閑話 ネアとイチャイチャ
「早く行くっすよ!!」
「はいはい」
俺は今、ネアに急かされている。
一体何に急かされているのかって?
走って秋景の森に行くためだよ。
今日はネアと2人で過ごす予定だ。そこでネアに今日は何がしたい?と聞いたところ、『ゼノン様と一緒に走りたいっす!!』という答えが帰ってきた。
まぁ、走るぐらい大丈夫か、と思っていた俺がバカだった。
俺はこの魔王城近辺を走るだけだと思っていたのだが、
「走って秋景の森まで行きましょう!」
「魔法の扉使えばすぐだぞ?」
「走って行く過程に意味があるっすよ!」
「でもここから秋景の森まで距離があるから扉を設置したんじゃなかったっけ?ここからだと大体何キロぐらい?」
「50キロぐらいっす!!」
「バカなのか?」
というわけで現在デートという名の50キロランニング中だよ………簡単に返事するんじゃなかった……
「ほらゼノン様!風が気持ちいいっすよ!」
「確かに気持ちいいが、もう少しペース落とさない?今、かなりのペースで走ってるぞ?」
「日帰りなので急いで行くっすよ!目指せ1時間以内っす!!」
「コラ待て!スピードを上げるな!」
ステータスが上がっているおかげでそう簡単には疲れない。
でも俺の中で走るという行為がめんどくさい認定されているので謎の心労が溜まっていく。
ていうかネアめちゃくちゃ早いな。俺のスピードでも追いつくのが難しいぞ。現実世界だったら間違いなくギネス記録だな。
そのまま俺達は休憩………を挟むことなく50キロぶっ通しで走り続け、ようやく色とりどりの木々が立ち並ぶ秋景の森の入り口までやって来た。
「はぁ……やっと着いたか……」
「お疲れ様っす!」
「それにしても……森の入り口はこうなっているんだな。初めて見たよ」
「そうなんすよ!綺麗でしょ!」
「ああ、綺麗だ」
一面草原だったところに、急に色とりどりの木々が立ち並んでいる。
どちらかというと場違いという言葉が浮かぶが、それでも緑と赤や黄色のコントラストがとても綺麗だ。
「じゃあ行くっすよ、ゼノン様!」
「行くって何処にだ?」
「私の特等席っす!」
そしてそのまま手を引かれて森の中に入っていった。
おお、ネアは積極的だな。ごく自然に手を繋がれたからこういうことに慣れているのかな?
「………/////」
と思ったけど後ろからでもわかるぐらい耳まで顔が真っ赤だ。俺もこんなウブな時期があったな〜……
嘘ですごめんなさい。割と俺も手を繋がれていっぱいいっぱいです……
だが今の俺は今までの俺とは違うのだよ。
心に余裕が出来たのだよ。……ほんの少しだけ。
「ネアの手は綺麗だな。まるでお人形さんみたいだ」
女性が喜ぶ秘訣その1 褒める
褒められて嬉しくない女性はいない。だがあからさまな褒め言葉は厳禁だ。あくまでもさりげなく……
ほら、そのおかげで真っ赤な顔をしたネアがこっちを向いて……
そのまま俺の腹にタックルした。
「げふっ!」
「バカなこと言ってないでさっさと行くっすよ////!」
照れながら攻撃してきた……
照れて止まるか、攻撃してくるかどっちかだと思っていたけど、まさか両方とは……
俺は逃げるように走って行くネアの背中を追いかけた。
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「ついたっす!」
「ここは………」
そこを表現するならば、圧巻の一言に尽きる。
色とりどりの木々が生い茂る中を抜けた先には少し開けた河辺に辿り着いた。
そして俺の目の前には滝が流れている。
「どうっすか?ここは偶々私が見つけた私しか知らないベストスポットっす!」
「ああ。確かにこれは絶景だな。これなら50キロ走った甲斐があったってもんだ」
「えっへんっす!!」
俺は滝なんてテレビで見たことしかなかったから、より壮大に感じる。
そしてみな口々に言っていた力をもらえるっていう表現も強ち間違ってない。
「確かにここにいれば力をもらえる気がするわ」
「そうでしょう!でもまだこれだけじゃないっす!もっといい特等席があるっすよ!」
そうして手を引かれて案内されたのは滝の裏側だった。そこにはポツンと空洞があり、人が2人入るには十分な大きさだ。
「ここからならより綺麗に見えるっす!」
「おおっ……!」
滝の裏側から見ると、森の木々の色も一緒に見えるので、まるで巻きに色がついたようだった。
「じゃあゼノン様、ここに座るっす!あっ、もう少し足を開いて座ってくださいっす!」
半強制的に座らされた。しかも座り方も決まっている。なんだ?決まった座り方しないと閉じ込められるとか?
と思っていたら、足の隙間にネアがすっぽりとはまった。
「ここが私の特等席っす/////!」
ネアは小さい。だからこそ俺にもたれかかるようにして座っても邪魔にはならない。抱えられそうなちょうどいい大きさだ。
だがこの態勢はヤバイ!感触が直に伝わってくる。俺のムスコがムスコしそうで怖い!!
平常心……平常心……平常心!!
「ゼノン様、今日は付き合ってくれてありがとうっす」
「どういたしまして。楽しめてるか?」
「はい!ゼノン様と一緒にいるだけで最高っす!」
何この可愛い生物。
抱きしめていい?抱きしめていいよね?
なんたって俺の彼女なんだからね!
もたれかかるネアをそのまま後ろから抱きしめるように手を前に回した。
「えっ!?ゼノン様/////!?」
「別にいいだろう?彼女なんだから」
「うぅ……/////、はいっす……/////」
本当にみんな俺にはもったいないくらいの彼女だよ。
何があっても守っていかないとな。
俺達はそのままの態勢で滝の裏でのロマンチックなひと時を過ごした。
「また走って帰るっすよ!」
「もう勘弁してくれ……」
帰りはまた50キロランニングだったが……




