7 離陸
タイトルにくっそ悩みました。
私は人間だ。人間だった。
私は男だ。男だった。
過去を振り返っても意味は無い。
だが、ふと考えてしまう。何がいけなかったのか。
今の私は吸血姫だ。吸血姫になった。
私は女だ。女になった。
このまま精神までずんずん変わってしまうと考えると非常に頭が痛くなる。
しかし、何故私はあの彼のように石化しなかったのだろう。私は改めて同族へと問う。
「で、"後者"なのは分かったけど、だったらなんで私は吸血姫になっているのよ。」
自然と女言葉になっている恥ずかしさに耐えながら、赤紫の髪色の同族の答えを聞く。
「そもそも人間が石化してしまうのはね?血に耐えられないからよ。」
血に耐えられない?橙が後に続ける。
「私たち吸血姫が血を吸った後からね、私たちと同じ血液が吸った分の血を補うように血管内に注入されるんだよ。」
「なるほど、血の濃さに耐えられず石化してしまう、と。」
「そゆこと。」
人間が弱いのか吸血姫が強いのか…
「となると、私は運良く耐えられたってことかしら…はぅ///」
何が"かしら"よっ…自分の口調に赤面する。
赤紫は言う。
「ま、そういう事ね。確率としては、無量大数の無量大数乗分の1かしらね。」
「途方もないっ!」どんな幸運よ!
昔、幼なじみに貰ったあの"御守り"の効果かしら…いや、なのだろうか…///
突然、赤紫は何かを警戒するように、表情を険しくした。橙も同様に辺りを見回している。
「とりあえず一旦移動したほうが良さそうね」
多くの足音がこの教室へと近づいてくるのを感じた。
すると、吸血姫たちは私の手をとってこう言った。
「「行くよ!」」「…はぇ?」
何処に?という私の呟きも無視して、彼女らは私と共に窓の外へ文字通り飛び出した。
高い…高所恐怖症じゃあないが、たまったもんじゃない。
飛び出した教室からは悔しがっている人間の姿が見えた。
吸血姫たちは高く高く舞い上がる。眼下の旧友が遠くなる。
どうやら私は身体能力も向上したらしく、膝をついて幾度も幾度も頭を下げる泣きっ面のあの老教師の姿や、飛んでいく私たちの姿に呆然とするあの女子生徒の姿まではっきりと見えた。
赤紫と橙は私をどこに連れて行くつもりなのだろう。
そう思いつつ、腐るほど通った我が学び舎を文字通り飛び去った。
ぶっちゃけると大学ノートではもともと6話と合体していた話なのですが、長くなったので分割して投稿というのとになりました。