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彼女のSOS

作者: WAIai
掲載日:2026/06/24

「またな」


彼女をうちの近くまで送ると、淋しそうに言ってくる。


「離れたくないな」

「しょうがないだろう? 俺だって、本当は、その、離れたくないんだから」


本音を口にすると、繋いでいた手を放す。


「また明日な」

「うん。ありかとうね」


手を振って、名残惜しそうに別れる。

何度も振り返って、彼女がうちに入るまで見送る。


もう空は真っ暗で、時間的には遅い帰宅かもしれなかった。


俺は塾に行かないといけないので、早足で進むと、いきなりスマホが鳴った。


「もしもし?」

「あの!! 私!!」

「どうしたんだ?」


俺は彼女を落ち着かせようと、ゆっくり喋る。

彼女に何があったのかは知らないが、一気に喋ってくる。


「お父さんがうちにいて、何していたんだって、怒ったのよ!! 私、無視しようとしたんだけど、しつこくて。飛び出して来ちゃった」

「お前、今、どこにいるんだ?」

「えっと…スーパーの近く」 

「俺が行くまでじっとしていろ。それと、明るいところにいること。分かった?」

「うん」


スマホを切ると、時間を確認する。

塾が始まるには、まだ時間があった。


彼女を説得してうちに返さないと、と使命に燃える。


俺はダッシュし、彼女の元へ向かう。

また変な奴に声をかけられたら、大変である。


急いでスーパーに辿り着くと、彼女が大人しく入り口付近で待っていた。


「良かった…」


全力ダッシュしたので、はあはあ荒い息を吐く。

彼女の顔は花が咲いたみたいに、ばあっと明るくなる。


「ごめんね。来てくれて、ありがとう」

「おう。お前のためだ。変なことはなかったか?」

「何もなかったわ」

「そうか。良かった」


俺は安堵の息を吐き出すと、胸を撫でて落ち着かせる。


「家に帰るぞ。嫌かもしれないけど、それしかないだろう?」

「絶対に嫌!! お父さん、嫌い」

「でも心配してくれたんだろう? 俺のうちに連れて行くわけにもいかないし」

「それは…」


彼女が黙ったので、俺も黙る。

スーパーから出て来た客が、珍しい組み合わせとでも思っているのか、ちらりと見ていく。


動物園でもあるまいし、いちいち見ていくなと俺が睨みつけると、客達は顔を背け、去っていく。


「あのね…」


彼女が口を開くと、スマホが鳴り出した。


「あ、お母さんからだ」


彼女は素早く出ると、うんとか、えとか、答える。

俺はじっと待っていると、彼女がスマホを切る。


「お母さんが迎えに来てくれるって」

「そうか。良かった」

「良くないわよ!! お父さんが、その…」

「心配してもらえるだけありがたいと思え」

俺は少し強く言うと、彼女は黙りこんだ。


2人の間を割くように、風がふいていく。

しばらく彼女を落ち着かせる時間が必要だった。


「あ!! お母さんが来たかも」


黒い軽自動車がスーパーに入って来たので、俺は彼女に早口で言う。


「俺のことは内緒な。じゃあまた明日」


腕をぽんと叩くと、俺は軽く軽自動車に向かって、頭を下げる。


「あの…!! ありがとうね」


何も言わず、後ろ手に振ると、俺はその場を後にしたのだった。

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