第11話
ついに森の外に抜けようかとしたその瞬間、一匹のファントムメイジが突然奇声を上げ始めた。
キーーーーーーーン
耳をつき付けるかのような周波数の高い音が森中に響き渡る。するとそれに反応するかのように、だんだんと足跡が近づいてきた。
明らかにまずい予感がした俺は森の外への脱出を試みるが、ブラッドウルフたちが身を翻し突進してくる。
その目は血走っておりまるで助けが来るまでの時間稼ぎをしているかのようだった。
(この様子じゃまずブラッドウルフの数をもう少し減らしてからじゃないと、外に出るのは難しそうだ。)
一匹、二匹と着実にブラッドウルフの数を減らしながら戦っていると、またもやあの耳障りな音が森に響き渡る。しかし、それは先ほどファントムメイジが上げたものとは少し違うようだった。なぜなら今聞こえているそれは、ファントムメイジのものよりずっと図太く、骨に響き渡るような重厚感がある。それはまさに魔物の雄叫びというに相応しく、普通の人間が聞いたらそれだけで立ちくらみを起こしてしまうだろう。
その音の発信者はものすごい速さで近づいてきて、やがて俺の目の前に正体を表した。
ファントムメイジの数倍はあろうかという黒い巨体が、俺の正面に浮いていた。全体的に丸っこい形をしたその体からはしかし、えも言われぬ負の雰囲気を感じ取ることができた。不快感と嫌悪感を即座に感じ取った俺は、この物体が敵であることをようやく認識し戦闘体制に入る。
種族:グレートファントムメイジ
年齢: 0
レベル: 1
HP: 186/186
MP: 209/209
筋力: 21
耐久: 27
俊敏: 59
精神: 48
スキル: 移動速度強化2・水魔法2・
固有スキル: 闇魔法?
(やばい、やばい、やばい。。。魔力も半分ぐらいしかないこの状況でこいつと戦うのは不味すぎる。)
俺は焦っていた。名前から察するにファントムメイジの上位種であろうこいつはレベル1だというのに俺にとっては明らかに格上だ。それにこの闇魔法とかいう固有スキル、固有スキル持ちの魔物なんて見るのは当然初めてだ。撤退したくてもこいつのは俺より遥かに俊敏で背を見せた途端どんな魔法を飛ばしてくるかわからない。
「オマエ、ニンゲン、ダナ。」
突然不気味な声を響かせながら、グレートファントムメイジが話しかけてきた。
「そ、そうだが。」
「ナゼ、ココニイル。」
「・・・簡単な調査だ。」
「ココデ、ナニヲミタ。」
「何も見なかったとでも言って欲しいのか?」
「・・・」
「強いて言えば、俺が見たのはお前達。人間を害そうとする醜い魔物であるお前達だ。」
その瞬間、俺には魔物のまとうオーラが変わったのが近くできた。
禍々しいくらい色をしたそのオーラは森中に広がっていき、やがて俺と奴だけを囲い込む大きなドーム状の円になった。
「オマエガ、ココカラデタイノナラ、オレヲタオシテミロ。オマエガミニクイトイッタコノオレヲ。」
どうやらこの魔物は俺との1vs1をお求めのようだ。
まただ。あの時と同じ感覚。体内の血が沸騰しているかのように騒ぎ出す。
「面白い。まさかグレートなんて名前をつけた魔物が俺みたいなガキに負けるわけないもんな??受けてたつぜ。」
その瞬間それまで揺らいでいるように見えていたドーム状の魔法から揺らぎが消え、固形のドームが出来上がった。
それはまるで闘技場。俺かやつかどちらかが死ぬまで、出ることは許されない。




