきた《神の祝福》を打ち切ろうかと思ってのぉ〜〜』








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」



いまこいつはなにをいった??かみのしゅくふくをうちきる??いみがわからない。じょうだんをいっているのか??



「いや〜〜、のぉ??ワシはふと思ったのじゃ!!なんでワシは人間にこの力を分け与えていたんじゃろうって!!そりゃあ何千年前の人間はいとも簡単に壊れ、絶滅の危機に瀕する最弱種族であった。しかし信仰心は篤くてのぉ〜〜。ワシ、こんなにも信仰してくれるならお礼に何かあげちゃおう!となってしまったんじゃ。でも今のお主らは他の種族を打ち負かし、生態系のトップに君臨しておる。お主ら人間が滅ぼした種族も長い歴史を見る中でどれほど存在するだろう。そしてこれからもお主らは強者に立ち続ける。・・・・・・そんなの、ダメだと思わぬか??」



「失礼ですが、スティア様!!!あなたは神と人間が取り決めた約束を自ら破棄するとお考えなのですか!?!?突然そのようなことが実行されれば世界中で混乱が生じます!!いえ、混乱で済めば良いでしょう!!確実に血で血を争い、不幸せな未来が生まれます!!・・・・・・どうか、どうか!お考え直しを!!」



その通りです!!スティア様!!どうかお考え直しを!!そのようなこと誰も望んでおりません!!スティア様!!これからは慎ましく暮らして参ります!!ですから、ですから!!



その場にいた全員がスティア神に考えを改めるように必死に訴える。《神の祝福》を打ち切る??そのようなことがもし実現してしまえば俺たちはどうなってしまうんだ!?当たり前だったものが突如崩壊する。そんなもの許されるわけない!!



『もう決めたことじゃ!!この決定は覆らぬぞ!!お主らは強欲に生きすぎた。これからは《神の祝福》なしで生きるが良い!!・・・・・・なぁ〜に!!大丈夫じゃ!!何千年前の人間たちは弱きながらも必死に知恵を絞り耐え忍んでいたぞぉ!お主らにもそれはできるはずじゃ!!ワシはそれを応援しているぞぉ〜〜!!



・・・・・・・・・それとも、なんじゃ??お主らはワシの意見に逆らうというのか??』



圧倒的なオーラを放たれる。一瞬にして地面に押しつぶされた。いや、地面ごとへこんでいる。怒りをあらわにし空中へと浮いたスティア神は俺たちを上から見下ろした。人間のことなどどうとでもできるそんな目線であった。誰一人立ち上がることが出来ず、視界が砂で埋まる。骨がキシキシとなり、これ以上重力をかけられると意識がなくなってしまう。今まではそれでも良かったが、この神の言ったことが正しいとなると本当にまずい。俺は瞳だけを極限まで上に動かし、スティア神を睨み続ける。この神の行動を許してはならない!!



『なんじゃ?その目線は??ワシに歯向かうというのか??今までの感謝は何処へいった?・・・・・・いや、人間というものはそういうものであったな。ふむ、やはり難しいのぉ〜〜』



最初は怒りを滲ませさらに圧を掛けようとしてきたが、その後勝手に納得し何度も頷いている。ホッとするとともに、それすらも上位存在であることを証明しているようでなんだか悔しかった。



『して、お主、名は?』



睨まれていることに気がついたのか、それともただの気まぐれか、スティア神が俺に話しかけてきた。しかし重圧で話すことが出来ない。頭の中では色々な罵詈雑言が浮かんでいるのだが、声を出すことが出来ない。



『おぉ〜〜、悪かったのぉ〜〜!!それじゃあ話せんではないか』



ほいっ!と声をあげ、重力を解除するスティア神。ここら一帯の重圧が消えた。急に外れたことによって、今まで抗っていた力が行方不明になり、俺は数センチばかりか宙を浮き、腹に強い衝撃が加わった。他の者も突然落ちた衝撃で呻き声をあげる。



『それで、お主、名は?』



落ち着きを取り戻したあともう一度同じことを聞いてくる。俺は脳内で考えている罵詈雑言を必死に押し隠し、名を名乗った。機嫌が良くなれば先程言った言葉を訂正し、《神の祝福》を今まで通り与えてくれるかもしれないからだ。しかし不服なことに変わりはない。いつもとかなり違う雰囲気で話していく。



「・・・・・・サン・アイヴズ」

『そうか、で、横たわっているそのおなごの名は??』



機嫌が悪いことを隠していない俺に対してスティア神は何も気にせず話を続ける。



「ツィリカ。ツィリカ・インサーナー」

『ふむ、お主たちは状況を見るに、決勝戦で戦ったようじゃな。お主らの固く結ばれた絆がとても良く見えておるぞ。ほう、良いではないか、良いではないか!!』



手を叩き俺らに賞賛を送るスティア神。その表情はなんだか興奮しているようだった。



『して、ツィリカは負けたようじゃな。首が取れておるのぉ。ずっと首が離れ離れでなんとも可哀想じゃ!!』



・・・・・・こいつっ!!!ふざけているのか!?!?お前がこんな状況にしたんだろうが!!!可哀想だと思うなら早く《神の祝福》を元に戻せ!!話はそっからだ!!・・・・・・しかし俺は頑張って耐える。ツィリカが生き返るためだ。そのためならどんな屈辱も飲み込んでやろう。隣にいるツィリカの手を掴み、決意する。



「つっっ!!!・・・・・・一つスティア神に願いがある」

『ほう?なんじゃ??』

「《神の祝福》を打ち切るといったその言葉、訂正して欲しい」

『・・・・・・ほう、お主。先程ワシが行ったことを忘れた訳ではあるまいな〜〜?』

「あぁ」

『今度は一瞬でお前をぺちゃんこにしてやってもよいのだぞ??』

「覚悟の上だ。・・・・・・もう一度言う、《神の祝福》を元に戻して欲しい」

『ふむ、その心意気は素晴らしい。ワシの意見に歯向かうものなぞ、あまりおらぬからなぁ〜〜。・・・・・・・・・・・・しかし答えは否じゃ』



「なぜだ!?!?」

『お主も分かっておろう〜〜?このような場合にもし例外を作ってしまえば、我も!我も!と要求してくるではないか。ワシ、それはめんどくさくてやりたくないのぉ〜〜』



「じゃあ《神の祝福》を打ち切らないでくれれば!!!」

『それもダメじゃ。ワシは一度決めたことは必ず守るたちでのぉ〜〜。お主らに言ってしまったことは覆さんぞぉ』



「じゃあ!!じゃあ!!なんで今日なんだ!!アグスティア祭では必ず首を胴体から離さないといけない!!もし、昨日や明日であればこのようなことは起きなかった!!それか時間帯でも変えていれば!!ツィリカは生きていた!!!」



『・・・・・・まずワシが言いたいのは、アグスティア祭というのはお主たちが勝手に始めたこと。首を胴体から離せば勝ちというのもお主たちが勝手に考えたことじゃ。まぁ、ワシたちも途中からはかなり楽しんでおったからそれについてはどうでもいい。そして、なぜアグスティア祭の決勝戦の直後であったのか・・・・・・か。



まずそれには二つの理由があってのぉ。一つ目はアグスティア祭という、皆がワシに感謝を示すお祭りであるからじゃ!普段も信心深いお主らであったが今日はさらにそれが強まる日!!こうやって地上に降りてくるのも力がいるんじゃが、今日はいつもよりも楽であった。それにワシ、皆が笑顔だと嬉しいからのぉ!!アグスティア祭なんてピッタリな日なんじゃろうか!!・・・・・・まぁこんなところで一つ目の理由はワシの個人的なものじゃな。



そして二つ目の理由じゃがそれはな・・・・・・・・




その方が面白いと思ったからじゃ!!決勝戦というのはこれまで見てきていてもかなり白熱したロマンのある試合が多かった!絆が生まれ、王都へと二人で旅立っていく!!そしてその光景にワシは勝手ながら拍手を送ってきたのじゃ!しかし今回この一件をやる上でワシはいつがいいのかと真剣に悩んだのじゃ!!何年も何十年もな!!そしてワシは閃いた!!決勝戦のうちの一人が惜しくも命を落とし、片割れが涙を流す姿を!!そしてワシに怒りをぶつけ、激昂する姿を!!そして、ワシに屈辱感を覚えながらも勝つことが出来ず命を落とす姿を!!その光景を考えてワシは身震いしたのじゃ!!なんて甘美なんじゃろうか!!なんて楽しそうな遊びなんじゃろうか!!ってな!!』



はぁっ、はぁっと顔を紅潮させ、興奮したスティア神。両腕で自らの身体をぎゅっと抱きしめ、肩を震わせる。涎を垂らしそれを拭きもせず、顎から地面へと滴り落ちる。その光景を俺たちは黙って見ていた。



・・・・・・こいつ、狂ってやがる。俺たちのことをただの玩具としか思っていない。何が甘美だ。何が楽しそうな遊びだ。気持ち悪すぎて反吐が出る。



この場にいる全員が共通していた。こいつを殺すと。独りよがりなスピーチを披露され、俺たちがただ黙って従うとでも?ふざけるな!人間が新しい秩序を創る!!神のいない世界で俺たちが頂点に立つ!!



「お前を・・・・・・殺すっ!!!!!」



一斉にスティア神へと飛びかかる。武器を投げつける者や魔法を使う者、身一つで飛びかかる者。あらゆる手段で攻撃を図る。しかし、渾身の攻撃が全て弾き飛ばされる。スティア神の身体を覆うように防護膜が張り巡らされているようだ。



「くそが!!攻撃が通らねぇ!!おい!魔法は、魔法はどうなんだ!!」

「魔法も全て防がれる!!一体どうなってるの!?!?」

「バニガスレプゴダー!!なにか有効な攻撃手段はないのですか!!」

「・・・・・・私、は、神に・・・・・・抗う、など・・・・・・」

「おい!!さっきこいつが何を言ったのか、理解してんのか!!!」

「・・・・・・神、なぜ・・・・・・わた、しは・・・・・・」

「っっっくそ!!!何もしねぇっつーんなら端っこで蹲っとけ!!おい、ダリス!!なんでもいい!!なにか有効なもんはあるか!!」

「効くかは分かんねぇがやってみる価値はある!!お前ら!手伝ってくれ!!」

「「「「「「おう!!!」」」」」」



一斉にダリスおじさんのもとへと駆け寄っていく。手と手を繋ぎ合わせ中心にいるダリスおじさんに魔力を分け与える。その中心でダリスおじさんは地面に手を置きながら呪文を唱えていた。タイフーン時の魔力使用、そして先程のスティア神との戦闘。仕舞いには今行われている超高度魔法で沢山の魔力を行使し、ダリスおじさんには疲労が目に見えて溜まっていた。それでも必死に呪文を唱え続け、ついに魔法が完成する。その様子を面白そうに眺めるスティア神は、俺たちを侮っていることが丸わかりであった。くそっ!!目にもの見せてやる!!



全員で力を合わせた高火力な魔法がスティア神に放たれる。人間なら触れただけで消滅してしまいそうな威力の魔法であった。真っ黒に覆われた深い霧が一気にその姿を隠し、見えなくなる。



「はあっ、はあっ、やったか?」



乱れた呼吸でそう呟く。しかし、一斉に霧は晴れ、調子のいい笑顔をうかべ無傷なヤツが再び現れた。どうしてっ!?あれだけの魔法をっ!?!?



「ッチ!!!!!」



舌打ちがこぼれた。俺たちはさらに魔力を送ろうとダリスおじさんの方へと向く。再び呪文を唱えようとダリスおじさんが口を開くが、突然声が途絶えた。喉を抑え苦しそうにもがいていた。さすがに魔力を使いすぎている。



『突然、何をしてくれるのじゃ〜!?ワシはお主らと争いたくないのじゃぞ?』

「そんなの、お前が《神の祝福》を切った時に終わった!!このまま逃がすわけにはいかねぇ!!ギッタンギッタンのグッチョングッチョンにして殺してやる!!」

『おうおう、怖い怖い。・・・・・・やはり、ワシの面白いは人間とは違うのじゃな。なら、仕方ない』



そう悲しそうに呟くと、腕を軽く横に振った。その瞬間、スティア神に近かった円の半分の人が血を流し倒れた。いや、首が斬られている。何十人もの首が吹き飛び、宙を舞っていた。ただそこにいただけの人が死んでいた。



「ああ、ああっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」



悲鳴がそこかしこで聞こえる。首が飛んだ分の大量の血飛沫が俺たちの身体を染め上げていた。地獄であった。聖書に書かれてあった地獄とはこのことなのかと思わせられた、そんな光景であった。中には首が斬られたことに気づかず歩く死体もいた。しかし、その死体も時間が経つと生命力が途絶え、音を立てて倒れ込む。ある人の友人が、恋人が、家族が一瞬にして命の灯火を消されてしまった。



『おおう!!上手くいったようじゃな!!ちょうど半分綺麗にいけたぞぉ!!・・・・・・んぅ?真ん中にいたやつ、ちょうど首が半分斬られておるのぉ。それは可哀想じゃ!!ほれ、もう一度・・・・・・』

「ダリスおじさん!!!!」




ダリスおじさんの前へと庇い、ツィリカのナイフを使って攻撃を防ぐ。しかし鋭く重い一撃が全身にまとわりつき、俺はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。そしてその背後にいたダリスおじさんに衝突し一緒に倒れ込む。



「ダリスおじさん!!!」



急いでダリスおじさんの体から降り容態を確認する。しかし呼吸もしておらず、脈も動いていない。生きているのか、死んでいるのかすら分からない状況であった。ただ可能性はある。そんな希望だけを頼りに、俺は切れかかった首を必死に繋ぎ止め、血を止めようと試みる。



『止められてしまったか。ならもう一度・・・・・・』

『!!!!!スティア(怒&怒)!!!!!!』



黒い雷がスティア神に直撃した。目も開けていられないほどの光が辺りを支配する。初めて聞く声が頭の中で反響し、大声で叫ばれ眉をしかめた。こんな時に誰だ!!誰がこの戦いを邪魔しようとしている!?こいつの仲間なら許さねぇぞ!!



『いたっ!!!ぬっ!その声は、アグ!!!!』

『何をやっているの(怒&怒)!!!今すぐに戻ってきなさい(怒&憂)!!!精神体をこんなにも作って(怒&疑)!!!何をしたのか本当に分かっているの(怒&怒)!?』

『いや、違うんじゃ!!ワシは何もしておらぬぞ!』

『嘘おっしゃい(怒&怒)!!!ならこの死んでいるものたちは誰がやったというのですか(怒&怒)!!!あなたの気まぐれでこのような大惨事(怒&悲)!!!恥を知りなさい恥を(怒&怒)!!!』

『そなに言わなくとも良いではないか〜〜!!ワシ、お主のことを思ってのぉ〜〜!!』

『なーにが私のことを思ってですか(怒&怒)!!!いい加減あなたの我儘にもうんざりです(怒&辛)!!!早く帰りますよ(怒&怒)!!!』



謎の力でウーゴレプゴダーの脳天から白いモヤが現れ始める。その白いモヤは元の場所へと帰ろうと必死になって足掻くが、いとも容易く抜けきってしまった。完全に分離したそれは少しずつ形となり人間の形へと変化し始める。そして美しい少女へと変貌したそれはさらに天界へと吸い寄せられてしまう。



『あぁ〜〜〜〜〜!!!嫌じゃ〜〜〜〜嫌じゃ〜〜〜〜〜!!!』



バタバタと暴れるがなんの意味も示さない。そしてそのまま引っ張られているかのように空高く浮遊し、あともう少しで天界へと完全に引き込まれていきそうだ。



・・・・・・ここで逃げさせてたまるか!!!このままこいつを逃してしまえば殺す機会がなくなる!!勝手なことをして、そのままお役目御免だと!?そんなの許される訳がねえ!!!!



「逃げてんじゃねぇーーーーー!!!!」



空高く舞ったそいつに大声で叫ぶ。そして届きやしないと分かっていても剣を投げつける。もう必死であった。しかし少しの間空中にいた剣も、少し経てば音を立てて地面へと落下した。



なにか、なにかこいつを留める方法を!!なにかないのか!?!?



俺は無意識に言葉を紡いだ。こいつが傷つくようなことを!!不快に思うようなことを!!なんだ!!なんでもいい!!必死につなげ!!



「・・・・・・俺はお前を絶対に殺してやる!!!!足の腱を切って、喉を詰めて、心臓を抉りとって、身体の中に毒虫を入れて、少しずつ毒に侵されていくがいい!!焼いて締めてお前が泣き叫んでも絶対に止めやしない!!尊厳が尽きるまで身体的にも精神的にも追い詰めてやる!!・・・・・・・・・そうだ!!お前の大事な物、場所、人!!それも全て壊してやる!!お前のせいで関係ねぇヤツが酷い目にあう!!だがそんなの俺が知ったこっちゃねぇ!!!許しを乞うても知らねぇ!!!存在が消滅するまで俺はお前を追いかけ続ける!!首を洗って待っとけ!!!!」



ヤツの身体が固まった気がした。そしてゆっくりとこちらを振り返る。ムカついたようで、吸い込まれている身体を無理やり抗い、最後の力を振り絞って言葉を投げかける。



『お主・・・・・・お主・・・・・・ワシに向かって殺害予告じゃとな??それにワシの大事なものを壊してやる、じゃと??絶対に許さぬ!!!穏便なワシでも怒るときは怒るのじゃぞ!!・・・・・・気が変わった!!このまま帰ってやろうと思っておったが、お主など魔物に喰われて無惨な姿になるが良い!!それにお主ら人間など、弱体化してしまえ!!お主の方が先に泣いて後悔しても知らぬからなぁ!!!・・・・・・ワシは悪くない!!悪くないのじゃあ!!!!』



そんな捨て台詞をはいて、ヤツは完全に消え去った。今まで起こった超常現象が嘘のようになりを潜め静かになる。



俺は膝から崩れ落ちた。そしてただ天だけを見つめる。



「ツィ・・・・・・・リカ」



その言葉とともに俺は涙が溢れ、地面に拳を叩きつける。涙で何も見えず、しゃくり声をあげるしかなかった。



「ツィリカ、ツィリカ・・・・・・!!!」



あれだけ啖呵をきりながら何も得ることはなく、逆に多くのものを失った。自分の無能さが腹立たしかった。輝かしい未来を歩むはずであった。百歳になるまで笑い合い、時には喧嘩し、一緒に人生を歩むはずであった。それが一瞬にして壊れた。何もかもが無くなった。



「ツィリカ、ツィリカ、ツィリカ・・・・・・」



ツィリカは「死」んだのか?俺が首を斬ったから・・・・・・?俺がツィリカを殺したのか??



もし俺がツィリカの首を斬らなければツィリカは生きていたのかもしれない。もし俺がツィリカに負けていたらツィリカの首を斬ることはなかったかもしれない。もし俺が決勝戦まで勝ち進めていなければ、ツィリカは生きていたかもしれない。もし俺がアグスティア祭なんて出なければツィリカは生きていたかもしれない。



もし、俺がツィリカと出会わなければ、こんな・・・・・・、こんなことには、ならなかったかもしれない!!!



「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛!!!!!」



「死」ぬっていうのはもっと祝福される物のはずだ!!百歳になって、みんなに見守られながら、きっとアグスティア様のいる天界に行けるよ、なんて言って!!それで、それで、安らかに眠っていく!!それが、「死」というものではないのか!?!?



どうしてツィリカがこんな目に合わないといけなかったんだ!?!?何も悪いことはしていない、ただ、アグスティア祭に出て、強かったが故に決勝戦まで勝ち続けて!!ただ俺と戦っただけ・・・・・・!!



強かったことが悪かったというのか!?早々に負けていればこんなことにはならなかったって!?・・・・・・夢を見ることの何が悪い!?王都の騎士団に入ること。そのためにアグスティア祭で準優勝以上とる!!ただ、それだけのこと!!なのに・・・・・・なんで!?!?



誰のせいだ?あいつか?それとも過去に調子に乗りすぎた人間どもか?それとも・・・・・・・・・・・・・俺か?



「ははっ」



乾いた笑い声が口から漏れ出た。立ち上がりツィリカの首がある所まで歩いていき、首を優しく包み込む。



「ごめん、ツィリカ。ごめん」



髪を優しく撫でる。涙がツィリカの頬にぽたりと落ちた。



「ごめん・・・・・・ごめん・・・・・・」



ツィリカの瞼をそっと閉じる。こんな辛い現世をいつまでも見ていてほしくない。



「俺もすぐ、そっちに逝くよ」



ツィリカの頭を首の切断面の近くに優しく置いた。ナイフを首へと持っていく。怖さは感じなかった。ただこのナイフを力を込めて振り抜くだけ。こんな世界になんの価値も見いだせない。あるのは絶望と虚無感、ただそれだけであった。



ナイフの刃が首の皮膚に当たり赤い雫がぽたりと垂れていく。そしてそのまま力を込めていく。



ミド・・・・・・。大人になったら一緒に酒でも飲んでみたかった。なかなか全員で会うことは難しかっただろうけど、お前とエレアが俺とツィリカを介抱する様子が目に浮かぶよ。それに小さい頃行ったあの秘密基地。あそこでいっぱい話したり遊んだり、沢山笑いあったな。あの時間は本当に俺の宝物だ。もう二人で行くことは出来ないけど、俺のことは気にしないでくれ。



エレア・・・・・・。初めて会った時はあんな態度とってごめん。でも助けてくれて本当に嬉しかった。王都の騎士団に入ってエレアに追いつくという夢、あれだけ強く言っていたのに果たせそうにねぇや。約束破っちまった。ごめん。でもエレアは強いからいずれ騎士団のトップに君臨できると思う。俺はそれを心から応援してる。



ツィリカ・・・・・・・・・・・・、今までありがとう。









・・・・・・ごめん。



ナイフを握る手が無意識に強くなる。俺は瞳を閉じた。



さらに刃が皮膚の奥へと侵入していく。血が込み上げてきた。もう迷うことはない。




・・・・・・・・・・・つっ!!!!

あぁ、もうこれで終わりか・・・・・・。



みんな、ごめん。







ナイフを振るう。




ヒュッ!!!!








━━━━━━━━━━━━━ツーーーゴトッ












これでプロローグ終了です。

ストックがもうすぐ切れるため更新頻度が落ちます。

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