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フィリア

すっげぇな………


広大な草原にそびえ立つ一本の木。


なんか迫力があるというか、神々しいというか…

日本にあった屋久杉が霞むぐらい存在感がある。



「うわぁ…綺麗ですね……」



パンドラも驚きのあまり全然喋らなくなった。



さて、確かに人がいそうな穴が木に開いているが、覗くのが怖いな……


もし中に凶暴な魔物が入っていた場合、俺は即アウトだ。なんかボスが登場しそうな雰囲気かもしだしてるもん。


覚悟を決め恐る恐るのぞいてみると、中で一人の女の子が丸まって眠っていた。



緑色の髪の毛が肩まで伸びており、子供みたいなあどけなさが残った顔をしているな。身長は160センチぐらいか。



ってことは、これがフィリアかな?



「やっと見つけました!!この子がフィリアです!」



フィリアだったようだ。

いや〜、無事に見つかってよかったよかった。



「コラ、フィリア起きなさい!!300年もの間なにしていたのですか!?」



でもそんなに揺らさないほうがいいぞ?

頭取れそうな勢いだから…



「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ……」



しばらくするとフィリアの目が開き、気持ちよさそうに伸びをしてから俺たちの方に顔を向け、穴の中からのっそりと出てきた。



「おはよう〜〜〜〜、パンドラ〜〜〜〜。」


「おはようではありません!?心配したんですよ!?どのくらい行方不明になってたとおもってるんですか!?」



「ん〜〜〜?3年ぐらい〜〜〜〜〜〜?」



「300年です!!!!本当にあなたはいつもいつも………」




うん……まぁ、なんだ……

思ってたより10倍マイペースな奴だった……

話し方もすごくのんびりだし……




「パンドラ〜〜〜〜、そうイライラしちゃ〜〜〜〜〜ダメだよ〜〜〜〜?」



「誰のせいだと思ってるんですか!!??」



「ごめんごめん〜〜〜〜。それで〜〜〜〜そっちの人は〜〜〜〜誰〜〜〜〜?」



「ああ、紹介が遅れたな。俺は魔王ゼノン。新しい魔王だよ。よろしくな、フィリア。」



「よろしく〜〜〜〜、ゼノン様〜〜〜〜。」



「もう少し敬いなさい!!!」



何というかパンドラが親みたいに見えるな。

きっと今までもこうだったんだろう。



さて、本題に入るか。



「フィリアはこんなところで何してたんだ?帰れなくなってたのか?」



「うん〜〜〜〜。変な森に入って〜〜〜〜、帰れなくなって〜〜〜〜、ここにたどり着いて〜〜〜〜、どうしよっかな〜と考えてたら〜〜〜〜、良いお昼寝スポット見つけたから〜〜〜〜、ずっと〜〜〜〜、ここで寝てたの〜〜〜〜〜〜。」



なんとも聞きづらいな…

まぁ、癖だから仕方ないが……



………うん? ずっと?




「もしかして迷ってからずっとここで寝てたのか?」


「うん〜〜〜〜。ずっと〜〜〜〜。」


「マジか!!300年寝てたのか!?」


「そうみたいだね〜〜〜〜〜〜。」




これは思ってたよりヤバイ奴だ……

のんびり屋で怠け者って聞いていたが、これそんなレベルじゃねーだろ!!



「ゼノン様、多分ですけどよっぽどここが気に入ったのでしょう……彼女はドライアドですのでこの木が落ち着くのだと思います。」



ドライアドってゲームでよく見るあれか?

木の精霊みたいな……確かに髪の毛緑色だし、それっぽい雰囲気があることはあるんだが……


なんか残念感が強いというか……




「あ〜〜〜〜、今失礼なこと〜〜〜〜考えたでしょ〜〜〜〜?」




だからなんでわかるんだよ!?

なんなの!?俺の思考ダダ漏れてんの!?



「あっ…ああ、すまない……」


「やっぱり〜〜〜〜〜〜。私も〜〜〜〜やるときは〜〜〜〜やるんだよ〜〜〜〜?見てて〜〜〜〜?

えいっ!」




するとフィリアの足元からニョキニョキと植物が生えてきた。



「これが彼女の力です。彼女はあらゆる場所から植物を生やすことができます。また、成長を促進させることもできるようです。」




ほとんど寝てるところには納得だが、それを差し引いてもすごい能力だな。フィリアがいれば魔王城で家庭菜園ができるじゃないか。野菜食べ放題だ。



なんとしてもフィリアを連れて帰りたいが、そのために環境をどうにかしないとな。


フィリアは成長促進できるんだったら、俺がこの木みたいな木を生やすことができたら、それを促進することで ここのような感じにできるんじゃないか?



そんな木を生やすような便利なスキルあるか〜?

一応この木を鑑定して見るけども……



[生命の木]

大地のエネルギーを吸い取り、どこまでも成長するとされている。エネルギーに満ち溢れているためとても過ごしやすい環境を作り出す。



やっぱりすごい木だったようだ。



「あの〜〜〜〜、ゼノン様〜〜〜〜?」


「ん? どうした?」


「ゼノン様は〜〜〜〜、私のこと〜〜〜〜、面倒くさいと〜〜〜〜、思わないのですか〜〜〜〜?」


「面倒くさい? なんでだ?」


「私は〜〜〜〜、トロいって言われるし〜〜〜〜、判断が遅いから〜〜〜〜、周りに誰も〜〜いてくれなくなるんですよ〜〜〜〜。いつもいてくれたのは〜〜パンドラと〜〜ほかの四魔天の子たちだけですし〜〜魔王様にも〜〜〜〜邪魔だって〜〜言われたので〜〜……」




そう言ってフィリアは悲しそうな顔をした。



どんなに生きていても、のんびりした性格でも、やっぱりこの子は年頃の女の子だな。


誰だってそうだ。煙たがられたり、邪魔扱いされたら誰だって傷つくんだ。


とりあえず前魔王をおもいっきり殴りたい。意味わからん死に方した奴が何を女の子に邪魔なんて言ってんだ。



俺がここでかけてやれる言葉は……




「俺はフィリアが面倒くさいなんて思ったことは一度もないぞ?」


「えっ?」


「確かにのんびりしているが、俺はそれを人それぞれの個性だと思う。」


「個…性?」


「ああ、個性だ。集団になればいろんな個性的な奴がいるだろう。どんなに面倒くさいと思われても、そいつらにはそいつらなりの良いところがたくさんあるんだ。」


「あっ……」



「人の悪いところ一つ見たところで、その人の評価を決めて良いはずがない!その人にはその人の良さがたくさんあるんだ!それを探そうとせず、評価を決めてしまうような奴は、上に立つ器ではない!」



「あっ…ああ……」



「俺は前魔王とは違う。俺は魔王ゼノンだ。お前はのんびりかもしれないが、それ以上に優しいじゃないか。それ以外に良いところはまだまだある。俺はそれを見つけていきたい。」




俺はフィリアに手を差し出した。




「俺は魔王としてはまだまだ未熟だ。だが、俺は絶対に仲間は見捨てない。だからフィリア、俺と一緒に来い!!みんなでより良くしていこう!」



「本当に………私が一緒で…よろしいのですか…?」


「ああ、勿論だ。」



「っ………!私はっ……これからも…何があろうとゼノン様と生涯共に歩んでいくことを……誓います!ですので…これからよろしくお願いしますね、ゼノン様♪♪」



フィリアはそう言って俺に抱きつき、胸元で泣いた。




こうして、四魔天のフィリアが仲間になった。




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