01話 返らぬ、返事
悲しみは突然やってくる
孤独は突然やってくる
別れは突然やってくる
7月21日日曜午前11:45
「交通事故らしいわよ?」「あらやだ…」「優希君もかわいそうよね…1人だけ」「そうそう…」
近所のお母さん方が公園で集まって話している
話題は恐らく…いや、絶対俺だろう…
「優希君……これからどうするのかしらね。」「さぁ、わからないわ」「でも1人ってわけにも…」「ちょ、ちょっと…来たわよ」
俺が通り過ぎると話すのを止める
あんなにでかい声で話してれば聞こえてるのに
まるで何もなかったかのように他の話しをしだす
「ただいま…」
何も返事は返ってこない
いや…数日前までなら、返ってきた
なのに、今でも癖で言ってしまう…
もう、絶対返ってこないのに…
『今日は優香の誕生日だから、ケーキ買ってくるわね。』
『部活には迎えに行くから、学校で待ってろよ?』
『お兄ちゃんもケーキ待っててね!』
つい先日の会話がまるで今話しているように思いだされる
「そっか…俺、1人だった。」
テーブルの上にコンビニで買ってきた弁当を置き、ソファに座る
太陽の日差しが眩しく、カーテンを閉める
日光が遮られ、暗くなる部屋
テレビを付けても、どれもつまらない…
「………」
自然と涙が出てきた…
涙があふれ、クッションを濡らす
そのクッションは優香が学校で作ったものだった
◆
「…ん」
いつのまにか寝てたのか…
テーブルの上の時計を手に取り、時間を確認する
午後4:30
4時間くらい…寝てたのか…
ん…毛布…?
「お目覚めですか…?」
「え…」
俺の後ろから、誰かの声が聞こえてきた…