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語り継がれた話

学校の怪談では

作者: 木。

 学校の怪談では「トイレの花子さん」って有名だよね。

あと、走る人体模型とかひとりでに鳴るピアノとか。瞬きする肖像画は音楽家に多いのかな。

アレ夜中にやってるらしいって聞いた時には「誰が確認してんだろう?」って僕毎回思ってた。口には出さなかったけれど。


 そうそう、そんでさ。今は違うだろうけど、僕が子供ん頃はトイレって校舎と校舎の間に造られてて、校舎を繋ぐ渡り廊下の途中にあったのね。

頑丈な鉄筋コンクリートで、トイレ建物の右側と左側で男女別になってて……二十一世紀の現代日本じゃ信じらんないかも知んないけど、出入口は一つだけで扉なんかなくて開けっ広げで誰でも入れるの。

あ。個室はちゃんとあるよ。壁っていうか衝立(ついたて)みたいに仕切られてるから天井と床はスカスカだったけれどドアも付いてたし。もちろん鍵付き。だから、最低限のプライバシーは守られてたのかな。たぶん大丈夫。……大丈夫?


 話が飛んだ? ゴメンね? でも一応つながってるんだ。

子供ってさ、注意されてもダメな時期ってあるじゃん。そんで口が回って要領がイイ女子グループがいてね。男も女も手当たり次第にターゲットにされて、いつも誰かが、からかわられてた。


 で、そいつらクスクス笑いながらトイレの出入口でごちゃごちゃ固まってて、奥で小用を済ませた僕はトイレから出られなくなったんだ。

少し前に、小さい方のトイレ混んでて使えなくて個室で用を済ませた友だちが、はやし立てられてさ。事情を知ってた僕ら男は苦々しい気持ちだった。

だいたい何で男子トイレをのぞくの? 「のぞいてない。チラッと見えただけ」とか言うならせめて黙っとこうよ。それがエチケットじゃないの? 

僕らが出入口で、ちょっと顔あげただけでチカン呼ばわりして大騒ぎするクセに。


 トイレって小さい音もスゴク響くから、僕は息をひそめてあいつらがいなくなるの待ってたんだ。

そしたら突然「呼ぶ?」「言っちゃう?」ってヒソヒソ声が聞こえてさ。僕ポカンとした。

案の定、


「花子さーん」


って聞こえて来た時は(えー)って思ったよ。

でも、ニヤニヤしながら友だちに絡んでいた時と全く同じ口調とトーンだったからさ。思い出した僕はムカついてきたんだ。

「声小さかったかな」「も一回」「呼んでみよ」ってヒソヒソしながら「せーの」と声を揃えて


「はぁ、なぁ、こぉ、さーん!」


大音声で小馬鹿に呼んでゲラゲラ笑う声がトイレ中に響いてうるさくって……僕はイラッとした。

だからスゲー小っさい声で


「……はぁーぃ……」


 って、返事してやったら悲鳴をあげて逃げてった。後ろ姿しか見てないけど、ちょっとかわいそうだったかな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近はとんと聞きませんねえ。学校の怪談やら七不思議やら。 街の明かりが多くなって夜が怖くなくなったこと。 情報が氾濫する世の中になって、人づてに聞くという想像力を掻き立てる伝達方法が少な…
[一言] 最後、「後から教室に戻ったらさ、『一緒に遊ぼう』って返事があったって騒いでてさ。そんなこと僕言ってないのに」とか続いたら、どうしようかと思いながら読みました。 あの頃は本気でトイレに行くの…
[良い点] 走る人体模型! ありましたね! 花子さん、返事をしたら怖いですよね。
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