ダンジョンへ
異世界に来て1週間がたった。
現在、和也は訓練の休憩時間を利用して城の図書館にいる。手には"ダンジョン入門講座初級編"という本があった。
なぜ、このような本を読んでいるのか、それは明日ダンジョンへレベル上げに行くことが決まったからだ。特に自分に力がない分、知識と知恵でカバーできないかと勉強をしているのである。
日が傾いて空が真っ赤に染まった頃、和也は夕食を食べるため本を閉じ、部屋にもどった。
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「今日の夕食豪華だな〜」
今日の夕食はいつもより美味しかった。どうしてか食事を持ってきたメイドに聞いてみる。
「最後の晩s……ゲフンゲフン、明日はダンジョンに初めて入るのでお祝いを」
絶対最後の晩餐って言おうとしたでしょ。ステータス低いからってヒドイ。
メイドがいなくなった後、和也はいつもより早くベッドにはいった。
明日は頑張ろう、そう決意して夢の世界へ旅だった。
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「今からダンジョンへ向かう。勇者3人騎士1人でパーティを組んでくれ。」
現在、和也たちはダンジョンの前の広場にいた。
(クラスには40人いたから……一人余っちゃうじゃん。誰か探さないと!)
ボッチにならないために和也は急ぐ。
「光星君パーティにいれてく……「すまないがもう組んでいる。他をあたってくれ。」」
「青山さんパーティに……「ごめんなさい、もう組んじゃったの」」
「秋野さんのパーテ……「ごめんなさい、本当にごめんなさい。もうパーティつくちゃったの。」」
パーティ作れなかった……どうしよう。
「一人余ってしまったのか……よしっお前らこっち来い「Yes sir!」和也君は騎士3人と組むといい。コイツらは優秀だ、安心してパーティを組むといい。」
「あ…ありがとうございます。そしてよろしくお願いします。」
騎士団長がいきなり話かけてきて驚いた。騎士を3人もつけてくれるなんてありがたい。よしっ頑張ろう。
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「よしっ、全員そろったか?今からこのダンジョンに入る。俺についてこい。パーティごとにかたまって順番に入るのだぞ。絶対に生きて帰って来るのだ。」
和也の目の前には巨大な白い門があった。地球で言うフランスの凱旋門に似ている。美しい、そして素晴らしい。
ぞろぞろと門の下をくぐっていく。そこは洞窟だった。
明かりがあるわけではないのに縦横約10メートルの通路がぼんやりと発光していた。
一行は隊列を組みながらぞろぞろとダンジョンを進んでいく。何事もなく順調に進んでいくと広場があった。そこで一行は急に止まった。よく前を見ると半透明で水色のゼリー状のものがあった。中に浮かぶ赤く光る玉が印象的だ。多分核だろう。縦横が1メートルぐらいだろうか、ちょっと大きい。
「よし、正輝達が前に出ろ!交代で前に出てもらう、準備しておけ! あれはスライムという魔物だ。絶対に触るな、核を狙え!冷静に行くんだ!」
光星君は前に向かって走り出す。そして間合いに入ったスライムの核を真っ二つにした。
手にはミスリルソード、正輝はひとふりで複数のスライムを倒している。すごい。
鬼武さんは拳で殴っている。手がスライムによって少しずつ拳が溶けている。痛そうだ。あ、治癒魔法だ。溶けた手を直している。痛くないのだろうか。
青山さんの目の前のにいたスライムの核がいきなり弾けた。青山さんは水を操れるらしい。スキルを使ってスライムのジェル状の部分を操り、核を潰したらしい。
気がつけば敵は全滅していた。やはりこのダンジョンの一回層の敵ではチートスペックな勇者たちにとって弱すぎたらしい。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。
そして階層にたどり着いた。
「よしっここから先は一種類の魔物だけでなく複数の種類の魔物が連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はあと2層進んで引き返す。気を抜くなよ!」
騎士団長の声にみんなはより気合いを入れた。
ここまで和也はほとんど戦っていない。他のみんなが強すぎて敵がまわってこないのだ。一応、一回だけスライムを剣で切って倒した。それだけだ。
光星君が敵を倒し終わったみたいだ。またダンジョンの奥へ進もうとした。
その時みんなの足元に魔法が現れた。そしてその魔法陣の光は増していき……光が消えた頃には誰もいなかった。
その日、この事件は王国を騒がせた。召喚した勇者達と、騎士団長、騎士たちがダンジョンにて消えたと……。