理由
(優)「俺は男だよ!ユウキが男の名前で何が悪い!」
(ソ)「いや、間違えた原因は名前より容姿だからな!?」
「は?」
ソルガディンと名乗った自称神の男は呆けた顔とともに固まる。
「だから、私は男だ。お・と・こ。」
こめかみにやっていた手を下ろし、改めてソルガディンに向き直る。
ふと、ソルガディンと名乗った男を見やる。
その体躯は引き締まり、無駄な肉はなく。それで居てがっしりとした骨太な格闘家の様な身体だった。
対して、自分の身体を思い浮かべる。服の上からは、細く華奢に見えるであろう体躯。実際には、服を脱げば幼い頃より野山を駆け、祖父より手ほどきを受けていた弓の修練などにより確りと筋肉はつき、無駄な肉はついていない身体があるのだが。
なるほど。確かに目の前の男と自身の身体を比べてみれば容姿もあいまって女性と勘違いするのも仕方がないことであろう。神と名乗りさえしなければ、それで納得は出来た。
10秒は過ぎただろうか。男は再び口を開く。
「男…だったのか…」
「あぁ、男だ。」
「そ、そうか。平然と返すんだな…。」
「間違われるのは慣れているからな。尤も、神と自称するのであればそのくらい見抜いてほしいものだったが…。」
「すまん。好みの容姿で舞い上がっちまっていた。」
「舞い上がる?」
「あぁ。俺は主神として新たな世界を作るようにと言われて、伴侶となる相手を探していたんだ。少し長くなるが、細かい話をするとだな…」
そうして語られた内容を要約すると、私が過ごしていた世界は、根源より生まれ出でる魂の数が既に飽和状態となっており、これ以上魂を受け入れることが出来ない状態となっている。その為、魂の輪廻の負担をなくす様、新たなる世界を創造することにしたのだそうだ。
ソルガディンは新たなる世界を創世するために、数多ある世界の神々により200年かけて生み出された大きな力を持つ神だという。しかし、新たなる世界の創世をするための力はあっても、その世界をデザインする才能がなく。
しかし、根源より生まれ出でる魂の数はその間にも増え、もはや猶予のない状況となっていた。
再び新たなる神を生み出すためには、数百年の時をかけなくてはならない。しかし、ソルガディンを生み出すために力の弱い神は消滅こそ免れたものの、新たなる神を生み出すために必要な力を出すことは出来ず、力の強い神々もまた、無から生み出す為に必要なだけの力をすぐに集めることは出来ない状態に陥ってしまっていた。
その様な時に、優輝の住んでいた世界の神が一つの提案を行ったそうだ。”自分の世界の強き魂を核として神となせば良い”と。
実際に相応の輪廻を繰り返し、磨きぬかれた魂はいずれ神へと至る。この事は神にとっては常識であり、その魂を核に神を新たに生み出すというのは、ー魂の質にも因るがー新たに神を生み出すより時間・必要な力共に遥かに少ないのだそうだ。
しかしながら、その方法には少々の問題があった。
一つは、その魂の直前の人格が残ってしまうということ。これは、本来であれば輪廻により穢れを祓う段階で、人格も一緒にそぎ落とされるのだが、人格に宿された力も一緒に落ちてしまうため、今回は人格が残ってしまうということ。多少の矯正は出来るが、本来の人格と大幅に違う性格にしようとしてしまうと、魂が崩壊・消滅してしまうということ。
もう一つは、この方法をとる為には神への昇華に堪え得る魂である必要があるということ。堪え得る魂でなくては、やはり崩壊・消滅してしまうとのことだった。
「そうした中で選ばれた魂が私というわけですか…」
「そうだ。」
「で、舞い上がるという事に関しては説明を受けていないんだが?」
「それは…だな。創世を行う為の相方を、自分の伴侶にしたいと思っていてな。なに、これからの永き時を共に過ごすのだ。自分の好みの容姿であることに越したことはない。」
「伴侶…だと?」
「あ…あぁ。俺は太陽を司る神でな。基本プランとしてこの世界と同じように天空に太陽と月が巡り、大地に動植物がその生命を謳歌し、海洋が世界を潤す。そんな世界を作りたいと思っているんだ。しかし、月を司る神が居らず、また、基本的な部分しか考えがまとまってなくてな。月を司る神は俺の妻であってほしく、また、新たなる世界の生命創造も行ってほしいのだ。」
キリが若干悪いですが、一旦きります。