「新たなる段階へ」
今回の投稿で、第一章の一区切りにいたします。
アルフェミアでは幾分かの歳月が過ぎ、世界に息づく生命は大分豊かになった。アルフェミアの世界に放たれた生命たちは順調に成長をし、小型の動物は植物と虫を、中型の動物は果物と小型の動物を。大型の動物は中型の動物を-一部には植物を-糧とし、虫や植物はその屍骸や排泄物を養分として生命の環を形成していた。
ユキによりそれぞれの生命に組み込まれた”環境に合わせて適応する因子”も働いたおかげか、生命は多様化し、彼女の神域である樹海の中には狼や猫、熊や鹿等の地球でも見かける命だけではなく、ユニコーンの様な一本角を額に具えた馬等もいた。
もっとも、神域だけではなく各地に地球では幻想の上で語られるような生命が幾分か見られるようになっていた。
例えば、グリフォンやヒッポグリフといった鷹頭に馬やライオンの胴体を持つ生命や、ヤクルスの様な翼の生えた蛇といった存在もあった。
こういった、幻想上の生命は自然発生したものよりも、ユキが”実際に存在したらどのような生命となるのか”を見たいが為に生み出された者達のほうが多く、前述したグリフォンやヒッポグリフ、ヤクルスといった生命はその際たるものであった。
「大分生命の多様化が進んだみたいだねぇ…僥倖僥倖♪
でも、流石に超大型の生命や強大な力を持つ様な存在は未だ作れないかぁ…。ちょっと残念。」
そう言って、ユキは手に持っていた葡萄を一粒口に運ぶ。
「ん~美味しい♪
此処を神域指定しておいて良かった…果実に虫はつかないし、私の力のおかげで植物も栄養一杯だし♪
水は美味しいし景色は綺麗だし言うこと無しだね!
さて、そろそろ森の中を見てまわるとするかな。」
一頻り果物に舌鼓を打った彼女は、自身の姿を獣の姿へと変える。
その体毛はとても柔らかな青銀の輝きを湛えていた。貌にはクリッとした愛くるしい瞳と貌のサイズと比較すると大き目の三角のとがった耳、耳の先には若干の黒がメッシュのように混じり、尻尾はふさふさで耳と同じように先端が黒くなっている。
そう、今のユキのその姿は狐であった。もっとも、樹海の中を散策するだけであれば獣の姿を態々とる必要などまったく無いのだが、ユキはこの姿でいる事を比較的好んでいた。
確かに、二本の足で歩くよりは早いというのは確かにあるだろう。しかし、それ以上に狐という姿をとるのはユキ自身の”狐が好き”という感情ゆえであろう。
また、ユキには今、ちょっとした目的もあった。
(さて…行きますか。)
そう心の中で言い、ふんすと鼻息を一息つき駆け出す。
樹海の中は不思議と暗くなかった。もちろん湖畔のように開けた場所から比べれば明るくは無いだろう。しかし、木々の間はそれなりに広く取られ、枝葉から漏れる日の光はその大地に息づく草に確りと降り注ぎさながら緑の絨毯の如く柔らかな感触を齎していた。
その柔らかな木漏れ日の中を走り、時折視界に入る他の獣を観察する為、木々に飛び乗ったり、背の高い草むらに隠れたりとするのだが、彼女のその身は青銀の体毛である。容易に見つかり警戒されたり、逃げられたりしてしまう—もっとも、本能の上で襲うほうが危険だと理解しているのか一度も攻撃されたことは無い--のであった。
(うぅ…今日もダメだったか…)
そんな落胆の想いと共に尻尾は垂れ下がり、幾度かの失敗の後に神域の中央にある湖へととぼとぼと歩を進めるのであった。
(はぁ…一度でいいから獣達の親子の長閑な雰囲気をじっくりと眺めたい…)
そう、ユキの目的とは”獣達が親子でのんびりと過ごしている姿をじっくりと眺める”ことであった。
ユキ自身を危険ではないと本能で察知している獣達はもちろんいる。だが、やはりそんな獣達でも親子でいる際は他の存在を警戒するものである。地を這う獣達の家族の団欒の姿は簡単に拝めるものではなかった。
「んな落胆してどうしたんだ?」
唐突に横から聞こえてくる声にユキは反応する。
そう。ソルである。
「別に。普段通りの家族の団欒姿を眺めるのに失敗しただけ。」
「神力使って覗きこみゃいいじゃねぇか。」
「それじゃつまらないじゃないか。」
「よくわかんねぇやつだな。」
そんなやり取りを交わしながら、ユキは人の姿へと戻る。
「確かに神力を使えば、此処からでも覗けるけれど…目の前で親が子をいつくしむ姿を見たいじゃない。」
「全くわかんねぇ…」
「分からないなら分からないでいいさ。それで、何か用でも?」
「あぁ、丁度地球から最後の魂が届いてね。これが結構格の高い魂とかもそろってて…流石にすぐにとは行かないが、下手をしたら数十回の輪廻で下級神へと至れそうな魂も幾つかあったぞ。」
「結構早かったね…。それにしても、下級神かぁ…大分奮発してくれたみたいだね。」
「だな。だが、ソレが逆に扱いに困るもんでもあるんだが…」
「そうだねぇ。唐突に人という集団を放り出すわけには行かないし…あぁ、でも、私達の従僕としてなら神域に住まわせる形で生み出しても良いのかな?」
「確かに目は行き届くかもしれんが…先のない話だな。」
「そうだねぇ。取り敢えずは、それぞれの獣達に幾分かの進化の芽を植え込む様な形でその格の高い魂達を生まれさせてみようか。」
「その辺りは任せる。んで、ついでに頼みたいことがあるんだが…」
「うん?どうしたの?」
「俺にもアルフェミアに神域を創ってくれないか?」
「ソレはかまわないけど、基本ソルが「此処は俺の神域だ」って神力を使って範囲指定して宣言するくらいだよ?」
「あぁ、そっちは分かってる。そうじゃなくてな。その場所に俺好みの生命を作り出してほしいんだ。」
「どんな生命?」
「ドラゴンだ。」
「は?そんな存在作れるほど格の高い魂なんてあったっけ?」
「先程届いた魂の中であれば、いくらか混ざってたと思う。その辺りの選定は任せる。」
「うーん…ドラゴンを生み出すのはかまわないんだけど、数頭生み出すだけでバランス崩しそうなのと、生み出しても繁殖が出来なくて滅びそうだけど…」
「やっぱ無理か?」
「なんとも言えないね。食料をどうするかーとか、繁殖はどうするとかその辺りをクリアしないと生命として生み出すのは難しいかなぁ。
いっそのこと、条件を満たす魂があったら従僕として神域指定した場所に生まれ出る様にしたほうがいいかも?」
「ふむ…」
「理のほう調整してみる?
今言った方法ならすぐは無理でもいずれ生まれ出てくるよ。」
「むぅ…丁度いい機会だと思ったんだがなぁ…。」
「焦らなくても良いんじゃないかな?
穢れの影響を調べる世界や魂を輪廻の為に放り込む世界の凍結も解除して、本格的に始動すれば魔法やダンジョンも導入できるわけだし…そうすれば、もっと色々な存在を作り出せるわけだし。」
「仕方が無い。もう少し待つとするか…」
そう言ってソルは肩を落とし落胆をする。
ソルがドラゴンと言い出したのは、ユキが神域を創りだし、そこでのんびりと過ごしていた時であった。
丁度直前に行っていた地球で手に入れた書物、その中に強大な力を持った生物の代表格として描かれるドラゴンにソルは惹かれ、ユキが神域を創り出した事も相まって自身の神域をいずれ創り出し、其処でドラゴンを飼いたいと思っていたのであった。
「いっその事なんだけどさ、アルフェミアの理を色々といじって、精霊なんて存在を作り出しちゃえば良いんじゃないかな。
私達に代わってある程度の事象をコントロールしてもらって、世界の異変を見てまわる存在として。
ソルが欲しがってるドラゴンって、自身にすら牙を向ける様な獰猛なドラゴンじゃなくて、確りとした理性を持ってソルに仕える様な存在なんでしょ?
だったら、精霊としてドラゴンという存在を生み出すっていう理をアルフェミアに作り出せば良いと思うんだ。」
「むぅ…確かに理性なく、本能に従うままに食らう様な存在よりも、ユキの言うような存在の方が好ましくはあるが…」
「それに、いずれ文明が出来たときにはそれぞれ太陽神や月の女神として人間種の前に姿を現す予定なんだよね?
だったら、理知的な存在の方がソルの使徒として認識され易くて良いんじゃないかな?」
「そう言われると、確かに今焦って生み出すよりも余程良いな。」
「それじゃ、精霊って形でこの世界の事象の一部を管理する存在、創り出す様に理を調整するね。
とりあえずとして作り出すのは風と大地、植物に水。それと火を管理する精霊と、強大な力で世界を崩壊へと導く相手への抑止力としてのドラゴンと…他に何か必要かな?」
「俺が読んだ本だと、闇や光なんて精霊もいたと思ったがどうなんだ?」
「闇は私が、光はソルが直接関係するんだし必要ないでしょう?
管理がめんどくさい何ていうなら精霊作り出すけど…正直太陽の光を調節するのと、後々で魔法の管理するだけなんだから態々作り出す必要ないんじゃない?」
「太陽の光を調節するのは俺の仕事だからダメだな!
だが、魔法の管理は正直面倒だから丸投げしておきたいところだな。」
「あっそ…なら、闇と光も追加しておくよ。」
そんなのほほんとしたやり取りと共にアルフェミアの世界は新たな一歩を踏み出して行くのであった。
人類が出てくるのはどれ位先になることなのか…正直、第二章に構成も一切考えていないので突然人類が出てくるかもしれません。逆に第二章でも出てこないかもしれません。
思いつくままに描いております。
楽しんでいただければ幸いで御座います><




