2人の日常【1ー私(1)】
私side
時折思ったりする。このままの生活が続いたとしたら私はこれから起こるべく全てのことについて正気を保っていられるのかと。そして、そんな思いとは反対に明確な答えによって否定されてしまう。
そもそもとしてこれは私が受け入れてしまったがために始まったことだ。だったら私は後輩くんよりも長く正気を保っていないといけない。少なくとも彼の前では正気を失ってはいけない。猫だって最期は誰もいないところで息を引きとうように、私は後輩くんのいないところで私を失うことにする。
これがせめてもの罪滅ぼしになると信じる他ないだろう。
うーん。だめだな。
ソファーにゴロリと寝転んでテレビを眺めていると自然と無心状態に陥ってしまう。すると私が普段抑えていた妄想癖が表層化してしまう。それはよろしくない。
でもだからといって私、やること別にないんだよね。洗濯は後輩くんが来てからは彼の担当になっちゃったし。掃除だって私より後輩くんの方が綺麗にしてくれるんだよなぁ。私の面目ないけど後輩くんは私よりいい奥さんになるね!
ん?あ、後輩くんは男の子だった。忘れてたー。もう、これも後輩くんがなにもしてこないからだよねー。私はてっきり寝込みを襲われちゃうんじゃないかとばかり思っていたのに。うーん?最近の男の子はそういうのしないのかな?よくわかんないね。
っていうか、なんかもうこのテレビ飽きてきたな~。いつまで同じニュース流すのさ。もうそろそろ新しいニュース流してよ。例えば、家族の心温まるストーリーとか?いや、そんなの視聴率取れないもんねぇ。
そうだ!アニメずっと流せばいいんじゃない?だって皆好きなんでしょ?たしか隣のクラスの誰かが言ってたよ。私は全然興味無かったけどあの時はなんとか話を合わせたなぁ。ほんと、めんどくさかった。
と、その時テレビに次の番組の簡単な紹介CMが流れた。
あ、次の番組だ。お笑い番組?へぇ、こんなのやってたんだ。
意外とこれまでテレビを見てこなかったからなんでも新鮮に感じることが多い。なんと言ってもこれまでは毎日バイト三昧だっからなぁ。今となってはこういう何もしない日々がとても幸せである。
んー。そう言えば後輩くん遅いなぁ。
「ねぇー!後輩くーん?洗濯終わったー?」
私はいつも通り大きい声で脱衣所にいる後輩くんに聞こえるように問うた。そして、実は私がいつもこうやって後輩くんが脱衣所にいるときに叫んで聞くのには理由がある。
さて、もうそろそろくるぞ~。
「あと3分でーす!」
来た!後輩くんのすこし裏返ったような掠れたような慣れない叫び声!この声を毎日聞いて笑いを抑えるのが私の新しい日課なのだ。
こういうところが少し可愛くもあり、そしてわたしの決意を鈍らせる原因でもあるから憎たらしい。
私は思考をやめ、返事をすることにした。
「はーい!わかったよー!じゃあ、干す準備して待ってるねー」
さて、準備をしないといけない。
私はいつも通りに例の洗濯物を干す棒のようなものを準備するためにソファーから立ち上がることにした。
そう言えば、まだ料理をしていないことに気づいてしまった。
まぁ、いいか。
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