第4話 お手紙です。
温泉の街ホスプに着いて、早2日。
恐れていた事態になってしまった。
「陛下、シルヴィア様からお手紙です」
そう言って、私の側近であるセバスが手紙を持ってきた。
「あぁ、ついに来てしまったか…」
そう、シルヴィアに城を抜け出した事がバレたのだ。
セバスの部下も使ってバレないように工作していたのだが、あまり役に立たなかったらしい。
いや、セバスの部下が無能という訳ではないのだ。むしろ王国内でも、執事·メイドとしての技能、戦闘力共にトップクラスだと言える。
ただ単に、シルヴィアが有能すぎるのだ。
政治から交渉、各方面への根回し、ほとんどを彼女がこなしている。
今回も、すぐに執事達の嘘を見破り手紙を寄越してきたようだ。
それでも、ここに着いてから2日過ごすことができたのは、最近忙しかった私への労いだと思う事にしよう。
「いかがなさいますか?」
手紙には、休んだのだから早く帰ってきて仕事しろ、という意味の文章が長々と書かれている。
「流石に戻らないとマズそうだな…」
「では、馬車を表に用意しておきますので」
「あぁ、分かった」
さて、妻と娘に城に戻る事を伝えなければ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私が城戻る事を伝えると、娘のリーンがまだこの街で遊んでいたいと言い出した。
「父上、私はまだ父上とこの街にいたいです!」
「いやしかし、これ以上ここにいるとシルヴィアに怒られてしまうからなぁ…」
リーンは賢い子だ。親の贔屓目を差し引いても、同年代の子とは比べものにもならない。
私の言葉を聞いて、帰らないといけないことが分かったのだろう。
だが、少し考えるそぶりを見せた後、
「でしたら、私はこの街でもう少しだけ遊んでいきますね」
「……えぇ!?」
私の娘がとんでもないこと言い出した。
「いやいや、リーン。お前は仮にも王族なんだぞ! もし悪い奴らに襲われたらどうするんだ!」
「父上、この国は他国と比べて犯罪率が低いではないですか」
「いや、確かにそうだが0という訳ではないんだぞ!」
「ダメ、ですか?」
ウッ!可愛すぎる!
リーンが目をキラキラさせながら私にお願いしてくる。
それにしれも珍しいな。リーンが私に意見するとは。
それほどまでにここで遊びたいのだろうか。だったら…‥いやしかし…
私が悩んでいると、セバスが私に提案してきた。
「でしたら、公爵様の別荘が近くにあったはずです。そこに泊めさせて頂くというのはいかがですかな? 公爵様は紳士的な方だったはずです」
公爵か…確かに彼は信頼出来るか。
「よし、わかった。もう少しここで遊んでいると良い」
「やったぁ!ありがとうございます!」
リーンが嬉しそうに飛び跳ねる。
あぁ、可愛いなぁ。
「リーン。その代わりにセバスを置いて行くから、しっかりと言う事を聞くんだぞ」
「はい!分かりました!」
そう元気な声でリーンは返事をした。
この時、私は気付いていなかった。
セバスとリーンが、まるで悪戯っ子のような顔を浮かべて頷いていた事に。
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