第15話
「・・・・ン!!
・・・ヴァン!起きてよ!スヴァン!!!!」
エレナの騒々しい声にうなされながら、ゆっくりと目を開ける。
外は明るくなり始めていて、どうやら俺はギルドにある休養場でぐっすり寝落ちしてしまったようだ。
「ああ。おはようエレナ。朝からそんなに大きな声をあげてどうし・・」
「聞いて!!私のお父さんとキャスパーさん達がまだ帰ってきてないの!
昨日の午後お父さん達がここを出てからもう15時間は経ってるの。
森で何かあったんじゃないかって私、心配で。。。」
「・・・。エレナ、心配なのは俺も同じだよ。でもあのワグマールさんにうちの父さんそれにB級冒険者のディーンさんだってついてるんだ。みんなきっと大丈夫だよ。」
最近少しずつ大人びてきていたエレナも年齢で言えば、まだまだ子供だ。それにエレナにとって彼女の両親は、生まれてから常に一緒にいた最も大切な存在。こうなってしまうのは当然のことだろう。
「そう、、よね。。。今はお父さんを信頼して私は自分ができることをするべきだわ。ありがとうスヴァン。」
ドンッッ!!
その時勢いよく扉が開き、ギルドの受付嬢が部屋に駆け込んできた。
「スヴァン君!エレナちゃん!!あなた達のお父さんと一緒に斥候にでたうちの2名が帰ってきたわ!」
「!!!!」
ーーーーー
広々としたギルドのホールに向かうと、普段は賑やかなその場所に重たい雰囲気が漂っていた。
真ん中にポツンと置かれた椅子に二人の冒険者が座っており、見れば父さん達と一緒にいた冒険者のうちの二人だった。
「・・・それでディーンさんの予定通り、俺たちは3つの2人組に分かれることになったんだ。ディーンさんとワグマールのおっちゃんのペアは更に情報を得るのと、敵をひきつけるために森の深部の方に逃げて行ったのだけは覚えている。俺たちは真っ先に森の外へ抜けるルートを取ったんだが、それでもここまで逃げてこれたのは運が良かったとしか言いようがない。」
「そうだ、特にあの場にいた二匹のヤバい魔物がそれぞれ俺たちではない別のペアを標的にしたんだ。だから俺たちは奴ら以外の小物を相手にするだけで済んで、逃げることができた。」
「っっな!!それじゃああなた達は私のお父さん達を囮にして逃げてきたってことじゃないの!」
話を聞いていたエレナが、堪えきれないとばかりに口を開く。
「。。。君は・・・」
「ワグマールの娘のエレナよ。」
「そうか。。。それは済まないことをした。ただし一つだけ言えるのは、これは全てリーダーであるディーンの指示のもと全員で合意して事前に決めていたことなんだ。
もちろん俺たちの方に強い魔物が来る可能性だってあった。今回は俺たちが幸運をひき当てたにすぎないんだ。」
「そんなの、分かってるわよ!!」
エレナの悲痛な叫び声の前に、場の空気が一層沈んでしまう。
「エレナ、今彼らに怒りを向けても、何も変わらないよ。それより父さん達が繋いでくれた情報を聞こう。」
「・・・・分かったわ」
それから二人が語ったことを要約すると俺がグレートファントムメイジを倒した場にいたのは、キングファントムメイジ。グレートの更に上位種に当たる存在だ。
更に深部から出てきた強力な魔力を持った魔物は、ディーンの見立てによればキングの更に上位種、エンペラーファントムメイジとでも言おうか。ギルドの資料を遡ってもこの魔物の目撃情報はなくおそらくはこいつが今回の魔物の大量発生の原因だ。
ディーン率いる6名は当初この2体の魔物を討伐しようとしたが、エンペラーファントムメイジの圧倒的な魔力の前にその案を断念。その際ディーンは他の二つのペアに、それぞれ自分の持ちうる考察を書き記したオーブを手渡した。ちなみにこのオーブには魔力を使いながら思念を強く持つだけで文章を記録ことができ、冒険者が戦闘中に情報を記録したい時には重宝されている。
しかしこれはイニトスの迷宮からしか得ることができず、非常に高価であるので上位冒険者でなければ持つことは難しい。今回の場合はギルドがディーンに貸し与えたようだ。
「そのオーブは今ギルド長達に手渡して、内容を解読してもらっている。俺たちは移動しながら軽くしか内容を見ていないんだが・・・」
「そこからはギルド長であるワシが説明しよう。」
ギルド長と名乗った人物は長い白髭を蓄えた初老の男だった。




