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第三話

〜2年後〜


7歳になった。イニトスの学園を目指すことを決めたあの日から、厳しい鍛錬が始まった。午前中は母のエリンから魔法の授業を受け、午後は父であるキャスパーから剣を学んだり、体力をつけるための基礎トレーニングを行ったりする。そんな生活を2年続けたことでステータスにも少なからず変化が見られた。



名前: スヴァン

年齢: 7

レベル: 1

HP: 37/37

MP: 153/153

筋力: 9

耐久: 11

俊敏: 8

精神: 27 

スキル: 火魔法2・風魔法1・剣術1・身体強化1

固有スキル: アイテムボックス・鑑定・経験値2倍


まず目を見張るのはMPの上昇だ。これに関しては実は理由があって、将来について両親と話し合ったあの日の夜、寝る前にステータスを確認するとMPの最大値が1上がっていたのだ。原因を考えてみると、前世で転生物を読んでいた知識が活きた、そう魔力切れだ。

その後は色々と自分で検証してみた。ただMPは魔力切れを起こすたびに上昇する訳ではなく、10%前後くらいの確率で上がっていった。基本的には毎晩寝る前に魔力切れを起こすのと、父が狩りなどに出ていていない時に、午前中の魔法の授業が終わった後魔力を使い切っていた。これによりMPは100以上増加し、大人顔負けの値になっていた。

ちなみにこのMPの上昇は両親には適用されなかった。子供にだけ適用されるのか、全属性適性の影響なのか、それとも転生者特典なのか。。。この世界でこの事実が知られていないところを見ると十中八九転生絡みだろうとは思うのだが。

とにかくこれに早い段階で気づけたのは運が良かったとしか言いようがない。



魔法の方はかなり順調だ。母から火と風魔法を教えてもらっている。どうやら俺は火魔法が一番得意なようで、半年ほど前にレベルが2に上がった。レベルが上がったから火魔法の威力や精度が急激に変化したかと言われればそういった事はなく、どちらかと言えば逆の説明が正しい。つまり、火魔法の精度または威力が鍛錬のおかげで一定まで達したのでレベルが上がったのだ。ここから分かるのは、スキルのレベルというものはあくまで現在の自分の実力を示す指標という事だろう。

その他のステータスもいい感じで伸びている。父との厳しいトレーニングのおかげか精神と耐久にはかなりの向上が見られる。素振りやランニングなどがメインなので、必然的にこれらの数値は高くなる。




そんなある日、俺は思い切って父に狩りへ同行させてくれないかと聞いてみた。やはりステータスを伸ばすには、経験値を貯めレベルアップすることが重要だ。それに俺には、経験値2倍という稀有な固有スキルもある。経験値は素振りなどのトレーニングでもごくわずかに溜まっていき、一度も魔物と戦闘したことのない人のレベルが上昇することもよくある。というより一般人でも成人しているとレベル1という人はほとんど見かけない。しかし、やはり経験値を多く獲得できるのは魔物の討伐である。ちなみに父は3日に1日程度の頻度で狩りに出掛けているが、50%くらいの確率で何かしらの魔物を討伐している。


「流石にまだスヴァンは7歳だからな、、、ただ学園に行く前に魔物を見ておくのは必要かもしれないな。よしそれじゃこれから一年でもう少し実践的な剣術と身体強化の使い方を教えこむ。もしそれについて来られたらその時に狩りに連れていくよ。」




見事にやる気を煽られた俺は、魔法だけでなく父との稽古にもより一層真剣に取り組んだ。

そして1年後・・・



名前: スヴァン

年齢: 8

レベル: 1

HP: 42/42

MP: 197/197

筋力: 10

耐久: 13

俊敏: 10

精神: 29

スキル: 火魔法2・風魔法2・剣術2・身体強化1

固有スキル: アイテムボックス・鑑定・経験値2倍



ステータスはさらに伸び、身長も130cmを超えた。


「キャスパー、やっぱりスヴァンにはまだ早すぎるわよ。森には危険な魔物もいるのに。」


「エリン、無理はさせないから安心してくれ。Dランク以上の魔物がでたらすぐに引き上げてくるよ。」

「母さん、僕からも危ない真似はしないって約束するよ。でも、どうしても自分の目で魔物を見てみたいんだ。」


母はかなり心配している様子だったが、なんとか説得することができた。この世界では幼い年齢から魔物のいる森などに行くことはそこまで珍しいことではない。特に学園への入学を希望している子供たちは、学園に受かるためにも幼いうちから魔物を狩ってレベル上げをすることも多いのだ。ただこういったケースのほとんどは、貴族の子供たちが実力の高い冒険者を複数人雇って、とどめのみをさして効率的に経験値を稼ぐという形だそうだ。今回は同行者が父一人なので母が心配するのも無理はないだろう。



父が主に狩りを行っている場所は、グレゴ村の北側に位置する小さな森林地帯。ここには魔物以外に鳥や動物も多く生息する。これらの普通の生き物と魔物との違いは魔石があるかないかである。全ての魔物には魔石が存在し、それが魔物の討伐証明として扱われる。

魔石には電気の動力としてなど、さまざまな用途があり高値で売買される。また魔石の価値は純度や大きさによって決まるそうで、強い魔物ほど価値の高い魔石を持っている。


「スヴァン、魔物や動物との戦闘で一番大事なのはな、索敵なんだ。先に敵を見つけ、自分に有利な状態で戦闘をスタートする。これを徹底していれば深い怪我を負ったりすることはそうそうないさ。」


「索敵をするには何が必要なの?索敵魔法っていうのは母さんから聞いたことがあるけど、魔力の消費が激しいから頻発はできないんだよね?」


「そうだ。一般的には索敵魔法はここぞっていう場面のみで使う。魔力っていうのは後衛の魔法使いや治癒士にはもちろん、前衛にとっても貴重な物なんだ。例えば俺の場合は戦闘時には身体強化の魔法を使うからな、その時に魔力が足りないとなるとかなり厳しい。」


「ただ、索敵っていうのは何も魔法だけじゃないのさ。足跡だったり草が踏みつけられていたり、些細なところから近くに生き物がいることを推測することはできる。索敵のスキルレベルっていうのはこれら全てを総合して評価されていると思っていい。索敵魔法もそれ以外の索敵スキルもどちらも大事なんだ。」


ちなみに索敵魔法自体にも質の違いというのは明確にあるようだ。優秀な索敵魔法の使い手ほど、少ない魔力の消費で広範囲の索敵を正確に行うことができる。


その後広々とした草原の中で父に索敵魔法について教えてもらっていた。索敵魔法は思っていたよりも簡単で魔力を全方位に向かって放出させている感覚だ。その放出された魔力が他の魔力にぶつかることで、その存在を感知することができる。ちなみに魔力は魔物や人だけでなく、動物とされる生物たちも持っている。しかし魔物の持つ魔力は他の生物とは異なるらしく、索敵魔法を使い慣れてくると魔物のみを感知することもできるという。



2時間ほどかけてようやく索敵魔法がものになってきた。本来習得にはもっと時間がかかるのだが、俺の場合は大人顔負けの魔力量で何回もチャレンジすることができたのと魔力操作を日頃から鍛錬している影響が大きいのだろう。



少し休憩した後、ついに森に足を踏み入れていく。魔力をかなり消費してしまった俺の代わりに、父が普段より多めに索敵魔法を使いながら安全を確保してくれている。森の中は思ったより暗く、木々が生い茂っている。俺は植生などには全く詳しくないからわからないが、なんとなく北欧を連想させる森林だ。俺の住むグレゴ村は大陸の中でも北東部に位置するはずだから、これはあながち間違いではないのかもしれない。


そんなことを考えながら歩いていると父が足を止めた。どうやら何か見つけたようだ。


「あっちだ、魔物ではないな。何かいる。」


声量を下げながら目標のいる方角を教えてくれる。


「恐らく鹿だろうな。食用に狩って行こうと思うが、もしお前が倒したいなら挑戦してみてもいいぞ。」


「わかった。風の魔法でやってみる。」


目を閉じ、集中力を研ぎ澄ませる。風魔法で弓矢をイメージして作り出す、ウィンドアローと呼ばれる魔法だ。

目を開けて、獲物に視線を移す。草でも食べているのだろうか、動きは止まっていてどこでも狙い放題だ。足は細すぎて外す気がするし無難に腹部を狙おう。弓矢よ、射け!



『ザシュ、、、、』



鈍い音と共に、狙い通りに矢は腹部へと突き刺さった。鹿はまだ息があるようでのたうち回っている。

そのうちに持っていた剣を取り出し首のあたりを切り付ける。


「や、やった。父さん、僕、鹿を倒したよ!」


興奮気味で話す俺に、父は鹿の息がないかを確認するように諭してくる。


「うむ、ちゃんと倒せているみたいだな、よくやったスヴァン。」



その日は俺の魔力に余裕がなかった為、それで引き上げた。寄ってみると鹿はそれなりに大きく存在感があった。本来ならば解体して必要な部位のみを持ち帰るそうだが、ここはアイテムボックスの出番だ。鹿を丸ごとアイテムボックスにいれて持ち帰った。


帰り道でステータスを確認してみたが、索敵スキルを覚えていただけでレベルが上がったりということは無かった。やはり、魔物に比べて動物は得られる経験値も少ないようだ。

3日後の狩りにも父が連れて行ってくれるようなので、焦らなくても近いうちに魔物を見ることができるだろう。


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