物語の始まり
「知らない天井だ。」
ただ言ってみたかっただけだ。冗談はさておき、ここはどこだろうか?洞窟のような場所だ。薄暗く狭い、とても不気味だ。後ろは行き止まりになっていて自分一人しかいない。
「よく思い出せないけど、と……とにかく、助かったんだな。良かった。」
そう言って和也は立ち上がった。
「うっ……」
プチッと足の裏に不快な感触、そこには原型をとどめていない生物の死骸があった。その死骸の飛び出た目玉を踏んでしまったらしい。よく見ると様々な生物の死骸が通路全体に散らばっていた。多くは魔物だが、たまに人の死骸があった。和也ははいてしまった。ツンとする独特の匂いに顔をしかめる。
和也は通路を進んだ。通路は複雑で障害物だらけで幅は狭い。道は曲がりくねっており、歩き難い。
そうやってどれくらい歩いただろうか。
すると通路が突然広くなった。今までの通路と大きさは比較にならない。複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に三十メートルはある。狭い所でも十メートルはあるのだから相当な大きさである。歩き難くはあるが、隠れる場所も豊富にあり、和也は隠れながら進んで行った。
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どれくらいそうやって歩いていただろうか……数分か、数時間か…。
和也にはわからない。なぜならそこには太陽は見えず、時間がわからないからだ。
「あ……あれはなんだ!」
まっすぐ進んだ先に明かりが見えた。
和也はそろりそろりとその場所にむかう。
「え……」
そこには巨大な魔法陣があった。
和也はその魔法陣から離れようとする。だが、遅かった。
さっき通った通路は壁になっており、戻れない。
突如、魔法陣が光り始め、その部屋を光で埋め尽くした。
光が収まり、元の明るさに戻る頃にはそこに和也の姿はなかった。