11 能力
『』は回線表記のつもりです。
表示されてなかったらごめんなさい。
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『ザザッ………こちら、AA24。"対象"を確認、当機の様子を窺っている、どうぞ。』
『…AA26、了解。"対象"は何匹か、どうぞ。』
『3つだ、AA2…』
『おいテツ、この回線は隠匿されてる身内用だし、オマケに暗号化されてんだ。お堅いあれこれはやめにしようやぁ』
『そーだぜ?』
『ザザッ………お前ら、集中しろ、国には内緒で動いているんだ。さっさと始末し5機全員帰還するぞ。』
『了解、AA24』
『うい、AA27』
『承知、AA26』
『はいはい、AA30』
『ザザッ………全機へ通達…所定位置へと到達、これよりプランAよりBへ移行する。人間様の底力、物の怪共に見せつけてやろうぞ!』
『『『『応っっ!!!』』』』
「底力というより技術力でしょ」
私は苦笑しつつ、決め台詞へツッコミを入れる。
何故それが出来るのか。
それは、フラグの建設ラッシュ真っ只中の様子を終始漏れなく、全て聞いていたからだ。
自分でもなぜ聞き取れるのか分からないが、聞けるのだから仕方がない。
隠匿だの暗号化だのほざいていたが、吸血姫は回線までも己の耳で聞き取れてしまう。
嗚呼、彼らの不憫さに涙が溢れてしまいそうだ。
さて、彼らは何らかの"プラン"で私たちのことであろう"対象"に対し危害を加えると宣言してきた。
私はどう対処してやればいいのか。
そう思っていると、レット姉が声をかけてきた。
「"魔弾"の練習に丁度いいわね!私たちが手本を見せるから、真似してご覧なさい?」
こいつは何を言っているんだ、と理解に苦しんだが、吸血姫の時点で今更だと開き直り、素直に頷いた。
その後、私は驚くべき光景を見ることになる。
彼女らは華奢な指先から飛び出した小さな光を、1点へとみるみる収束させていき、西瓜1玉程の大きさの所謂"魔弾"を作り出した。
レット姉とリン姉はそれを両手で行っており、制御に慣れていることが分かる。
事前に聞かされては居たが、正直、目を疑った。
アニメーションや映画などのそれとは違い、私はそれが生成されていく工程がとても美しく見えた。
ふと耳を澄ますと、驚愕する人間共の囀りが聞こえてくる。
『嘘だろ…俺は夢でも見てるのかぁ?』
『撃て!撃って妨害を!』
『無駄だぁ…射程外だ。』
『ははは、はは。』
『待て皆!情報にあっただろうに!気を強く持て、こちとら現代兵器で挑んでんだ!心配無用だ!』
『……あぁ、そ、そうだな、悪い…』
『焦ってないし?焦ってなかったし?』
『弾の無駄遣いしようとしてたよなぁ、お前。』
『…ザザッ』
『遊ぶのは後でも出来るだろ。よし、プランBからCへと…おい、何やってんだAA24!』
『…ザザッ……グスッ』
『位置へ戻れ!勝手に突っ込むなぁ!』
『…ザザッ…ブチ』
『あ!あいつ、回線切りおった!』
『ははははっっ…どうせ死ぬなら道連れだ!!』
「馬鹿ね」「馬鹿だね」「馬鹿すぎる」
3姉妹は呆れた。しっかり狙い定まっている所へ自ら当たりに行くのか。
もし私が同じ立場であったとしても、わざわざ危険に突っ込まず迷わず逃げていただろうに。
レット姉は笑った。
「見てなさい?」
そう言ったあと、エンジン出力最大で迫り来る旧空軍レベルの戦闘機へ向けて、レット姉は右手の魔弾を、キャッチボール並の軽さで放り投げた。
しかし、見た目とは裏腹に、重力が横に働いているが如くどんどん加速していった。
それでも彼はがっちりと操縦桿を抑え、銃弾を豪快にばらまいているが、当然、私たちには届いていない。届くはずもない。
そんな泣きっ面の正面から魔弾がずんずん迫り来る。
彼は嗤う。声を上げ嗤う。
自らの後悔を消すように。
死の恐怖を消すように。
彼は、置き土産として仲間の心に更なる恐怖を植え付け、笑いながら、そして誰も道連れに出来ぬまま――――――――
プラン云々はハム用語を使用したつもりです。
今回はルビが多めになってしまいました。
まぁ、回線あるから仕方ないよね!ね!