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勇者の事後処理は大変です  作者: 泡津 海
第一章 新たな勇者
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第1話 勇者の死因は?

 

「陛下、大変です!」


 家族と昼食をとっていると、いきなり宰相を務めているシルヴィアが大声を上げて部屋に入ってきた。


「どうした、シルヴィア。帝国でも攻めてきたか?」


 もちろん、冗談だ。30年ほど前ならともかく、今の時代は平和そのものだ。

 帝国の皇帝とは、代替わりしてからけっこう仲良くしている。

 魔国にいる魔王も今は大人しくしているようだ。噂では、数年前に亡くなったといわれているが、本当かどうかはわからない。


 シルヴィアも冗談だと分かっているのだろう。私の質問には答えず、真剣な顔で話す。


「勇者様がお亡くなりになりました」

「そうか、勇者様が……はぁぁ!?」


 私は言葉になっていないであろう悲鳴をあげた。

 きっと今の私は、ものすごく間抜けな顔をしているだろう。


「シルヴィア、すまないがもう一度言ってくれ」

「勇者エルダム=フォン=ランバース様がお亡くなりになりました」

「うっそぉ…」

「事実ですよ、陛下」


 聞き間違いであって欲しかったがどうやら私の耳がボケた訳ではないらしい。


 それにしてもエルダムが死んだのか…

 死んでも死なないような奴だったのに、とても残念だ。

 てっきり私より長生きすると思っていたが。


 昼食を食べ終わり、執務室に移動してから、詳しい話を聞く。


「それで、死因は何だ?」


 仮に暗殺なら国を揺るがす大事件だ。

 こんな話、王妃や子供達には聞かせられない。場所を変えたのもその為だ。


「死因は窒息死です」

「何!やはり暗殺か!だがどうして窒息させたのだ?寝ているところを剣でひと突きした方が簡単なはず。まさかそれほどの手馴れが…」

「ルドルフ、考えているところ悪いですが、暗殺ではありません」


 シルヴィアが私をなだめながら、そう言った。


 たしかに、暗殺の可能性があるのなら、彼女ももっと慌てていただろう。

 我ながら、少し戸惑っていたようだ。


「それじゃあ、一体なぜ死んだんだ」


 シルヴィアは少し顔を曇らせて、言いにくそうにしている。

 何だ?そんなに言いにくいような事なのか?

 たしかにあの勇者が死んだのは悲しむべき事だが、シルヴィアとエルダムに直接の面識は無かったはずだ。

 エルダムが勇者として現役だったのは20年ほど前までで、それからは半分引退したようなものだった。そして、シルヴィアが宰相になったのは10年ほど前だ。城で会う事はなかったはずだが。


「朝食中、喉に食事を詰まらせて窒息したようです」

「何だって?どうも最近、耳の調子が良くないようだ。私には喉に食事を詰まらせたと聞こえたのだが」

「ええ、正しいですよ。そう言いましたから」


 私はしばらく固まった。

 それはそうだろう、何せあの勇者が喉を詰まらせて窒息死したのだから。

 約30年前の大戦で大きな手柄をたてたあの勇者だ。

 私もまだ幼かったが、憧れたものだ。

 そんな全国民から慕われ、憧れられている勇者の死因が窒息死って。


「シルヴィア…」

「はい何でしょうか、ルドルフ」

「この事はどこまで知られている?」

「陛下と私、それと勇者様のご家族までです」


 こんな事が国民に知れ渡れば、大変な事になる。

 国民は勇者という存在に憧れているのだから。


「勇者は病死した事にする。窒息死した事は絶対に漏らしてはダメだ。彼の家族にも箝口令を敷け」

「承知しました」

「それと、新しい勇者を探し出せ」

「もう準備は出来ております」


 今までは、勇者がいると国内外に宣伝する事で、戦争などもここ30年は起きなかった。

 勇者が死んでしまった今、どうなるかは分からない。

 帝国とは不可侵協定を結んでいるから大丈夫だとは思うが……


 ああ、これから忙しくなるなぁ。


第2話は4月11日に投稿します。


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