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第7話 歌え!古代の女声魔法!

♪アダージョ(現在)♪


「はあっ。はあっ。どうやら、俺達は体が分裂したようだな」


 ん? 聞き慣れない高い声。誰が言っているのか。


 声のした方を見やると、竜族の長髪で中性的な美少年が。魅惑の生足には刑務所で仮出所の人間にもれなく、装着されている監視タグ。


「ま、まさか。君は、アレグロ!?」


 その声に美少年は、きっと睨み返す。若くなったってことは気が若いんだね。


「そう言う貴様はアダージョ! 女になるとは竜族の恥さらしめ!」


 あ、いつものアレグロの声に戻った。一瞬、聞こえた甲高い声はなんだったんだ? そして、その言葉を合図に改めて僕の体が女の子らしい容姿になっていることを確かめる。確かに、お股についているものがついていなくて、お胸が……。


「ふえぇっ!」


 人格ごとに体が分裂すると、精神年齢と心の性別に応じた体になるという。そして、僕の体は女の子だ。と、いうことは、僕の心は、はじめから女の子だったということになる。


 今の今まで、ずーっと自分は、男だという自意識で生きてきたのに…⋯。


 アレグロの言う通り、竜族の世界では、男が女の心を持っているということはとても恥ずかしいこととされている。わーん。いやだー。みんなに馬鹿にされるよー。


「かわいい」


 その声に振り向くとポエットくんの満面の笑顔。ぼ、僕がかわいい? ものすごい勢いで心臓が鼓動し、自己肯定感が満たされる。


 だ、だめだっ! 僕は、誇り高き竜族の男なんだ。こ、こんなセリフで嬉しくなんてなっちゃだめなんだ。なんてふしだらな人間なんだ。


「にやにやした顔しやがって! 片付けてやる!」


トランペットから風圧が飛んでくる。


「危ないっ!」


 ポエットくんに手を引っ張られ、間一髪で危機を逃れる。これではまるで、守られヒロインだ。なんか女の子ポジションにいるいみたいでどきどきする。


 そ、それにしても、に、にやにやだって? 知らず知らずのうちに、かわいいって言われて僕の胸が踊ってたんだ。女の子扱い受けて心が癒やされていたんだ。男なのに僕は変態だー!


 い、いや。それどころではない。口を真一文字に結ぶんだ。むむっ。むふー。


 にこやかにしている場合ではない。このピンチを乗り越えなければっ!


 楽器は⋯⋯。アレグロに倣って、魔法を唱えて、亜空間から楽器を取り出そうとする。


 トランペットはアレグロの先約済! 


 でも、コルネット! 予備のコルネットならっ! あれならば、運指も調律もトランペットと同じっ!


「な、ないっ!」


「残念だったな。探していたのはこれか?」


アレグロはこれみよがしにコルネットを取り出す。


「さあ! これで貴様は完全に丸腰だ。ただ、一方的に俺にやられっぱなしというわけだ」


「ぐぬぬ」


「させるかぁっ!」


 ポエットくんは、ギターをジャカジャカ掻き鳴らして、大地を揺らす。葉が浮遊し、刃のように研ぎ澄まされた形状となる。


 そして、ギターの12フレット目、ハーモニクスを奏でると次々と葉がアレグロに襲いかかり、頬をかすると、小さな傷が。


「こしゃくな!」


 アレグロは、ファンファーレを奏でる。ものすごい音量だ。葉は霧のように飛び散り、そして、ポエットくんの体は、木々の隙間を高く飛微上がり、地面に叩きつけられる。


 トランペットで奏でる音楽はパワフルだ。他の楽器を圧倒してしまう。


「手間取らせやがって。さてと、まずは、アダージョから片付けるか」


 ゆっくりとこっちに歩いてくる。


「ポエットくん⋯⋯」


「他人の心配をしている場合かな? さあ、貴様は丸腰だ」


 トランペットを構える。この至近距離で吹かれたら、僕の体は下手したら散り散りに。


「どうした? 抵抗しないのか? ふふっ。できるわけないよな。楽器はこちらの手の内にある。女の体だから、強力な男声魔法も唱えられない。終わりだ。なるべく、楽に息の根をとめてやろう」


 アレグロの言うとおりだ。こちらに打てる手はない。


 女声魔法で奏でられる攻撃魔法は少ない。補助や回復魔法など、男声魔法のサポートが中心だ。だが、何も打つ手がないとはいっても何もしないわけにはいかない。


 ベーシックファイアー。最も基本的な男声呪文だ。テナーボイスが使えれば効果を発揮できる。一応、ソプラノ版もある。


 だが、この呪文を女声で唱える人間はいない。音域が高すぎて思うような効果を発揮しない。マッチやライターの火のような小さな炎が浮かんで消えるだけだ。

 

 これで、相手を圧倒できるとは思わない。だが、異世界格闘技の相撲の必殺技、ねこだましのように一瞬、驚かせて、その間に、ポエットくんを連れて逃げることができるかもしれない。


 アレグロも、こんな行動を取るとは予期していないはずだ。驚かせるだけの効果だけ。


 アレグロはトランペットに息を吹き込もうと構える前にベーシックファイアーの旋律を歌う。


 そして、炎は出た。まるで、火炎放射器のように。


 唖然としていた。僕もアレグロも。


 身の危険が迫っていることにはたと気づくと、体をひるがえしてしゃがむ。


 な、なにこれ。何が起きているの? 男声基本呪文、ベーシックファイアーだよね? 


「純正律だっ!」


 そう叫んだのはポエットくん。膝がすりむいている。痛そうだよぉ。


「古代の言い伝えでは聞いたことがある。女声魔法が、男声魔法に負けず劣らず、攻撃魔法として活用されていた時代があるって。おとぎ話だと思っていた。誰かがでっち上げた作り話だと。だが、古代に使われていた音楽魔法が純正律であるならば、説明がつく! これはロストテクノロジーだっ!」

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