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side フィリア

私は生まれた時から無気力だった。



私達ドライアドは生まれた時から植物を生やすことができたため、自分に適した寝床を探し、食べ物は自分で生み出すことができるので、何もせずとも生きていけた。



その中でも私は優れていた。



ほかの子達よりも成長させられるスピードが速かったし、得られる食べ物も多かった。


さらに敵が襲ってきても植物で撃退できるから身の安全もバッチリだった。


それ故にどれだけのんびりしても満足した生活ができるから話し方ものんびりになった。




ある時、魔王と名乗る男が私の元にやって来た。




その男は何かいろいろ話してたが私にはどうでもよかった。どこにいても安心した生活ができるから。



そしてその男はもっと良い生活ができると言ったからとりあえずついていくことにした。





けれど待っていたのは前の生活と程遠い生活だった。





毎日働いたと思ったら大量の食べ物を用意しろと言われたり、少しでもサボったらみんなにバレないように叩かれたりもした。




魔王はただウロウロ珍しいもの探したり、遊びに行っているだけなのに……




そして私は能力の珍しさから四魔天に選ばれた。


それによってよりのんびりする暇が無くなった。



私の唯一の癒しは、他の四魔天やパンドラと話すことだけになった。みんな個性的で私が混じっても誰も文句を言う人がいなかったから居心地が良かった。



でもある日、魔王様の機嫌が悪く、少し食べ物の質が悪いと言う理由でたくさん怒られた。たくさん殴られた。そして食料を作れないお前に意味は無いと言われた。






その時、私の中の何かが切れた。






私は必要無いんだと思った。

植物を生み出す能力が欲しかっただけで私自身が必要だったわけではない……



気づけば私は草原を歩いていた。


ただ夢中にひたすら前に……

魔王城から出来るだけ遠くに……



そしたら森の中で迷子になっていた。


暗かった。怖かった。


それでも歩いた。




すると大きな木にたどり着いた。

とても温かかった。

とても心が落ち着く。

まるで私を迎えてくれているかのように。



ここなら誰も来ない。

誰にも会わなくていい。



必要とされていないなら、ここで一人で過ごそう。



そう思って眠りについた。



時々お腹が空いて起きたりしたが、その度に誰かいるんじゃないかと怖かった。







そして、運命の日が来た。







私はいつも通り寝ていたが今日は誰かに起こされた。


目を開けるとパンドラと見知らぬ男がいた。



私は怖かった。もしかしたら連れ戻しに来たんじゃないかと……


けれどパンドラは私の心配をしてくれた。

あれから300年経っていたらしい。



心配してくれるのはうれしかった。でももうあの場所には戻りたくない。



と、思ったら前魔王は死んだそうだ。そして後ろにいたのは新しい魔王様、ゼノン様と言うらしい。




ゼノン様は一言で言うと変わった人だった。




私の話も最後まで聞いてくれるし、面倒くさそうにしない。親身になって接してくれるし、パンドラも楽しそうにしている。



そして何より不思議な雰囲気がある。

前魔王は刺々しいというかワガママといった感じだったが、ゼノン様は一緒にいて落ち着くというかポカポカするというか……



だから意を決して自分のことを聞いてみた。

拒絶されたら立ち直れない気がしたが、それでも聞かずにはいられなかった。




だけど返ってきたのは正反対の意見だった。





うれしかった……


初めて私自身を必要としてくれた……



その言葉は今まで生きてきた中の言葉よりも、この場所を初めて見つけた時よりも温かかった……



そして 一緒に来いと言ってくれた時、涙が止まらなくなった。うれしかった……




そして私は初めて……






恋をした。







ずっとこの人と一緒にいたいと思った。

我ながらチョロいとも思うが、仕方がないとも思う。



きっとゼノン様はモテると思う。

ライバルは多そうだ。パンドラもそうだろう。



だから愛想をつかされないようにしよう。


ずっとこの気持ちを忘れないようにしよう。


ずっと養ってもらおう。


たくさん構ってもらおう。



今まで外に出たくないと思っていたのが嘘のようだ。


この人のために頑張りたいと思うようになるなんて初めての経験だ。



だからこれからは過ぎた300年分を取り戻せるようこの人のそばで過ごそう






こうして私の本当の人生が始まった……






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