氷の城
「はっ?城?なんで目の前に?」
俺は今、目の前で起きた出来事について理解が追いつかない。城に近づいてないことに気づいた時、霧が覆ったと思ったら景色が変わり、目の前に城。
うん……考えても全然分かんないよね……
「いや、マジで何が起きたんだ?誰か教えてくれない?」
周りには誰も答えてくれる人はいないが、誰かに聞きたくもなるよ。
①城遠いな〜
↓
②アレ?近づいてなくね?
↓
③うわっ、霧だ!
↓
④目の前に城が!?
うん。自分で言っててもマジで分からん。何をどうしたら何千メートルと離れていた距離がいきなり0になるんだよ。
実は城が幻でしたってオチじゃなくて実際にあったから良かったけどさ……
「ん?幻?」
ここで1つの仮説が思い浮かぶ。
もともとこの山には魔法がかけられていたのではないか?遠巻きにいる人の視覚を誤魔化し、山に入った人の感覚を狂わせるような魔法が。
現に初めてここに辿り着いて上空から辺りを見回した時、山の裏側だったのかもしれないが城を視認することは出来なかった。
だが雪崩に巻き込まれたり龍に乗ってドライブしたりしたけど、流石に山の裏側までは行ってないと思う。
何故ならこの土地は見渡すだけでも地平線が見えないから。
北海道よりも広いんじゃないかと思う。
そして山自体もバカでかいから裏側まで回るのに2日はかかるんじゃないかな?それを1日も経ってないのにそこまでは行けないだろう。
そしてこの山は特殊な乱気流が囲っていた。もし、この乱気流が全てをややこしくしているとしたら……
ここからは推測だが、この城は一定の距離内に近づかないと視認出来ないようになっている。
さらに山の中は認識阻害系のスキルがかけられていたんだろう。ある種の幻覚みたいなものだな。
仕組みはよく分からないが俺は山に入った瞬間もう既に目的地には到着してたのだろう。
後は距離が近づいてないなどの情報を読み解いて、自分が幻影を見せられていると気づいた時、本当の現実に戻って来られるという……
まぁこれはあくまで推測なのだが、もしこれが本当なら気づかなければ俺は延々と幻影の中を彷徨うことになっていたんじゃないかな?
「……俺、気づけてよかった」
心から安堵するばかりである。
例え推測だが、多分間違ってないと思う。そうとしか考えられないし……
それならどこまでが嘘でどこまでが本当なのか?標高は嘘なのか?城の本当の位置はどこなんだ?そもそもこの山自体も嘘だったのか?
考えても霧がない。だからこそ本当に恐ろしい現象であると思う。視覚できる情報が全て嘘であり、頭の中で気づいた時全てが統合されるなんて……
「これは気を引き締めて城に挑まなければならないな」
これほどまでに複雑な現象によって守り固められているのだ。中にはよっぽど見られたくないものか、もしくはよっぽどの使い手が住んでいるかの2択だな。
俺は出来れば残り5つの呪いの道具が見つかればいいな〜と思っている。めっちゃありそうじゃない?
それとまだ見ぬお宝とかもありそうじゃない?ここは未踏の土地だろ?
ってことはこの城を俺が初めて見つけたってことだ。
以上の結果を元に導き出される答えは1つ!
フローリアを探しつつ、呪いの道具を探しつつ、お宝を見つけて、危険な魔物に見つからないように脱出することだ!!
……4つだな。
まぁ、そういうことだ。目的は決まったし、後は俺の心意気一つだ。
もうそろそろびっくりしすぎてテンパりまくっている俺の脳も回復するだろう。こんな状態で突っ込んでいったらロクな判断出来ないし。
というわけでもう少し休憩してから、この城に入らせてもらおうか。
決して怖いわけじゃないよ?俺は魔王だぜ?ほら言うだろ?敵を騙すにはまずは味方からって。
……今全く関係ないか。
「にしても、近くで見たら人一倍大きく感じるな」
ずっと思ってたけど大きすぎない?下手したら魔王城より大きいぜ?そんなに部屋使うの?魔王城でさえ3、4階は物置になってるというのに。
「よし、そろそろ現実だと認識できてきたぞ。これで本調子だ。決して入るのが怖かったわけではない。うん。」
誰もいないのにとりあえず言い訳をしてから、氷の扉のドアに手をかけた。
さぁ、一体何が俺を待っているかな?
「お邪魔します!!」
不思議溢れる氷の城の探索スタートだ!
俺は力一杯扉を開く。そして始めに見たものは………
真正面から一直線に俺に向かって飛んでくる氷柱だった。
「あっぶねぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」
全速力で体を横に倒すことで氷柱を避けることに成功。氷柱はそのまま真っ直ぐ外に飛んで行った。
「あっぶねぇぇ……、ちょっと休憩してからでよかった〜……。疲れたまま突貫してたら初撃で蜂の巣だったわ。」
まさか扉開けてすぐトラップがあるとはな……
でもこれで確信した。この城はここに普通に建てられた訳ではない。何かを守っているのだ。
その何かまでは分からないが、扉開けてすぐトラップなんて普通の城じゃありえない。魔王城よりも防衛力高いんじゃない?
「まぁ何を守っているかという答えには、この城を探索し終えた後に辿り着いてるだろう。ただ問題は…」
この城に絶対様々なトラップが仕掛けられているってことだ。入り口でアレなんだ。絶対に城中にあると思う。
果たして俺は無事死ぬことなくこの城の中を探索できるのだろうか?
「レベル上げていてよかった……。多少のトラップなら当たっても大丈夫だと思うし、ここに来て素早さが役に立つからな。」
さっきも躱せたのはレベルのおかげだと思う。扉を開け、飛んできた氷柱を視認。数と速さを把握し、避ける方向を選んで体を動かす。
うん。なんかの達人見たいだな。説明だけ聞いてりゃめちゃくちゃ強そうじゃん。
そしてこれを当たり前に出来るようになっていた俺自身にもびっくりだわ。
これなら余裕なんじゃね?俺強いんじゃね?
「ふっ、俺が恐れるようなことなんて何一つ……『ガシャン!』……嘘です調子乗りましたごめんなさい」
俺が歩き出そうとした瞬間に氷で出来たようなギロチンが俺の目の前に落ちてきた。それはもう鼻先が掠るぐらいスレスレに。
後もう少し前に出てたら魔王の輪切りの完成だった。
だが、おかげで慢心が打ち砕かれたよ。ここで帰っちゃダメかな?ダメだよね?もう泣きそうなんだけど俺。
「はぁ〜〜……、今のはマジで危なかったし転生してから久しぶりに死んだと思ったよ……」
あの不意打ちギロチンは映えある『俺、死にかけたよランキングNO.1』受賞だね。おめでとう。
「まさかの入り口でテンションだだ下がりだよ……入り口でコレなら内部どうなるんだ?」
はぁ〜〜……と今日何度目になるかわからない溜息をつきながら、俺は再び動き出した。




