宴
「すごーい!」
「カッコいー!!」
「こっちに来てー!」
『我の良さに気づくとは、なかなか見所がある奴らだな!』
ノワールは今子供達に大人気だ。
小さくなった後、仲良くなるために村人達の方へ飛んで行った。
そこでその姿に興味を持った子供達と遊んでいる。
俺達は今、その場で宴をしている。
封印を守る役目が終わったため、村人達は大層喜んだ。そして住民の何人かが宴会セットを持って来て、あれよあれよと宴会が始まった。
しかし宴会といっても食べ物がかき氷オンリーだ。
さすが雪女、雪男といったところか。
さっきから頭がキーンとしっぱなしなんだよ。
封印を手なづけた史上最強の魔王としてフローリアの村の住民達は引くぐらい俺を崇め奉るようになった。
「あの…どうか頭を上げてください!」
「それは出来ません!貴方様は私達を救って下さっただけでなく、厄災様の心すらお救いになられた!ここまでの勇姿を拝見し、敬うなとは殺生なことですぞ!!」
今俺の前で地面に刺さるぐらい土下座している人は、村の村長らしい。かなり年を取っていると思う。
フローリアは氷があれば死ぬことはないと言っていたが、やはり老いには勝てないらしい。
それでも人間達よりは遥かに長生きらしいが。
「はぁ〜、有難や有難や」
「ゼノン様万歳!」
「これで未来は安泰じゃあ!」
お年を召した方達は本当に神様を見たかのように俺の前で拝み始めるからやめてもらうのに一苦労だよ。
若い雪男達は崇め奉られながらも気さくに話しかけてくれるようになった。かき氷もくれる。
雪男と聞いたからイエティみたいな感じかなと思っていたけど、割とどこにでもいる人間のような見た目をしていた。
若い雪女達からは尋常じゃないくらいモテた。
キャーキャー言いながら取ら囲まれるなんて空想の産物のようなことをまさか自分が体験する日が来るとは思わなかった。
「キャァァァァァ!ゼノン様ー!!」
「こっち向いてー!!」
「付き合ってくださーい!!」
「抱いてー!!」
「ハァハァ……クンカクンカ……ハァハァ…」
やはり女の子にチヤホヤされるのは男の夢だな!この声援を受けるために頑張ったと言っても過言ではないと思えるぐらいに嬉しい。
………最後の2人はヤバイ感じがしたけど。
そして宴の間、フローリアは常に俺の隣をキープしていた。
村人の対応など、隣でいろいろ教えてくれたよ。
女の子達から黄色い声援を受けた時は、人を射殺できるんじゃないかというぐらい睨まれたけど。なんで?
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「ふぅ………」
「お疲れ様です。」
そう言ってフローリアはかき氷をくれた。
………今日で10個目なんだけどな…
俺達は今、宴から少し離れた場所で2人並んで座って休憩している。
ノワールはまだ子供達と戯れてるよ。
「はぁ〜……マジで疲れた。今日一日は過去最高クラスに疲れた。1週間分ぐらい動き回って戦ったっていうのに、まだ昼なんだよな……」
時間の感覚が狂いそうだよ。
吹雪の中を彷徨い、イエティに出会い、抜けた先で桃太郎に会い、未来感半端ない地蔵にミサイル撃たれ自爆され、鯉を見てたら龍に変わり追いかけ回され、富士山よりも高い山を登山し、フローリアに会い、挙げ句の果てに封印されし厄災と戦い仲間になると。
この濃密な出来事が全部、今日の午前中に起きた出来事なんだよな………
「ふふっ。その顔を見るに本当に大変だったようですね。」
フローリアが微笑みながら話しかけてくれる。
ああ……今の笑顔でかなり疲れが飛んでいったよ。
美人の笑顔には回復効果があるっていう噂は本当だったんだな。
「ゼノン様……今日はありがとうございました。今こうして私も、村の人達も笑っていられるのはゼノン様のおかげです。」
といって、こちらに頭を下げた。
う〜ん…そこまで仰々しいことでもないと思うんだけどな。
確かに死にかけたが、仲間の為に命を懸けるのは魔王としての務めだろ。
「俺は当たり前のことをしたまでだよ」
「それでも……嬉しいものは嬉しいのです。出会ったばかりの私を命を懸けて守って下さったことが…… 私は交流は少なかったですが、前魔王という存在を少し見たり仲間から聞いていましたので。」
「あ〜……だからこそだよ。だからこそ、俺は仲間を守れる魔王でありたいんだよ。」
「ゼノン様……」
普通のことを言っただけなんだけどな。なんでそんな感極まってるんだ?そんなに俺クサい台詞でも言った?
その時、フローリアは何かを決心したような表情で口を開いた。
「ゼノン様、1つ目の願いを叶えてくださり、誠にありがとうございます。ですので、これから2つ目の願いを叶えてくださいますか?」
「2つ目?……あ〜…約束したな。いいぞ。男に二言はないよ。」
確かに戦いが始まる前に約束したな。
そんなに難しいお願いは来ないとは思うんだが……
「私の伴侶になって下さい」
……………………………What did she say now?
「あの……もう一回言ってもらってもいい?」
「はい、何度でも言います。私の伴侶になって下さい。」
伴侶ってアレだよね?「人生の伴侶を見つける」とか「将来共に過ごす伴侶を得た」とかいうあの伴侶だよね?
……えええええええええええええええええ!!
「マジで!?伴侶って……あの伴侶だろ!?」
「はい。あの伴侶です。」
「マジで!?」
「マジです。」
マジでか!?そんな素振りなかったけど!?
ていうか俺でいいのか!?いや、勿論嬉しいんだけどさ!?
「そうですか……受けてくださらないのですね……嫁入り前の女性の裸を見たというのに……」
「ぐっ……!」
「裸を見せるのは共に過ごす人だけど決めていましたのに……見ず知らずの魔王様に舐め回すように見られた上に責任もとってもらえずそのまま捨てられるなど………、ひどい……!」
「いや言い方!!わかった!伴侶にするから!だから泣き止んでくれ!」
「私を伴侶に……してくださるのですか……?」
「するから!!ここで宣言します!フローリアはゼノンの伴侶です!」
「わかりました!ありがとうございます!良き伴侶として身の回りのサポートをしていきますのでこれから頑張ります!」
あれ……?涙どこ行った?
えっ?めっちゃ元気になったんだけど。
もしかして俺、騙された?
「いや……本当に俺でいいのか?俺、一応彼女いるぞ?」
「わかってますよ、あの子達でしょ?ゼノン様程の人を好きにならないなんてあり得ませんから。」
ベタ褒めすぎてめっちゃ照れるんですけど!
「それに……あの子達には幸せになってもらいたいですから。でも、譲るつもりはありません。だって私はあの子達のお姉さんですからね♪♪」
こりゃ一本取られたな。
お願いが2つと言われた次点で、この流れが決まっていたのかねぇ。
フローリアの方が、恋愛の駆け引きが上のようだ。
「改めて、俺はゼノンだ。これからよろしくな」
「はい、これからも末永くよろしくお願いしますね、旦那様♪♪」
さて………帰ったら何て説明しようかな?
フローリアだから大丈夫かな?
俺、殺されないよね?




