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「さくら」(Sakura):桜×一樹

#記念日にショートショートをNo.29『4月1日のさくら』(Sakura on April 1st)

作者: しおね ゆこ

2020/4/1(水)エイプリルフール 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n5299id/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/ncb11a90a290d)

【関連作品】

「さくら」シリーズ

 「来年こそは、もっと近くで見られるといいな……。」

病院のベッドに身を起こし、窓の外を見ながら、君は寂しげに呟いた。

「当たり前だろ。来年こそは、僕が、直接花びらに触らせてあげるから。」

生まれた時から心臓が弱い君は、生まれてから一度も、病院から外に出たことがない。君の名前でもある花を、一度も近くで見たことがない。毎年いつも、病院のベッドの上から、窓越しに中庭に咲く桜を見ている。

来年は、君が二十歳になる年だ。

僕は4月、君に桜の花びらに触らせてあげることを約束した。


 季節は巡り3月。

君の体調も良好。今年こそは、満開の桜を、君に肌で感じさせてあげることが出来ると思っていた。

 ➖あの日、僕が病院に行かなければ。


 3月3日。

桃の節句のこの日に生まれた、君の二十歳の誕生日を祝いに、僕は病院を訪れた。

ケーキを一緒に食べて、たくさんお喋りをして、君に文庫本をプレゼントして。

「かずくん、ありがとう。」

僕➖志賀(しが) 一樹(かずき)を〝かずくん〟と呼ぶ君は、嬉しそうに僕にその言葉を伝えた。

とても楽しかった。君は笑顔だった。

 ➖それなのに。

一週間後、君がウイルスに感染したと連絡が来た。

そしてその3日後、君は亡くなった。

桜が開花したのは、その次の日だった。

感染源は僕で、僕があの日、病院に行ってしまったために、君は生涯で一度も近くで桜を見ることなく、この世を去ってしまった。

 それから2週間と少しが過ぎ、4月になった。

君の墓石の前で、手を合わせる。

卯咲(うさき) (さくら)

その名前が、刻まれないでほしかったのに。

誰か、君の死が、嘘であると言ってほしかった。

僕が、あの日、病院に行かなければ。

ウイルスを持っていたと知っていれば、行かなかったのに。

年齢のせいか、症状も軽微で、気が付かなかった。

僕は、馬鹿だ。

散り始めた桜が、一片、墓石に舞い落ちた。

【登場人物】

●志賀 一樹(しが かずき/Kazuki Siga)

○卯咲 桜(うさき さくら/Sakura Usaki)

【バックグラウンドイメージ】

【補足】

◎桜の開花時期について

公開当時(2020年)の桜の開花時期と合わせてあります。

【原案誕生時期】

公開時

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