一難去ってまた一難
「もう元通りになっちまったよ……」
地蔵が爆発したことよりも一瞬で何事も無かったかのように元通りになる地形の方がよっぽど怖いわ……
なんだよ氷が生えてくるって。そんなのアリかよ。
俺は今目の前で起きた漫画みたいな出来事に、非常にツッコミたい精神にかられている。
しかしここでツッコんではダメだ。何か負けた気がする。ここは未知の土地だ。多分これからも漫画みたいな出来事が起きるのだろう。
「はぁ……、とりあえず敵は倒したことだし先に進むか。」
ここにきた目的は土地の調査ではない。仲間を探し出すためだ。こんな場所で長時間油を売っているわけにはいかない。
俺は再びシューズを作り出し、先に進もうとしたところ……
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……
何処からか音が鳴っている気がする。
「なんだ?また敵襲か?もう遠慮したいんだが……」
しかし辺りを見回すが敵の気配は無い。にもかかわらず音はだんだんと大きく近づいてくる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……
音がかなり大きくなった時、俺の視界はついにそれを捉えた。
「おいおい、嘘だろ……」
一難去ってまた一難とはまさにこのことであろう。
地蔵が放ったレーザーによって撃ち抜かれた山が崩れ、雪崩となって俺の元にやってきたのだ。
しかも避けることなど不可能な程の広さや高さとなって。
「さっきからこんなことばっかりじゃねーか!!」
そして俺はそのまま雪崩に呑まれた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ぶはっ!」
あぶねぇ…、死んだかと思った……!
雪崩に呑み込まれる瞬間、黒紋印を全力で全身に纏って怪我をしないようにした。
そのおかげで凍傷になることもなく、切り傷や打撲などの最小限の怪我で済んだ。
本当黒紋印には感謝だな。マジで万能スキルだよ。
攻守なんでもござれって感じだな。
冷えた体温はファイアで少しずつ戻していくとして…
「一体ここは何処なんだ?」
かなり遠くまで押し流されたらしい。
さっきまで立っていたところが氷の草原だとしたら、今いる場所は振り出しに戻ったとでも言ったらいいのだろうか?また桃太郎が流れてきそうな川が見える。
しかし今回の違う点はこの川は幅が結構広く、そして何よりも目の前には高さ15メートルほどの崖があり、そこから滝が流れている。
こんな全てが凍る土地に滝だぜ?普通はありえない。
しかし目を奪われる。氷で出来たような崖から滝が流れ、水と氷に太陽が反射し虹のようなものが出ている。
空にはオーロラも出ているため、オーロラと虹を両方同時に見れるという、現実世界ではまずありえない現象を今俺は目にしている。
「うわ、凄え……」
こんな幻想的な景色普通なら崇める事出来ないな。
これは雪崩に感謝した方がいいのか?
それとも日頃の行いが良かったからか?
とにかく俺へのプレゼントと捉えていいかな!
疲れた心が徐々に癒されていく感じがする。俺ここに別荘でも作ろうかな?こんな景色毎日見れたらそれはもうバリバリ頑張れるってもんよ!
そしてこんな景色見ながら彼女達とイチャイチャできたら最高だよな〜〜。幻想的な夜にあんなことやこんなことを……
……はっ!!あぶねぇ……
ちょっと自分の世界にトリップしてたよ。もう少しで帰ってこれなくなるところだった。
それにそういう行為はもっと信頼を得て、お互いの合意があって初めて成立するもんだ。俺だけがつがつして向こうにその気がなかったら好感度大幅ダウン&振られるというバットエンドが待っているからな。
もしそんな未来が訪れてみろ。俺は間違いなく視界に入る全てのものを破壊し尽くした後、童貞茸を食べて自死するね。
だからそんなバットエンドを全力回避する為に俺は全力で彼女達を愛でに愛でる!!
来たる時までゼノンのゼノンにはステイしてもらおう。お前の出番はまだまだ先だ。
おっと…、綺麗な景色の話から何故か俺の相棒の話になってしまった。
で、何を考えてたんだっけ?これからどうするか考えていたんだっけ?
「ん?」
その時俺の横に流れる川から音が鳴った。
まさかまた桃太郎が流れて来たわけじゃないよな?
俺の予想は大きく外れ、そこにいたのは泳いでいる魚だった。
「こんな冷たい川に魚?っていうかこれは鯉か?」
なんかどこかで見たことある模様だなと思ったけど、確かこの模様は鯉だったはずだ。
釣りに行った時とか、池の水を抜くような番組で何回も見たことがある独特の赤色の模様だ。基本は琵琶湖以外外来種と聞いたんだが、魔界の鯉はどうなんだろうな?在来種かな?
しかしデカすぎないか?俺の知ってる鯉が30〜80センチぐらいだとすると、この鯉は軽く150センチぐらいはあるぞ?小、中学生よりも大きいんじゃないか?
鯉の大きさに驚いていると滝に向かって一直線に泳ぎ始めた。それに続くようにどこから現れたのか10匹以上の鯉が滝に向かって泳いで行った。
うおっ!?こいつらどこから出て来たんだ?川下の方から泳いできたのか?それよりも……
「鯉の滝登りか〜!!確か古代中国の故事を元に日本で読み聞かされたり、絵にして語り継がれたんだっけ?それにしても本物の滝登りは初めて見たな!!」
言い伝えをでは登竜門の故事が元になって、昇りきった鯉は最後に竜になるとされていた筈だ。
それを日本人が縁起が良いとして真っ直ぐ育つようにと意味付けをして鯉のぼりを開発したんだっけな。子供の頃はよく飾っていたよ。
そんな縁起の良い伝承をまさかこの目で拝める日が来るとは思ってもいなかったよ。だからこそあの鯉達を応援したくもなる。
応援し始めて数分、最初に登り始めた鯉が遂に15メートル程ある滝を登りきったのだ。
さっき初めてあった鯉だが、長年連れ添ったような感動がそこにはあった。
「よっしゃあぁ!!さすが!!」
やはり何かに熱中するということはいいことだな。
年甲斐もなく興奮してしまったよ。まだ20歳だけど。
それに虹をバックに飛沫を上げながら飛び跳ねる鯉って絵になるよね。スマホがあったら連写して待ち受けにしてたわ。
「ん?どうしたんだ?」
すると飛び跳ねた鯉に異変が起きた。
重力によって下に落ちてくることはなく、そのまま上昇する。そして体がピクリと動いたかと思うと、どんどんと細長くなっていく。
髭が生え、腕が生え、足が生え、色が変わり、遂には体長50メートル程の日本漫画昔話の主題歌に出てくるような緑色の龍になった。
[昇り龍]
昇り鯉が滝を昇りきった姿。昇りきった鯉は空を支配する龍となる。気性は荒め。食べた者はいないため、味は分からない。
その龍がこちらに狙いを定め、高らかに咆哮した。
「……クソッタレぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」
俺とお前は応援する、されるの関係じゃなかったのか!?
俺は本日2度目の闘争準備を始めた。




