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第18話 甘えん坊大戦争

♪ソネット(6歳の頃)♪


 今日は、父上も母上もおでかけ。爺やのマサヒデと弟のポエットと3人で、部屋でお留守番。積み木で遊んでいた。


 夏なので、もふもふした毛が生え変わる季節だ。なんだか、頭がかゆいな。


 マサヒデが、居眠りしてる。しようがないやつだ。


 僕はポエットに近づいて頭を下げる。


 「なでて! 頭がかゆいから、なでて!」


 自分の手がうまく頭に届かないものだから、弟にお願いをすることにした。


 すると、ポエットも頭を僕に突きつける。


「お兄ちゃんずるい。僕を先になでて! ぺこり」


 しばらく膠着状態。お互いがお互いのかゆい頭を見せ合って、冷戦状態だ。


 ううう。こんなことしてたら、かゆくなる一方だ。仕方ない。


「なでてやるから、後で僕もなでろよなっ!」


 ポエットをなでなでする。かわいいやつだ。きっと、このまま仲睦まじいまま僕たちは大人になっていくのだろう。


  ちくしょう。気持ちよさそう。僕も早く気持ちよくなりたい。


♪アダージョ(現在)♪


 あー、いい湯だった。と言ってもシャワーだけだけど。


 男物の服を着て、ドライヤーで頭を乾かし、部屋に戻る。


 気を使って、男2人と女1人とで別部屋にしてもらっている。本当は男だから気を使わなくていいのに。


 ベッドの上に誰かが座っていた。男の子⋯⋯グロウルくん!?


「キスをするって約束したよね?」


 わーん。また生霊だー。そんなに僕のことに執着するの?


「うーん。また今度かな?」


 誤魔化しきれてない誤魔化しをしてみる。


「ずるいよ。僕、君の外見すごく好みなんだ。中身はそうでもないけど。君のような大人しそうな女じゃなくて、気の強い女がいい」


「な、なんか、失礼なこと言われてる気がする⋯⋯」


「俺は、外見がいい竜族の嫁がほしかった。君の体がほしい。キスしよう」


 さ、最低だー! 最低すぎるところが清々しい。自分に正直なところが、逆にちょっと憎めないかも。


 じりじりとにじり寄ってくる。どうしようもない子だな。仕方ない。


 亜空間から、鍋物サイズに切り取った白菜を取り出す。


「わんちゃんはこれでも食べてなさいっ!」


 尻尾をふりふりするので、もったいぶって両手を上にあげる。すると、こちらに飛びつこうとする。


「待て!」


 すると、言われたとおりに静止する。意外とかわいいかもしれない。


 なでなでするとおすわりのポーズをする。


「はいどうぞ。めしあがれ」


 グロウルくんは、美味しそうに白菜を食べる。


 すると、生霊は光りだし、そして消えてしまった。


 な、なんか、うさぎ王子といぬ王子、両方の生霊手なづけてしまったな。


 なんのテイマーなんだろうか、僕。


「クックック! 楽しそうだな」


「死神!?」


 右殺義とかいう黒服うさちゃんが背後に立つので、シュババババッと横跳びする。


 そういえば、こんな人いたねえ。前回は何の目的で現れたんだっけ? あ、そうだ! 思い出した!


「残念だったね! ポエットくんの死は回避したぞ!」


にやりと笑ってみせるが、向こうもにやりと笑い返す。


「な、なんだよ。その不敵な笑みは。負け惜しみか!?」


「確かにポエットの魂をいただくのは失敗したみたいだ。だが、5日後、別の魂をいただくことになった」


 そう言って、バイオリンの弦を僕の方向に向ける。


「僕!?」


「他に誰がいる。5日後にお前の魂をいただきにいくからな。ククククク……」


「待てっ!」


 ビブラートを聞かせた簡易曲を奏でると消えてしまった。


 僕、もうすぐ死んでしまうのか……。


 5日後っていうと、だいたい、うさぎ城に到着するあたりだな。


 あそこでポエットくんの作戦が成功するか失敗するかはわからない。だけど、そこで何かが起きて、きっと、僕は死ぬんだ。


 だけど、その方がいいかもしれない。


 ポエットくんとグロウルくん、両方にいい顔して、旅を続けないといけない。三角関係の重みに耐える自信がない。


 2人とも、僕のことなんか忘れて、本当にふさわしい恋人を見つけてくれればいい。僕は、彼らの幸せの礎になれればいい。


 僕は、罪深い人間。その場限りの都合のいい女として、彼らの人生の通過点として、一生を終えればそれで十分だ。


 よし! 洗面台で化粧液を肌に叩きつけ、僕は決意を新たにした。

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