はじまり
俺は今、撮影した写真を眺めている。撮った写真が映えているかをチェックするためだ。そして撮った写真をもめグラにアップする。
もめグラとはmoment gramの略で、若い世代に人気のもので、主に写真や動画を使ったコミュニケーションを楽しむものである。そんなもめグラの自己紹介はいい。俺の自己紹介をするとしよう...
俺の名前は、神田正輝。17歳で春から大学 1年生だ。至って平均な東雲大学に進学し、至って普通な身長170センチの背丈と至って普通な顔立ちだと自負してる...たぶん。
そんな俺は、田舎から東雲大学がある地域で一人暮らしをすることになった。引越し先は、よくある普通のマンションだ。引越してきたばかりの俺は、高校生の時から始めたもめぐらを開き、新居を撮影した。
「新居なう、とよし撮影終了。後は投稿するだけだな。」
もめグラム
フォロー数86人
フォロワー数135人
至って普通のフォロワー人数で、もめグラマーには程遠く、趣味で投稿する程度の人間だ。
いい感じに写真を撮れた俺は、宅配で送ってもらったダンボールの整理をおこなった。家具付きのマンションで、タンスに服をしまったりしていた時、突然、大きな揺れが正輝を襲った。
「嘘だろ、こんな時に地震かよ...」
地震の揺れでタンスの横に置いてあった、鏡が正輝にもたれかかってきた。
「やばっ⁉︎あぶな」
俺は目を瞑り、衝撃に備えたが、いくら待っても鏡の衝撃がこなかったので目を開けると、古さはあるが綺麗な家が広がっていた。
「どこだ、ここ。俺の家ではないな...」
後ろを見ると、家に置いてあった鏡と同じものがあった。
「もしかして、この鏡って」
俺はそう呟きながら鏡に触れると、手が鏡に吸い込まれていき、次第に身体全体も吸い込まれていった。
「こわ、なんだこれ。どこでも○◯かよ。」
周りを見渡すと、元いた新居に戻っている事が分かった。驚きを隠せない俺は、先程の鏡を触ってみた。鏡の裏側を見ると何やら模様が書かれてあるのに気づいた。疑問に思った俺は、管理人に詳しい話を聞いてみた。
「○○○号室に引越してきました、神田と申します。よろしくお願い致します。少し気になる事がございましたので、お声かけさせて頂きました。」
「あー、神田さんね、宜しくね。どうしたの?聞きたいことって?」
気さくなおじいちゃんがそう尋ねてきた。
「○○○号室の鏡って何か知ってます?」
「あーあれね、前の住居人のものだよ、前、そこにはおばさんが住んでたんだけどね、交通事故に遭って死んじゃったんだよ。そのおばさんの荷物を家族に渡そうにも、誰も家族でいなかったんだよねー」
「そーなんですか?」
「だから使えそう鏡は、そのままその部屋に置いていたんだよ、気味が悪ければこっちで処分するけど...」
「あ、いえ...大丈夫です!」
少し、小走りで部屋に戻った俺は考えにふけていた。
(これは、もう一度行ってみる必要があるな...)
俺は、そう呟きながら鏡に触れた...