「そして新生へ」
読み返してみると、なかなかに1話1話が短いですね・・・。あまり読み応えが無いかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
「妻…ね。神話における太陽と月は、確かに縁故があることが多いけど…私が知っている神話だと、太陽を司る神に迫られ、嫌がる月の女神なんて言うのがあるのですが。そういった関係でよければ。」
「のっけからきついな…オイ。」
「目を覚ませば、いきなり男に婚姻を迫られている状況なのですから、こんな態度にもなるでしょう。ましてや男同士などと…。」
「いやまぁ、そうなんだが。まぁ、同性って部分にゃ対処できるんだがな。」
「対処?」
「あぁ。お前さんの中にある”男”としての性向をニュートラルな状態に持っていく。その上で女性体である”月の女神の器”に融合してもらう。まぁ、どっち道人の魂を女神の器の核とするには部分部分で矯正しなくちゃいけない部分もあったしな。」
「女神の器…ねぇ?先程無から神を作り出すことが出来る程の力はないと言っていた様な気がしたんだが?」
先程の話の中では、確かに"神を0から作り出すこと"が出来る程の力を集める事はすぐには出来ないと言っていたが、どういうことなのだろうか?
「まぁ、神という存在その物を0から作り出す程の力は確かにない。だが、人の魂…その中でも幾度と転生を繰り返し、力を蓄えた魂ならば、下級の神程の力を得ている場合があるんだ。現時点で確認できる中でも最も強い力を秘めた魂がお前さんだったってわけだ。
そして、その魂を力の集合体である神の器に封じる事でただの力に方向性と意思を宿す事になる訳だ。」
ふむ。しかし、単なる力の集合体に意思を宿す為とはいえ、そこまで差があるものなのだろうか?
「あぁ?納得してねぇって顔してんな。…そうだな。お前さんが良く知ってるモノで例えるとするならば自転車と言った所か。全く動いてない状態の自転車を負荷が一番高いギアでこぎ始めるのと、既に加速してある程度スピードに乗っている自転車を負荷が一番高いギアに入れるのと、どちらが楽だ?って話だ。」
成程。要は神の力をただ集める事は簡単でも、神という魂そのものを作り出すには非常に大きな力が必要であるという事か…。おそらく器そのものには女性としての性向は既に加えられているのだろう。
何せ”女神の器”と言っているのだから。
「んで、その器に私という魂を封じ込める上で性向をニュートラルな状態に戻すから、性別なんてものは関係ないってのはまぁ、理解はした。納得はしてないが。
だが、何故そこで私の容姿が関係するのだ?
そもそも器そのものをあんたの好きな様に創っておけば良かったじゃないか。」
そうなのだ。そこが全く解せないのだ。
この神は最初に、私の姿が好みだから舞い上がったと言っていた。
と、言うことはだ。そもそも私自身の容姿など気にせずに自身の好きな様に整形した器に魂を封じ込めればそれで良かった筈なのだ。と思いソルガディンを見やるとどこか気まずそうに目を逸らされた。
「イヤー…そのなんだ?俺自身、力は確かにあるんだ。それこそ他の主神クラスに負けない程度にはな?
だが…その…だな。俺にはセンスが全く無かったんだ…。」
「………」
「………」
「………………」
「いや、何とか言ってくれ…」
そういって無言の応酬の後に若干の落ち込みを見せるソルガディン。
「あー…まぁ、なんだ。俺自身にデザインセンスが全く無かったから、だったらいっその事、生前の姿を月の女神の器に反映させれば良いか。と思って器に適合させる魂を探してたんだ。
そんなところで丁度死に往くお前さんを見つけてな。舞い上がっちまっていたって訳なんだ。」
「成程な。で、私に拒否権はあるのか?」
「すまんが、無い。容姿に目を瞑ったとしても、次にお前さんほどの力を蓄えた魂が現れるのはどれくらい先になるのか全くわからないんだ。少なくとも、100年はまず現れないだろう。だが、説明したように既にこの世界は猶予が無いんだ。このまま放置すれば、いずれ世界に滅びが訪れる。」
「全く以って不愉快な話だな…。まぁ、天涯孤独の身とはいえ、親しい人もいるし、恩のある人もいる世界だ。その世界が滅ぶと言われたら受け入れざるを得ないか…。」
「助かる。」
「で、どうすれば良いんだ?」
「ココから先は楽にしてくれていればいい。逆に、変に緊張されるとこちらもやり辛いからな。今から少しずつ、俺の力を流し込む。それに抵抗しないようにしてくれ。」
そういってソルガディンは私に手をかざした。
額に大きな掌が触れ、そこから暖かな力が流れ込んでくる。その感触を最後に私は意識を失うのであった。
プロローグはこちらで最後となります。次話から創世のお話へ移りたいと思います。
・・・・移れるよね?