12.ツィリカ
ほんわか過去編です
「行゛っ゛ち゛ゃ゛や゛だ゛ぁ゛ぁ゛ー゛ー゛ー゛!!!」
ツィリカが大号泣で、ある男の腕を引っ張り動けないようにしている。涙が頬を伝い、嫌だ嫌だと首を振り続け、ポニーテールの髪が首の動きに連動し揺れ動く。腕を引っ張られた男は困ったように俺たちに視線を送っていた。
「ツィリカ、ごめんね?もう行かないと、馬車が発車してしまうよ」
「そうだぞ!ツィリカ!!俺たち笑顔で見送るって決めただろ!!」
「い゛や゛だ゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛!!!!!」
もう、ギャン泣きである。途方に暮れた俺、ミド、エレア、そして腕を引っ張られているイグナーロはツィリカの機嫌をどうにか取ろうと必死になって声をかける。
「ツィリカ、イグナーロさんとはこれが一生の別れではないよ。長期休暇の時は帰ってくるって言ってたでしょ?そうですよね、イグナーロさん」
「うん、そうだよ。長期休暇の時だけとは言わず暇さえあればこっちに帰ってくるし、手紙もいっぱい出すよ」
「だ゛め゛ー゛ー゛ー゛ー゛!!!グ゛ー゛ち゛ゃ゛ん゛!!い゛か゛な゛い゛で゛ー゛ー゛ー゛!!!」
「ツィリカ、イグナーロは魔導師協会に選ばれた逸材だ。それをお前のせいでみすみす逃してしまったとなれば後で後悔することになる。それでもいいのか?」
「でも゛、でも゛ーーー!!!」
「笑顔で送ってやれ!!そのほうがイグナーロも安心して王都に行ける!!それにあと五年もすればアグスティア祭の大会に参加できるんだ!!そこで優勝して俺と一緒に王都に行けこうぜ!!」
「・・・・・・・・・・・・う゛、ん゛」
ツィリカの背中を強く叩く。ツィリカは決意したようにイグナーロの腕をゆっくりと離し、ポロポロとこぼれる涙を腕で強く拭いた。そんな様子にイグナーロは名残惜しいと言わんばかりにツィリカに最後の抱擁をかわし、後ろ髪を引かれる思いで馬車へと乗り込む。馬車の窓からこちらへと手を振るイグナーロに俺達も精一杯手を振り、別れを惜しんだ。御者が鞭を操り、馬車を発車させる。段々と遠くなっていくこの距離に、車輪が土を踏む音も聞こえなくなってくる。そして姿は見えなくなっていった。
「行ってしまったね」
「あぁ、そうだな」
「ふふっ、まぁここで別れではないだろう?きっとすぐに会えるさ」
「だな!そうと決まれば特訓だ!!次会ったときにイグナーロがびっくりするぐらい強くなってやろうぜ!!・・・・・・よし、ツィリカ!森まで行くぞ!!」
ツィリカの手を引っ張り森の方向へと足を運ぶ。俯きがちで足が絡まりそうであったが自然と歩幅が揃っていき、スピードも速くなっていく。後ろにはエレアとミドもこちらを着いてくるように足音を鳴らしていた。
いつもの特訓場所へと辿り着く。森の入口に位置するその場所は拓けているため、木々が太陽を拒んでおらず光り輝いていた。俺は身体を伸ばしたあと剣を抜く。手入れを施しているため、美しい剣身を覗かせる。
「サン、先に私たちがやろうか。ミド、審判を頼む。ツィリカは、・・・・・・サンを応援せず私を応援してくれ」
エレアも準備が整ったのか、俺の元へと近寄りそう豪語した。なに適当なことを抜かしやがる。
「いいや、ツィリカ。それはダメだぜ?エレアを応援せず俺を応援してくれ。・・・・・・そうだ!!俺を応援してくれたらお前が欲しいって言ってたクシを買ってやるから!!っな?」
「ほう、もので釣ると言うのか。いい度胸ではないか、サン。では私はツィリカが好きなお菓子を買ってやろう。普段は一つだけと決めているが・・・・・・そうだな。今日は特別に三つというのはどうだ??」
「くっ!!卑怯だぞ、エレア!!ツィリカ!!どっちを選ぶ!?俺か!エレアか!!」
俺とエレアがツィリカに詰め寄る。
「・・・・・・っはは!!ちょっと二人とも変なことでケンカしないでよーー!!笑っちゃったじゃん!!」
ツィリカが笑った。先程までの悲しい顔から笑顔が戻り、俺たちは安堵の表情で顔を見合せる。
「それじゃあツィリカ、特等席で試合を見ようか。あれだけの啖呵を決めたんだ。さぞ素晴らしい試合を見せてくれるんだろうねー」
「出た!!たまにあるミドの悪い顔だ!!」
「ふふっ、なんのことだろう??さぁ、早く試合を始めようか。それじゃあ、位置についてーー」
・・・・・・・・・・・・
「サーーン!!!クシを買ってくれる約束したよね?エレアはお菓子を三つも買ってくれたよーー!!」
「ちっ!うるせえって!!お前、さっきの態度はどうした!!それに俺が落ち込んでるのが目に入らんのか!!」
「ええっ〜!!だっていつものことじゃない!サンがエレアに負けるなんて」
「いつものことじゃない!!今日'は'負けたんだ!!明日は絶対勝ってやるんだからな!!」
特訓が終わり、とぼとぼと歩いている俺をツィリカがからかってくる。いつもの屋台でエレアにお菓子を買ってもらい、喜色満面のようだ。手にお菓子を持ち、嬉しそうに歩いている。
はぁーー、くそが・・・・・・。
「ツィリカ、そんなにはしゃいでいたら転んでしまうよ。気をつけてね」
「うん、大丈夫ーー!!」
「サンもほら、僕のお菓子をあげるから機嫌をなおして?」
「・・・・・・ッチ」
手渡されたお菓子をしばらく眺めたあと口へと持っていく。甘みが口いっぱいに広がり、少しばかりか口元がほころんだ。しかしその雰囲気を見てエレアが喜色を隠せないような声色で信じられないことを口ずさんだ。
「本当に仲がいいな、お前たちは。私も嬉しいよ」
「これのどこが仲良さそうに見えるんだ!!」
「そうだよ!!エレア!!どう見ても仲良くないでしょ!!」
反射的に叫ぶ。それはツィリカも同じだったようで、前にいる俺とツィリカが、後ろにいるエレアとミドの方へと振り返り言葉を返す。
「「そういう所だよ」」
しかし同じタイミングで、同じようなことを言ったためか信じてもらえず微笑まれてしまった。なんだか恥ずかしくて振り返っていた顔を元に戻す。後ろでクスクスと笑われているそんな状況に俺たち二人は歩みを早め、早く目的地に着くようにと祈った。
「おい、ツィリカ。さっさとクシを決めて今日はすぐ解散するぞ。俺はこの空気に耐えられない」
「だね。あの二人の微笑ましそうな顔、見た?私たちがなにかする度に笑顔でこっちを向いてくるんだよ。他の二人とだったら別にいいんだけど、サンとなんて絶対に耐えられない」
「おい!!だからそういうのだって!!今日はやめとけ、被害が増えるだけだ!!」
小声で作戦を立てていく。顔を寄せ、できるだけ後ろの二人に気づかれないようにツィリカと意思を擦り合わせていく。しかしそんな様子に後ろの二人が微笑ましそうに見つめていることを俺たちは知る由もなかった。
「あっ!!」
しばらく歩いたあと、ツィリカがその言葉とともに走り出す。目的の店が見えたようだ。少し街から外れたその店は遠目から見てもユニークな形で、色とりどりのランプで彩られ、不思議な植物のツタが張り巡らされている。こっちこっち!と満面の笑みでこちらを待つツィリカは俺たちが歩くスピードが遅いことに不満を抱いたのか、手を引っ張り店の中へと歩みを進めていく。
カランカランとドアに付いていた鈴を耳にしながら店の中へと入ると、個人が経営しているのかこじんまりとしたお店であった。壁一面には古びた地図やタペストリー、絵画などが隙間なく飾られ、地面はといえば歩く隙間もないほど物が混雑しており、情報量が多い。品揃えが豊富といえば聞こえがいいが、乱雑と置かれホコリをかぶった商品がそれを台無しにしている。
ここが変人と言われるアル婆のお店か・・・・・・。ツィリカはなんでこのお店を選んだんだ?
ぐるっと目線を一周させる。
「ごめんくださーーい!!アル婆いますかーーー??」
ツィリカが店内に響き渡る大声で店主のアル婆を呼んだ。しかし応答は無い。留守にしているのだろうか?
「アル婆ーいないのーーー??アールー婆ーぁー!!」
もう一度大きく叫ぶ。しかし返答は無い。
「留守にしているんじゃないかな?」
「だな。でも店が空いてるのはおかしくないか?」
「確かにそうだね。・・・・・・うーーん。ツィリカ、今日はもう出直そう。明日にはきっと店主がいるはずだよ」
そう言って俺たち三人は踵を返しドアへと向かう。しかしツィリカは諦めきれなかったようでその場所へと留まり、ふくれっ面でアル婆を呼んだ。
「アーールーー婆ーーーぁーーーーーーーーー!!!」
「うるさいぞ!!小童!!」
「うわっ!!」
奥の方から怒鳴り声が聞こえた。ガタガタと物がぶつかる音や、何かが落ちる音が聞こえ、隙間から老婆が顔を覗かせる。居ないと思っていた人物が突然現れ俺たちは驚愕する。
「なんの用じゃ、全く!!今忙しいというのが分からんのか!!」
「ごめんなさい、聞こえてないのかと思ったの・・・・・・」
「なんじゃ!!ワシの耳が腐っとると言いたいのか!!そこまで落ちぶれてはおらんわい!!お前の耳も魔法でぶち取ってやろうか!!」
明らかに落ち込んだツィリカは反省の色を百パーセント出し、許しを乞う。しかしそれでも怒り心頭に発するアル婆であったため、ミドとエレアがツィリカを庇うように背中へと隠し謝罪を行う。
「すみません。二度とこのようなことがないように気をつけますので」
「どうか、許してもらえないだろうか?」
ミドとエレアが頭を下げ、俺も慌てて頭を下げる。そんな様子にあーだこーだと文句を言い続けていたが、それにも飽きてきたのかつまらんと言いたげな表情で鼻を鳴らし、しばらく経ったあと顎で用件はなんなのかと尋ねてくる。
「えっと・・・・・・クシが欲しくて」
ツィリカがアル婆がいる場所まで恐る恐る近づき要件を言う。しかしそれもアル婆の琴線に触れたようだ。
「クシじゃと??小童!!そんなことでワシの時間を無駄にしたというのか!!」
やばい、また怒らせてしまった。
雷が目の前を走る。そして同じタイミングで突然店の中の物がガタガタと揺れ出し、激しい音を立てる。俺たちはバランスをとるのに精一杯で何もすることが出来ない。
「うわわっ!!」
「っこれは!!!」
近くの家具に近づき、転けないよう精一杯踏ん張る。くそっ!!噂に違わぬやべぇババアじゃねぇか!!こんなところに来るんじゃなかった!!
「おい!!今すぐこの揺れを止めろ!!」
俺はこの状況を打破するべく、ツィリカよりもさらにアル婆へと近づき怒鳴りつける。
「ちょっとサン!?今は謝罪をしないと!!そんな火に油を注ぐ真似してどうするのさ!!」
後ろのミドが止めるようにと忠告してくるが、そんなのは関係がなかった。ただ買い物に来ただけなのにこんな仕打ちはおかしいだろ!!
「おい、ババア!!聞こえなかったのか!!この揺れを止めろっつってんだ!!」
「なんじゃと!?お主もワシをバカにしておるのか!?!?巫山戯るのも大概にせぇ!!お前らの首を斬って動けなくさせてもいいのじゃぞ!!」
「あ???やれるもんならやってみろよ!!そうなかったらお前はレプゴダーに捕まってお縄行きだな!!」
もう収拾がつかない。そう判断したのだろう。エレアが俺とアル婆の間へと入り、強制的に遠ざけられる。
「いい加減にしろ、サン。こんなことをしてもなんの解決にもならない」
「っでも!!」
「私に任せて」
そう俺の耳元で小さく呟くとアル婆の元へと向き直り頭を下げた。アル婆はもう戦闘態勢に入っているようで、近くにあった棍棒を手に取り振りかぶる。
危ねぇ!!
エレアの頭へと一直線に振りかぶった棍棒が大きな音を立てて直撃する。アル婆の振りかぶる力が大きかったのか、それともエレアの頭が固かったのか。それは分からないが、粉々に砕け散った木の破片が埃と共に宙を舞う。破片により額に傷ができ、そこから血がふつふつと湧き出ていた。
急いでエレアをアル婆から遠ざけさせ、睨みつける。
ふざけんじゃねぇ!!このくそババア!!ぜってぇに許さねぇ!!
口を開き罵詈雑言の言葉を吐こうと口を開こうとするが、またしてもエレアに止められてしまう。なんで!?どうしてだ!?
「大丈夫。少し待ってて」
エレアはゆっくりとアル婆の元へと近寄り、凛とした瞳でアル婆を見つめた。アル婆はというと口から熱い息を出し、完全に怒り狂っている。今にも飛び出してきそうな雰囲気に一触即発を隠しきれない。
「まず、この度のことは大変申し訳ない。不快な思いをさせたこと、陳謝する」
そう言いながらアル婆が振りかぶった二度目の攻撃をいとも簡単にいなし、棍棒を掴んで攻撃できないようにする。
「くっ!!離せ!!離すんじゃ!!」
「申し訳ない。さすがに危害を加えられてはな。少しこの棍棒は預かっておこう」
そして簡単に棍棒を奪うと、手の届かないところにそっと置いた。まるで子どもをあやすかのようで立場に圧倒的な差を感じる。
「まずは自己紹介をしようか。私の名前はエレアノール。今日はクシを買いに来たツィリカの付き添いでこちらのお店へとやってきたんだ。あなたの名前を聞いてもよろしいか?」
「誰が小童に名前など教えてやるものか!!大概にせぇ!!!・・・・・・いや、待てよ??お主、エレアノールと言ったか?」
「ああ」
「エレアノール・・・・・・エレアノール・・・・・・。っっ!!まさかっ!!」
目を見開きエレアを凝視するアル婆にこちらも訝しそうな目を向ける。エレアと何があったんだ??顔見知りだったのか??えっ?こんな奴と!?
「あぁ、あなたが思い描いているエレアノールで間違いない」
「嘘・・・・・・じゃろ??いや、しかし・・・・・・。そんなこと・・・・・・」
「両親から貴方には沢山助けていただいたと聞き及んでいる。そんな貴方にこのような失礼なことをしてすまない」
「・・・・・・いや、それはもう良い。・・・・・・身体の方はもう大丈夫なのか?」
「あぁ、貴方のおかげでな」
「そうか、それは良かった。・・・・・・元気に暮らすんじゃぞ」
「あぁ、ありがとう」
今までの殺気が嘘であったかのように大人しくなり俺達も動揺を隠せない。一体この二人はどんな関係なんだ!?
エレアがこちらを見て優しく微笑んでくる。言った通りだろう?と首を少し傾けた。いや、そんな顔されても分からないものは分からないぞ!!しばらくの沈黙の後、アル婆が口を開く。
「・・・・・・そこの小娘、櫛が欲しいと言っておったな」
「えぇっ!?う、うん」
「そうか、ちょいと待て。いいのを探してくる」
奥の方へと姿を消し、音だけがこちらへと聞こえてくる。しかしすぐに見つかったのか、すぐに顔を出した。
手に持った綺麗なケースを、手で少し払いテーブルに置く。木造のケースではあったが、透明な部分がありそこから中が見えている。いかにも高級そうな櫛で植物が彫られている彫り櫛で、派手すぎずしかし美しい繊細な彫りに目を惹かれた。ツィリカも感動して目を惹かれている。
「うわーーきれい・・・・・・」
「そうじゃろう。これはかなり昔にドワーフが作ったとされる貴重な櫛じゃ。繊細なとき心地で、当時でもかなり値が張ったのじゃろう。まぁ、今ではあまりこういう凝ったものを買うやつはおらんがのぉ」
「ううん、これ本当に素敵だよ。一目惚れしちゃった」
「そうか、それはこいつも喜ぶであろう。あと、これも同じやつが作ったもので櫛とはセットじゃな」
そう言って同じ植物が彫られた金属を付けたヘアゴムが差し出される。
「わっ!!本当に素敵だよ!!」
「そうだね。ツィリカにも似合いそうだ」
「あぁ、これにしたらいいんじゃないか」
じゃあ、と財布を取り出しアル婆に金額を聞く。
「なんじゃ、お主がプレゼントするのか。・・・・・・先程のは大層ムカついたのじゃがまぁ、仕方がない」
と、本来想定していたはずの金額からだいぶ下げてくれたのか、手持ちのお金でも買えるほどの金額となっていた。
「いいのか?」
「あぁ、まぁこれもなにかの縁じゃ。大事にするがよい」
そう言って用は済んだとばかりに家の奥へと再び帰って行く。その後ろ姿はなんだか嬉しそうであった。
「アル婆ーー!!本当にありがとう!!大声出してごめんねーー!!」
ツィリカが笑顔で感謝を述べ、また謝罪をするが、それが大声であることに誰も反対する者はいなかった。俺たちも大声で感謝を述べ、また謝罪をする。奥から怒声は聞こえなかった。
アル婆の店から出て帰路につく。
「ツィリカ、その櫛をよく見せておくれ。・・・・・・うん、これは素晴らしいな。良き名工が作り上げた逸品だろう」
エレアの手に渡ったとき、ちょうどいいタイミングで櫛に太陽の光が当たりキラキラと光る。
「うん、本当にきれい・・・・・・。私がおばあちゃんになっても絶対に大切に使うよ!!」
「ふふっ、あぁそうするといい」
「でもエレア、あのアル婆の知り合いだったなんて聞いてないぞ?怒髪天をつく勢いで怒っていたのに、エレアの名前を出した途端急に大人しくなりやがった。一体どんな関係なんだ?」
「あぁ、実は小さい頃会ったことがあるみたいなんだ。私は覚えていなかったんだが、両親から話は聞いていてね。もしかしたら、と思って名乗ってみたら本当にその通りだったというわけさ」
「ふーーん。じゃあエレアにもアル婆がなんで優しくなったのか分からないってことか?」
「・・・・・・まぁ、そういうことになるね」
「でも、本当に良かったよ。サンがアル婆さんに噛み付いた時はどう収拾をつけようかと思って・・・・・・」
「おい、ミド!!そりゃーないぜ!!俺だって皆のためにと思って・・・・・・ってエレア!!額の傷はもう塞がったか!?!?」
「あぁ、軽い傷だったからな。もう塞がっているよ。心配してくれてありがとう、サン」
「っっ!!あ、ああ・・・・・・」
顔が赤くなるのを感じる。それを必死に隠すため、会話をするために後ろに向けていた顔を前へと戻した。
「じゃあサン!!早速私の髪を梳いて!!それと髪を括るのも!!」
「はぁーー!?おい!!髪を梳くならまだしも髪を括るなんざやったことねぇぞ!!」
「大丈夫だって!!サンならできる!!」
しかしツィリカが無理難題を吹っかけてくる。
「絶対にミドとエレアの方が上手く出来るって!!」
「それはそう!!でもサンにやってもらいたいのぉーー!!」
「おい!肯定すんな!!」
「きゃはははははっ!!」
舐めた目で見やがって・・・・・・!!
くそっ、こうなったら上手に括ってツィリカに目に物見せてやるっ!!!
「おい!!ツィリカ!!そうなったら早く家に行くぞ!!俺を馬鹿にしたことを後悔させてやる!!」
そう言ってツィリカの腕を引っ張り走っていく。
誰しもが皆笑顔だった。普通の日常で普通の一日。平穏で心安らかな、そんな思い出。
けどなんで俺は、俺は・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は!!!!




