第2話 勇者はどこ?
太陽暦1560年10月25日、勇者エルダム=フォン=ランバースが亡くなった。
この知らせはあっという間に王国中に広まった。
だが、本当の死因について知っているのは、私を含めたごく一部のみだ。
あれから1ヶ月が過ぎた。
「ルドルフ、勇者のジョブを持つ者ですが、まだ見つかりません」
「そうか…」
シルヴィアが珍しく焦ってるように見える。
彼女の報告には、私も落胆した。
この世界にはジョブというものが存在し、大抵は親から受け継ぐ。
もちろん親と違う職業に就くことも出来る。
その場合は、その職業の者に弟子入りしてジョブを授けて貰う。
人から人へ受け継がれていく、どのジョブにも共通して言えることだ。
『王』というジョブもそうだ。
だが例外はいくつかある。
その一つが『勇者』のジョブだ。
『勇者』のジョブは人為的には、受け継ぐ事が出来ない。
ジョブを持つ者が死ぬと、他の者に自動的に受け継がれる。
つまり勇者が死んだ今、新しい勇者が生まれるはずだ。
「貴族、又はその子どもは全員調べましたので、おそらく、平民ではないかと」
「それはまた面倒な…」
王国の平民全員を調べることなど出来るはずがない。
仮にしたとして、10年はかかる。
「やはり帝国のように戸籍謄本の制度を作っておくべきでしたね」
「あの頃はまだ忙しかったからなぁ」
帝国には戸籍謄本という制度があるそうだ。
うちの王国でも同じような制度を作ろうという動きはあったのだが、まだ私が王になったばかりの頃だったので、一度保留になってしまったのだ。
この制度を作っていたなら、新たな勇者を探し出す事もそれほど難しくなかったに違いない。
「今更後悔しても仕方がないか…」
「ええ、そうでしょうね。ひとまず、各地の教会に国民のジョブの確認を行うように通達しておきますので」
「ああ、わかった」
この国には各地に教会がある。どんなに小さな村だろうと1つは建っている。
それにより教会の本部はいろいろな地域の情報を知ることが出来る。
教会の情報網は王である私が持つものや、軍の持つものよりも優れていると言われるほどだ。
教会の協力が得られたなら、格段に探しやすくなったと言えるだろう。
だが、それでも時間はかかる。
教会が探している間にも、シルヴィアも必死で探している回っているようだが、なかなか見つからない。
今代の勇者は一体どこにいるのか。
一体どんな者なのか。
そんな事を考えながら、わたしは各地からくる報告書を読み始め、仕事を再開した。
第3話は4月18日に投稿します。
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