第12話
戦いはいきなり一方的なものになっていた。
グレートファントムメイジの魔法は名前に負けず高度なもので、遠距離から正確に闇魔法を放ってくる。
(この魔法は・・・。毒でも持ってそうな不気味さだな。。。)
その魔法のドス黒さに、俺は忌避感を感じてしまう。
ダークバレット、とでも名付けようか。小さな球体のようなそれは奴の掌から次々と放たれものすごい速さで飛んでくる。
最初はなんとか躱していた俺だったが、このままではますます疲労が溜まるだけで奴に近づくことすらできない。
(仕方がない、勝負に出るしかないか。)
俺はここで切り札を顕現させ勝負に出る。その切り札とは名付けて魔法盾。
魔力操作の能力を得た後に、俺自身で作り出したオリジナル魔法だ。
俺の身長より少し低い120cmほどのそれは、盾のような形をしており魔法への強い耐性がある。
この魔法盾は質量がほとんどなく、俺の俊敏性を落とす心配はないが逆に物理攻撃にはめっぽう弱い。
(奴はおそらくこんな魔法を見たことすらないはず。一直線で近づいていって速攻で倒すしかない。)
そう決心した俺は、奴の方に向かって全速力で走り始める。
「ナンノマネダ、イッタイ」
少し驚いた様子を見せた奴だったが、すぐに気を取り直し魔力を貯め始める。
「トクベツニ、デカイノヲクレテヤル。」
そう言い放った奴の頭上に球状の魔力が溜まり始める。
どうやらとびきりの魔力を充填して、俺を跡形もなく消し去ろうというつもりらしい。
(その方が好都合だな。奴があれを放ってこの魔法盾の能力を理解する頃には俺の勝ちだ。)
直径数メートルはあろうかという巨大なダークバレットは、今か今かと俺に狙いを定めている。
奴と俺との距離が10メートルを切ったかというとき、遂にそれが放たれた。
「オマエハオワリダ。」
余裕綽々の奴の予想通りに魔法が俺の体に直撃・・・・することはなかった。
しっかりと両手で構えた俺の魔法盾に弾かれた魔法は、ドームの天井にぶつかり離散した。
「ナ、ナンダト!?」
驚き、一瞬硬直した奴に向け俺は冷静にできる限り威力を高めたウィンドカッターを打つ。
ゆらゆらと空中に浮かんでいたその巨体に、俺の魔法が深々と突き刺さる。
「グッ、グアアア!」
「まだ足りないようだな、大人しく死にやがれ!!」
魔法壁を、変形させ剣のようにしてやつに切り掛かる。
一閃。
深く斬りかかられたその巨体から暗赤色の液体が流れ出し、奴は地上に倒れ込む。
ドサッッ
それと同時に俺たちを覆っていたドームの魔法が消失し、光が差し込んできた。
周りには未だ幾らかの魔物達がいたが、グレートファントムメイジを倒した俺に恐れて襲ってくる様子はない。
「ふう、魔力はほとんど使っちまったけどなんとかなったな。早くここから離脱しないと。」
俺が森の外へと歩を進めようとしたその瞬間、すでに死んだと思っていたグレートファントムメイジが突然大声をあげ叫び出した。
キーーーーーン
その音は弱々しいが、森の深部へとゆっくりと響き渡っていく。
グレートファントムメイジは数秒その声を上げた後に、今度こそ力尽き動かなくなった。
(いや、この流れってまさかあれか、もっと強い奴が出てくるとかか。)
そう考えた俺は、全速力で森の外へと走り抜けた。
周りの魔物達は俺に反応する様子はなく、むしろ何かに怯えているかのようにガクガクと震えていた。
「はあ、はあ、はあ。」
なんとか森の外へと抜け出した俺は背中に視線を感じ、森の方へと振り返る。
ビクッッ。
森はすっかり静かになっており、俺にはまるで森全体が一つの生き物のように感じられた。そして森はじっと俺を見て、グツグツと怒りを沸騰させているようだった。
その頃、スヴァンが倒したグレートファントムメイジの屍を見ながら、一匹の魔物が呟いた。
「アイツハオレガ、コロス。ゼッタイニ、コロス。」
森の暴発の瞬間が、近づいていた。




